鬼束ちひろ @ Bunkamuraオーチャードホール

鬼束ちひろ @ Bunkamuraオーチャードホール - 鬼束ちひろ鬼束ちひろ
本当に素晴らしいステージだった! なんと4年8ヶ月ぶりの単独公演となる一夜限りのプレミアム・コンサート、その名も『NINE DIRTS AND SNOW WHITE FLICKERS 』。 昨年、2枚のシングルに続きアルバム『LAS VEGAS』をリリースし、コンスタントな音楽活動へと踏み出した鬼束ちひろ。インタビューでも「ライブがやりたい」と語っていただけに、彼女の生の歌を、新曲を聴きたくてたまらなかったのだが、ついに、ついに、その日がやってきたのだ。当然ながら、会場には静かな期待がパンパンに張り詰めている。

7時過ぎ、クラシックが静かに流れる中、富樫春生氏が登場。バッハのゴールドベルク変奏曲から“ARIA DA CAPO”を披露。その後、スクリーンが上がって鬼束ちひろが登場! 神話の女神のような真っ白い衣装が印象的。そしてなんといきなり新曲を披露。賛美歌のような豊かな歌から、続く“Cage”で全身を大きく揺らしながらエモーショナルに歌い上げる。“流星群”“infection”“眩暈”と立て続くあまりに切実な歌声に、会場にすすり声が響いている。

7曲目“everyhome”でガラッと空気が変わった。復帰第一弾シングルとなったこの曲は、過去の楽曲とくらべてとても風通しがよい。歌詞もたくましさを感じさせる曲だ。しかもこの曲に続いて“なごり雪”“You’ve got a friend”というカバーを2曲演奏。かつて、武道館ライブをほとんど新曲でやったこともある鬼束だが、この日のステージは、まさにファンが聴きたいヒット曲と、アルバムからの新しい曲、そして彼女らしいカバーと、まったく未発表の新曲。自分の現在地をしっかり見せつつも、みんなを喜ばせ、しかもサプライズを忘れない、完璧なセットリストだった。後半は、チェロが加わって“Angelina”を、さらにバイオリン2台+ビオラが加わった弦楽四重奏で“僕等 バラ色の日々”を演奏。“いい日旅立ち・西へ”“Sign”に続き、“私とワルツを”で本編終了。結局、鬼束は一言も喋らないまま、前に出て深々とお辞儀をして退場した。

鳴り止まぬアンコールに答えて再びステージに現れた鬼束は、先ほどの白いドレスとはうってかわって黒いTシャツに黒いパンツ。一見、スタッフかと見まごうほどカジュアルないでたちだ。そして“月光”で会場を大きな感動に包み込んだあと、「それでは最後の曲です。新曲です。聴いてください。“蛍”」と言って、8月リリース予定のシングル“蛍”(映画『ラストゲーム 最後の早慶戦』主題歌)を初めて披露した。時間よ止まれ、という静かな歌い出しが印象的な、とても美しいバラードだ。ステージのバック一面に照らされた小さな小さな電球が蛍のようにはかなく美しく煌いていた。

すべての曲を歌い終えた後、鬼束がメンバーを手招きして前に並ばせると、「礼!」とまるで学級委員のように号令をかけ、深々と6人がお辞儀をする。そして、スタスタとステージを去って行った……かと思いきや、途中で片手を高く上げピースサインを掲げた。その姿から静かな達成感が伝わってきた。今回は、一夜だけ、という限定的なシチュエーションだったが、これからきっとたくさんの人に向かって届けていくに違いない。そんな確信を強くいただかせる、本当に強く美しい歌声だった。(井上貴子)

<a href="http://www.onitsuka-chihiro.jp/information/" target="_blank">詳細なセットリストは公式HPにて掲載。</a>
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