め組 × 忘れらんねえよ × Suck a Stew Dry@渋谷WWW

め組 × 忘れらんねえよ × Suck a Stew Dry@渋谷WWW - め組/all pics by 上山陽介め組/all pics by 上山陽介
元・さよなら、また今度ねの菅原達也が、2015年にスタートさせた5ピースバンドのめ組。彼らにとって初のCD作品である、タワーレコード限定・両A面シングル『500マイルメートル/マイ・パルプフィクション』リリース当日に開催されたリリースパーティである。ゲストアクトに迎えられたのは、Suck a Stew Dry、忘れらんねえよという2組だ。表現スタイルは異なれど、アマチュアアーティストコンテストRO69JACKにおいて、忘れらんねえよは2009年冬、Suck a Stew Dryは2010年夏にそれぞれ入賞。菅原はさよ今として2012年夏に優勝という共通点があり、RO69にとっても縁深い3組の共演になった。

め組 × 忘れらんねえよ × Suck a Stew Dry@渋谷WWW - Suck a Stew DrySuck a Stew Dry
トップバッターとしてステージに立つのは、Suck a Stew Dryだ。フセタツアキ(G・Cho)、ハジオキクチ(G・Cho)、スダユウキ(B)、イタバシヒロチカ(Dr)、そしてシノヤマコウセイ(Vo・G)が揃うと、鮮烈な音出し一発から“僕らの自分戦争”でスタートする。ナイーヴに思い悩みながらも、内に秘めた決意を伝えるシノヤマの歌。それを力強く華々しく後押しするバンドサウンド。フセがめ組のリリースを祝福しつつ、便乗する形でライヴ初披露される新曲“GOEMON”は、キクチの跳ね回るギターフレーズが切迫感とコミカルさを伝えるナンバーだ。そして最後にシノヤマは、「人に忘れられないように抗っている場所が、Suck a Stew Dryなのかなと思いました」と語り、切々と、ただしダイナミックに広がる美曲“Normalism”で全5曲をフィニッシュする。

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柴田隆浩(Vo・G)がフロア後方から登場し、オーディエンスの頭上を運ばれる形で、梅津拓也(B)とサポートドラマー=マシータの待つステージに辿り着く。そんな忘れらんねえよのステージは、2月24日にリリースされるベストアルバムから7曲を選りすぐったパフォーマンスだ。“CからはじまるABC”で鳴り響かせる力づくの肯定性の後、柴田は「泣いてる女の子がいるとしてさあ、その子が泣き止むかもしれないんだよ?」とめ組のCDリリースの意味の大きさについて熱弁を振るう。脱退したドラマー・酒田耕慈について歌った新曲“別れの歌”は、さまざまな思いを爆音に滲ませながらも、「あんたらに聴いて欲しい」という、作為のない、丸裸のグッドメロディが胸を震わせた。ラストは“忘れらんねえよ”で一面のハンドウェーヴと大合唱を導く、渾身のステージである。

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さあ、ラッツ&スター“め組のひと”に乗って、賑々しく登場した本日の主役=め組。一発一発が炸裂音のような大熊諒(Dr)のビートと、富山京樹(G)の鮮やかなリードギターに導かれ、菅原達也(Vo・G)が歌い出すのは、スリリングなラブソング“マイ・パルプフィクション”。狂おしいほどポップなメロディに、華々しいシンセフレーズがまとわり付いてゆくアレンジも強烈である。続いては、さよ今の曲である“クラシックダンサー”。《「恋をするとお腹がポカポカするの」》という名フックを持つ一曲だが、歌とせめぎあうように鳴らされるギターやキーボードのおかげで、ヴォーカリストは同じではあるが、まるで別物のような楽曲になっている。

Suck a Stew Dry/忘れらんねえよとの共演に恐縮しつつ喜ぶ菅原は、「初めてのCDを出すことが決定……じゃない! 出ました!!」とMCを届ける。演奏のヴォルテージを引きずり、たかぶっている印象だ。悲哀のストーリーをファンキーに弾けさせる“余所見”では、ジャジーなピアノ演奏も効いている。そしてファストなダンスビートを刻みながら、大熊がファルセットのコーラスも加えてライヴバンドとしての力量を見せつける“独りな武士”へ。悶々とした思いがそのまま音楽の魔法に反映されてしまう菅原のソングライティングを、バンドとしてしっかり共有している様子が窺えた。

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気合いの余り、練習では菅原と下山拓也(B)が取っ組み合い寸前にまで至ったらしいが、「iPodとかウォークマンの充電が切れても、頭の中で鳴ってるから関係ねえよっていう、頭のおかしい曲です」と紹介されたライヴ初披露の楽曲“脳内コンクール”は、優雅なロックシンフォニーにトロピカルなエッセンスが混じり込んでしまったような、ポップとアヴァンギャルドの境界線に着地するすさまじい曲だった。指揮者のように腕をふるう菅原は、彼自身のフリーキーな音楽愛を肯定し、メンバーと共有することで、どんどん新たな発明に踏み込んで行く。そんな冒険心がビデオにも描かれていたシングル曲“500マイルメートル”は、メンバーの一斉コーラスとオーディエンスのシンガロングにも彩られ、開放的に鳴り響くのだった。

あらためて、共演バンドとオーディエンスに感謝の思いを伝えると、やはり新鮮な手応えのさよ今の曲“僕あたしあなた君”が放たれて本編は締めくくられる。率先してアンコールの催促を期待していた菅原だったが、5人が再登場すると4月30日に開催予定の次なる自主企画「「め組の豊作祈願~マイ・シンギン・イン・ザ・レイン~」」(共演アクトは後日発表)を告知。最後には「好きな曲を歌わせろ、っていう歌です」と、周到にシンガロングの練習を行ってから、アクロバティックなダンス歌謡チューン“悪魔の証明”をライヴ初披露。賑々しくフィナーレを飾ってみせた。確かなバンドケミストリーの爪痕を残した、そんな一夜であった。(小池宏和)

●セットリスト

Suck a Stew Dry
01. 僕らの自分戦争
02. ウェイクミーアップ
03. GOEMON (新曲)
04. カタカナトーク
05. Normalism

忘れらんねえよ
01. バンドやろうぜ
02. CからはじまるABC
03. ばかばっか
04. 寝てらんねえよ
05. 別れの歌
06. この高鳴りをなんと呼ぶ
07. 忘れらんねえよ

め組
01. マイ・パルプフィクション
02. クラシックダンサー
03. 余所見
04. 独りな武士
05. 脳内コンクール
06. 500マイルメートル
07. 僕あたしあなた君
(encore)
08. 悪魔の証明
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