RADWIMPS/pic by 植本一子「今日がまさに10歳の誕生日なんです、RADWIMPSは。ということで、もう手加減しないでいくから。最後までよろしく! はっちゃけっか!」。11月後半とは思えない熱気に包まれた横浜アリーナが、野田洋次郎(Vo・G)の情熱あふれまくりの言葉でさらに激しく揺れていく――。11月4日から行われてきたRADWIMPSの対バンツアー「RADWIMPSの胎盤」も、Zeppシリーズを終えていよいよ後半戦。横浜アリーナ3DAYの初日にして、メジャーデビュー10周年記念日でもあるこの日の対バン相手はスピッツ! 野田自身にとっても大事な存在である先輩バンドとの共演から、真摯に音楽と向き合い続けるRADWIMPSの在り方が浮き彫りになった、至上の一夜だった。
スピッツ/pic by 上飯坂 一
スピッツ/pic by 上飯坂 一先攻のスピッツ、幕開けの“運命の人”をはじめ、1曲ごとに会場のRADファンから大歓声が湧き起こる。90年代以降の音楽史を彩ってきたスピッツのメロディの魅力と訴求力ももちろんだが、アリーナクラスの音像とともに鳴り渡る草野マサムネ(Vo・G)の歌声と三輪テツヤ(G)/田村明浩(B)/崎山龍男(Dr)/クジヒロコ(サポートKey)のシュアな演奏は、ロックバンド=スピッツのタフな底力を明快に伝えるものだった。「初めましての方も多くいらっしゃると思いますんで。改めまして、スピッツといいます」「いつも通りにやりますんで」(草野)と力みも気負いもない空気感ながら、“空も飛べるはず”で一面のハンドウェーブを呼び起こし、“夢追い虫”の雄大なアンサンブルを力強く響かせてみせる。
スピッツ/pic by 上飯坂 一ライヴ中盤、「じゃあここで、人前で演奏するのは初めての曲を、ぜひとも聴いてもらおうかなと……」という草野の前置きとともに披露されたのは、なんとRADWIMPSの“叫べ”。《「叫べ」というこの確かな心を》の歌い出しに、横アリに驚きと喜びの声がひときわ強く湧き上がり、自然と会場一丸の大合唱が広がっていく。“8823”の疾走感あふれる熱演に身を任せて舞台袖まで駆け出したりシンバルを連打したりする田村の腕白ぶりも、ラスト“魔法のコトバ”の珠玉のヴォーカリゼーションも含め、日本ロック界の至宝たる存在感に満ちていたスピッツのアクト。「今日みなさんと会えたことは、残りの人生の宝物にしたいと思います!」という草野の言葉に、惜しみない拍手が贈られた。
RADWIMPS/pic by 植本一子そしてRADWIMPS。山口智史(Dr・Cho)の無期限休養により、野田洋次郎/桑原彰(G・Cho)/武田祐介(B・Cho)にサポートWドラム=刄田綴色&森瑞希を迎えた5人編成でツアーを行っているRADWIMPS、序盤から“DADA”“ギミギミック”“DARMA GRAND PRIX”と熾烈な楽曲連射で衝動全開放! 冒頭から踊り回りシャウトしまくる野田のパフォーマンスと桑原&武田のアグレッシヴな爆演が、会場の温度をぐんぐん上げていく。
RADWIMPS/pic by 植本一子そんな熱い演奏とは一転、デビュー10周年記念日を本拠地=横浜で迎えるということで、この日のメンバーの佇まいはどこまでも無防備だった。「スピッツ大先輩が、涙腺を何回ノックされたかわかんないくらい素晴らしいライヴをしていただいたので。僕たちも、みんなの上半身も下半身もびっちょびちょにして帰るから!」と呼びかけている桑原のMCに思いっきり野田がカブって話し始めて、お互いの間の悪さに苦笑したり、本編後半のドラマー紹介から続く「最後までよろしく!」という武田のコールがいまひとつ締まりきらなかったのを受けて「武田のキャラがフワフワしたままMCが終わるなあと思って(笑)。でも、やっぱり武田のこと大好きだから」と野田がフォローしたり……といったリラックスした場面の数々からは、ホームならではの開放感をメンバー自身も全身で謳歌していることが窺えた。
