ポール・マッカートニー @ 日本武道館

昨年から敢行している「ワン・オン・ワン・ツアー」で2年振りの来日を果たしたポール・マッカートニー。11年ぶりとなった2013年の「アウト・ゼア・ツアー」での来日以来、ほぼ2年ごとに来日を繰り返してくれているのだが、ポールの世界ツアーでは必ず赴く公演地として日本はもう組み込まれたということなのだろうか。

いずれにしても、公演回数が増えればこれまでセットに取り上げてこなかったウィングスやソロ時代の楽曲を披露する可能性もまた高くなるわけで、そういう意味でとても嬉しい公演となった。

この日は日本武道館ということで、ポールといえば通常はドーム公演なのでなんといってもステージが近い。会場が暗転するとそのステージにポールとバンドが登場し、やっぱりこの近さに興奮した。

しかも、大歓声の中、オープナーとなったのは"A Hard Day’s Night"。ビートル絶頂期を象徴するこの名曲を冒頭に持ってきたところがどこまでも強烈。

のっけから「ついにこの曲を生で聴いてしまった!」と感激してしまうし、実際問題としてビートルズとしての来日時にも披露していない、日本ではライブ初公開曲なので、これはいきなりものすごい観所がきているのだ。

続いてはウィングスを代表するロック・ナンバーの"Jet"。これも近年はセットから姿を消していたのが、昨年の夏頃から復活したあまりにも嬉しいナンバー。個人的にはポールといえばこの曲なのでこれもまた感激ひとしおだし、1曲目に負けず劣らず名曲だし、この流れが堪らない。

そして3曲目は"Drive My Car"、これもまた名曲で、今回のツアー初登場。これはどういうことなんだと思いつつ、あまりにもすごいオープナー・シークエンスにぶっとびかかっていると、4曲目は"Junior’s Farm"。このゆるいんだかロックの天才なのか判別しがたいポールならではの傑作まで飛び出して、あまりのポールとビートルズの魅力全開モードに悶えるばかりだった。

ポール・マッカートニー @ 日本武道館 - (c) MPL Communications/MJ Kim)(c) MPL Communications/MJ Kim)
中盤の観所は原点コーナーで、「僕たちが最初にレコーディングした曲をやります」と紹介して、誰もが"Love Me Do"を連想したところで演奏されたのが、ビートルズの前身バンド、ザ・クオリーメンとしてレコーディングした"In Spite Of All The Danger"。あまりにもポールらしい捻りでとても微笑ましかったし、その後に続いた"Love Me Do"とともに、ロックンロールとビートルズの原点を見つめ直すカントリー/ロカビリーの一幕としてもとても秀逸だった。

ちなみに、この日ポールは「次は日本初公開」というMCを二度ほど使って、それがかつてザ・ローリング・ストーンズのセカンド・シングルとしてジョン・レノンとポールが急場しのぎで書いた"I Wanna Be Your Man"、そして"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise) Back In The U.S.S.R."だったが、冒頭の"A Hard Day’s Night"を始め、実は本邦初公開の曲は今回のセットではそこそこあったように思う。

個人的には日本公演では2002年以来の登場となるファースト・ソロからの"Every Night"を聴けてとても嬉しかったし、"We Can Work It Out"に続いたせいか、すごく切ないパフォーマンスとなって素晴らしかった。

今後は東京ドームになるが、セットがもっと長くなるので、これ以降の展開もとても楽しみだ。
(高見展)


〈SETLIST〉
A Hard Day's Night
Jet
Drive My Car
Junior's Farm
Let Me Roll It
I've Got A Feeling
My Valentine
1985
Maybe I'm Amazed
We Can Work It Out
Every Night
In Spite Of All The Danger
Love Me Do
Blackbird
Here Today
Queenie Eye
Lady Madonna
I Wanna Be Your Man
Magical Mystery Tour
Being For The Benefit Of Mr. Kite!
Ob-La-Di, Ob-La-Da
Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise) Back In The U.S.S.R.
Let It Be
Live And Let Die
Hey Jude

(アンコール)
Yesterday
Hi, Hi, Hi
Golden Slumbers
Carry That Weight
The End
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