knotlamp @ 渋谷クラブクアトロ

knotlamp @ 渋谷クラブクアトロ
3月にリリースされた初のフル・アルバム『Sing against the stream』を引っ提げてのツアーは、終盤戦に渋谷、名古屋、大阪でのワンマンを含めて絶賛爆走中。今日は彼らにとって初の、記念すべき渋谷クラブクアトロ単独公演だ。開演15分前に入場してみると、平日にも関わらず既にフロアはTシャツ姿のパンク・キッズでみっちりである。今のknotlampの勢いを象徴するようだ。あと、客入れのSEというかDJがやたらカッコ良くて早々に盛り上がる。往年の国産メロディック・パンクやスカ・パンクの名曲連打に、オーディエンスはさっそくシンガロング。ハイスタの“STAY GOLD”が流れたところで、いよいよknotlampの登場となった。

アルバムのオープニング・ナンバーでもある“時の行方”を皮切りに、情感溢れるメロディで攻め立てる。KEITの「行くぜクアトロー!」という、思いっきり腹筋に力の入ったシャウトが、このクアトロ・ワンマンにかける意気込みを伝え、同時に強い緊張感を振り払おうとするようでもあった。序盤のMCで彼は、「いやーもう、出てきたときからヤバイわ。感極まってる。なんかしゃべったら今にも崩れ落ちそうだからさ。ギターのチューニング、ボロボロだし。とにかく最後までよろしく!」と言葉数も少なく、やはり相当に緊張しているようである。

“ずっと何処かに”のイントロでフロアから歓声があがった。ニュー・アルバムの大きな求心力が働いているのを感じる。そしてバンド・アンサンブルの体感の加速力が凄い。静謐にトーン・ダウンしてオーディエンスに歌メロを預け、また爆発的なビートを轟かせる。エフェクターをオフにしたときのKEITとTETSUNARIのギター・サウンドも、やたらクリアで美しいものになっている。決して一本調子な勢いだけではなくて、静と動、抑と揚のコントラストがくっきりと描き出されるステージだ。

高速でシャッフルするようなAKIHIKOのドラミングにせよ、間奏で閃光のような輝きと発熱を感じさせるソロを弾くTETSUNARIのギター・プレイにせよ、knotlampは実にテクニカルなバンドだ。しかし、ライブハウスでオーディエンスの熱狂と直に向き合わなければならないというメロディック・パンクならではの特性が、彼らのソング・ライティングをキャッチーなものにし、誰でもすぐに分かち合えるポップ・ソングとしての機能を保たせているように思う。ポップ・ミュージックの歴史では、ある一つのスタイルが生まれてそれが進化発展すると、どうしても音楽的に複雑なものになってしまって敷居が高くなり、ポピュラリティの面で行き詰まる、ということが繰り返されてきた。今日のライブ前の名曲メロディック・パンクDJによって余計に強く感じたのかも知れないが、knotlampは「オーディエンスと向き合うことなしに進化はありえない」というメロディック・パンクの経験と遺産を、しっかり継承することが出来ているバンドなのである。才能豊かなアーティストのアイデアと努力、しかしそれだけでは生み出せないもの。それが熱狂というやつなのだ。

「九州の人間なのに、渋谷にこんなにたくさん友達いるんだぜって、かあちゃんに見せてやりた……」ズギャーン!! AKIHIKOがイイ話しようとしてるのに、ギターの爆音で邪魔するKEIT。どうやら彼、ホロリ系の話はマジでアウトなくらい感極まっているらしい。ギリッギリである。「フェスとかでも緊張したことないんだけど、今日はしたわー」。KEITはそう言うが、knotlampの音楽はまだまだ広がってゆくだろう。彼らはそういう音楽をやっているし、記念すべき日であっても今日はまだ通過点でしかないということは、多くの人が感じているであろうことだ。“夜空”の伸びやかなブリッジ部の間、コーラスでの爆発&クラウドサーフを待ち構えるように、まるで騎馬戦みたいにして至る所で人柱が出来上がってゆく。

本編終盤の名曲連打では、大きなシンガロングが立て続けに起こっていた。鳴っているのはTOHRUのベースのルート弾きだけで、完全に歌メロがオーディエンスに預けられてしまったりもする。KEITの歌から順に各パートが加わってゆくというとき、まるで「バンドがライブに参加している」ようだと感じた。このオーディエンスとの強い繋がりと相乗効果、メロディック・パンクの原風景こそが、knotlampだ。まだワンマン含め各地での公演が残っているので曲タイトルなどの表記はなるべく控えたが、この記念すべき日の模様はDVD作品としてリリースされる、という告知もあった。ライブハウスの現場の、knotlampというバンドを、より多くの人にも知って頂きたい。(小池宏和)
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