そんな中、この日誰よりも充実感を噛み締めていた野田は、「本当に夢のようです。ありがとう!」と感謝を伝えつつ、スピッツへの想いを語っていた。小5ぐらいで日本に戻ってきてから、ずっとスピッツの音楽を聴いていたこと。女の子のことを好きとか愛してるとか、この気持ち何だろう?とか一個もわからないうちにスピッツの歌を聴いていたこと。「(当時は)『愛してるよ』なんて言ったことないんですけど、スピッツの音楽を聴いて、その言葉を歌ってました。で、後からじわじわと『あ、スピッツはこういうことを歌ってたのか』って……だから、僕にとっての『愛してる』だったり『好き』だったりっていう言葉の中には、どうしたって何割かスピッツがいて。こうして一緒にステージに立てて、RADの曲まで歌ってくれて、こんな幸せなことはないです」……そんな野田の感慨の言葉が、満場の横浜アリーナに広がっていく。
さらに、「デビューの時はそんなこと思わないじゃん? 『10年後、お前スピッツと対バンしてるよ!』って。日本帰ってきて、なんかやたらいじめられたりとかいろいろあったけど、『お前その時に歌ってた人と一緒にステージ立てたよ!』って。『お前の人生悪くないな』って」と続けながら、野田が弾き語りで歌い始めたのは、スピッツの名曲“チェリー”。「ありがとう、スピッツ!」という真っ直ぐな言葉に、スタンディングアリーナも客席も拍手喝采で埋め尽くされていく。
最新シングル曲“‘I’Novel”の豊潤な歌声が、メンバーの30年間の道程&バンドの足跡と「その先」への決意まで包み込むように響いたところで、そのまま“いいんですか?”へ流れ込んで一面の大合唱を巻き起こしてみせたRADWIMPS。ライヴ終盤、「音楽の世界だったり、この日本に、僕らがいる意味は何だろうね?って思いながら、ずっと曲を作っていて。たぶんこの先もそれは変わらないと思います」と再び野田が語る。「10年後に、こんなに多くの人の前で、この曲を歌うとは思わなかったんですけど……」と歌ったのは、彼らのメジャーデビューシングル“25コ目の染色体”。彼らの「歴史」と「原点」が、10周年の記念すべき日に交差した、感動的なステージだった。
RADWIMPS/pic by 植本一子アンコールでは「10周年だし、せっかくだからスペシャルなことやりますか!」とスピッツを再び舞台に呼び込む野田。「お客さんもみんな優しくて。法に触れない範囲で、一番気持ちいい何かが入ってきた気がします」とこの日の共演を振り返る草野の言葉から“スパイダー”セッションへ突入! リードの旋律を譲り合いながら草野&野田が歌い上げていくハーモニーが、唯一無二の祝祭空間を鮮やかに彩っていった。「やっべー、幸せなことってあるんだな!」と喜びを隠せない様子の野田が、「一緒にこれからも生き続けましょう!」という言葉とともに響かせたラストナンバーは“有心論”だった。メロディをオーディエンスに委ねる野田に、横アリが高らかなシンガロングで応えていく――奇跡の共演を締め括るに相応しい、最高のエンディングだった。(高橋智樹)
●セットリスト
■Spitz
01.運命の人
02.バニーガール
03.けもの道
04.空も飛べるはず
05.スターゲイザー
06.夢追い虫
07.叫べ(RADWIMPS カヴァー)
08.8823
09.メモリーズ・カスタム
10.魔法のコトバ
■RADWIMPS
01.DADA
02.ギミギミック
03.DARMA GRAND PRIX
04.05410-(ん)
05.遠恋
06.ヒキコモリロリン
07.アイアンバイブル
08.ふたりごと
09.夢見月に何想ふ
10.おしゃかしゃま
11.ます。
12.‘I’Novel
13.いいんですか?
14.25コ目の染色体
15.君と羊と青
16.会心の一撃
(encore)
17.スパイダー(w/ Spitz)
18.有心論