サカナクション @ 赤坂BLITZ

サカナクション @ 赤坂BLITZ - サカナクションサカナクション
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1月21日に発売された最新アルバム『シンシロ』を携えての全国ツアー『SAKANAQUARIUM 2009“シンシロ”』の東京公演。すでにRO69のニュースでもお伝えしたとおり、全公演がチケットソールドアウトしており、バンドはまさにノリに乗っているという状態。今日のライブを観たくても観ることができなかった人も多数いただろう。まだ、ツアー途中ということもあり詳細を書くことはできないのだけど、サカナクションの明確な方向性を打ち出し、それを見事に形にしてみせたライブだった。レポートを書くために2階席で座って観ていたけど、心の中ではもう身体を揺らして踊りたくてうずうずしてました。それくらい、オーディエンスのヒートっぷりも半端なくてフロアはクラブさながらの雰囲気で手を掲げながらみんな激しく踊りまくっていた。

「SAKANAQUARIUM」というツアータイトルのロゴがプリントされたステージフラッグ、モニターの側面には『シンシロ』のジャケットに描かれていた波形の模様、始まる前には深海の中にいるような水音に包まれ、会場全体がサカナクションの世界で彩られていた。そして、深海からもがきながら上へ上へと上昇していくようなハードな四つ打ちビートが容赦なく刻まれライブはスタート。ステージに現れるや否や山口(Vo/G)は、そのビートに合わせて空を切るように手を仰ぎダンスし、ステージギリギリのところまで前に出てオーディエンスを煽動する。前半はアッパーに突き上げるようなナンバーを立て続けに演奏し、ぐいぐいとオーディエンスの心を掴んでいった。

最後の最後で山口が言っていたのだけど、今回のアルバム『シンシロ』はメンバー5人がパソコンを持ち寄り、それぞれにアイデアや意見を出し合いながら作っていったアルバムだ。だから、バキバキのエレクトロ・サウンドもあれば、思い切り歌い上げるメロディーの良さがシンプルに届くロック・ナンバーまでバリエーションの幅も広い。それに、メンバーそれぞれの聞かせどころが1曲の中にギュッと詰め込まれていて、それをフィーチャーした演奏がまさに個人芸となって表現されていた。何か一つが突出するということがなくバランスよく融合している一体感が堪らなく心地がよい。江島のダイナミックな生ドラムも、岩寺の筋少上がりのメタル・ギターも、アグレッシブな動きとともに重低音を響かせる草刈のベースも、サカナクションのサウンドの要であるエレクトロサウンドを彩る岡崎のキーボードも、そしてそれらをマエストロのように纏め上げる山口も、すべての波長が合って生み出された音楽。本当に楽しそうで活き活きした表情を見せてくれた。

打ち込みサウンドと生音の融合で音を繰り出していくのは、まさに職人芸でタイミングひとつ間違えれば全てが狂ってしまうという繊細でテクニカルな作業が伴う。だけど、それを難しくて高度なものにみせない、つまり「分かりやすさ」を全面に押し出した見せ方ができるのがサカナクションの凄いところだと思う。最大限の技術をフルにつかって、最大限にシンプルでポップなものを作っていくというその才能を最も開花させたのが後半で披露された“セントレイ”だ。イントロのシンセで高揚感はマックス! 眩いほどのレーザー光線が会場一杯に放射される中、フロアを飛び跳ねるオーディエンスを熱狂の渦に巻き込みテンションは最高潮に。

ラストで山口は、「アンダーグラウンドな音楽をずっと聴いてきた僕達が、今J-POPとかJ-ROCKとか言われるエンタテインメント・ミュージックに挑戦しているんですけど、どっちにも素晴らしい部分があるから、どっちの良さも持った一つの新しい提示ができたらなと思ってサカナクションを始めて……これからもエンタテイメント・ミュージックとアンダーグラウンド・ミュージックの隙間を縫ううなぎみたいにサカナクションしたいと思います!」と語った。アンダーグラウンドな世界から外の世界へと繋がろうとしているサカナクション。今、新しい作品の制作がすでに始まっているとのことで、この5人がこれからどんな風に化学反応を起こして次のサカナクション・ミュージックを作り上げていくのか、想像するだけで心躍る気分にさせてくれる。彼らの快進撃はこれからもまだまだ続きそうだ。(阿部英理子)
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