「JAPAN CIRCUIT vol.54 WEST~山崎死闘編~」@なんばHatch

「JAPAN CIRCUIT vol.54 WEST~山崎死闘編~」@なんばHatch - クリープハイプ/all pics by 橋本塁クリープハイプ/all pics by 橋本塁
「山崎死闘編」としては通算6回目を数える、約1年ぶりの「JAPAN CIRCUIT」。ソールドアウトのなんばHatchに姿を見せたオーガナイザーの山崎洋一郎が「皆さん、よく来てくれたなあと。そりゃ来ますよね。このメンツですからね」と自信満々に語り、出演ラインナップについてそれぞれ熱弁をふるいながら紹介すると、いよいよライヴパフォーマンスの幕開けだ。

「JAPAN CIRCUIT vol.54 WEST~山崎死闘編~」@なんばHatch - 米津玄師米津玄師
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トップバッターは、ニューアルバム『Bremen』で見事オリコン1位を記録した米津玄師。サポートに中島宏(G・Key)、須藤優(Ba・Key)、堀正輝(Dr)と信頼の3名を迎えた編成で、“ゴーゴー幽霊船”を切り出すオープニングだ。「ワン、ツー、スリー!!」と上がる威勢の良い掛け声にしても、ギラギラと鋭利なバンドサウンドにしても、もはや音源とは別物と言っていい。ハンドマイクでゆらゆらとチンドングルーヴを乗りこなす“駄菓子屋商売”、中島の繊細なギターフレーズをオーディエンスの手拍子が後押しする“メランコリーキッチン”と、過去曲でバンドの進化・深化を見せつけてゆく。

「対バンというものが、高校生のとき以来で。すごいバンドが2組ぐらいいるじゃないですか。光栄だなと思って」と語る米津。ここからは、“パンダヒーロー”に“ドーナツホール”と性急なハチ名義曲のセルフカヴァーで歓声をさらい、そして中島&須藤がキーボード、米津は自らフロアタムを打ちならすという形態の“アンビリーバーズ”が、《一緒に笑おうか》と呼びかけてくる。クライマックスはライヴ初公開の“Blue Jasmine”だ。混乱した青きストレンジポップを潜り抜けて、今の米津はしなやかな確信と希望を歌っている。素晴らしいステージであった。

「JAPAN CIRCUIT vol.54 WEST~山崎死闘編~」@なんばHatch - andropandrop
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続いて、賑々しいオープニングSEと歓声に包まれながら登場したのはandropの4人だ。いきなりオーディエンスの高らかな歌声を呼び起こす“Voice”の中で、内澤崇仁(Vo・G)は「オオサカ! 飛び跳ねろ!!」と煽り立てる。こちらも観るたびに威勢の良さを増してゆく印象だ。佐藤拓也(G・Key)が美麗なアルペジオのリフレインを奏でる“Bell”にフレンドリーな歌メロが降り注ぐ“Dreamer”とパフォーマンスを続け、前線オーディエンスの安全を気遣うと、内澤は大阪のファンに点字の手紙を貰ったエピソードを紹介して、優しげな“Star”を披露するのだった。

10年ほど前、まだ内澤がギタリスト専門だった頃に、山崎洋一郎にデモを聴いて欲しくて送ったことを明かし、「いつか一緒にやろう」というメールを貰って嬉しかった、と告げる。「今日、念願が叶いました」という思いと共に繰り出される“Run”では、前田恭介(B)のベースがうねりまくり、一方“MirrorDance”では、伊藤彬彦(Dr)が高く放り投げたスティックがまったくキャッチできないところに飛んでいったりもしたが、笑顔のダンスタイムが続く。最後の“Yeah! Yeah! Yeah!”までオーディエンスのシンガロングは途絶えることなく、内澤は「短っ(笑)。良かったら、ワンマンにも遊びに来てください!」と楽しそうに告げて、去っていった。

「JAPAN CIRCUIT vol.54 WEST~山崎死闘編~」@なんばHatch - クリープハイプクリープハイプ
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「はいっ、頑張ります。よろしくお願いします」。登場SEもなく、尾崎世界観(Vo・G)がさらりと告げて始まった、トリのクリープハイプのアクト。しかし冒頭の“イノチミジカシコイセヨオトメ”は、曲に込められたエモさが平熱でいることを許さないというか、クリープハイプにとって熱気とは絞り出すものではなく、薬莢のようにあらかじめ楽曲に詰め込まれているものだということが伝わるパフォーマンスだ。

“手と手”から“愛の標識”にかけて、小川幸慈(G)のクリアで鮮烈なギターフレーズが歌と並走すると、尾崎は山崎洋一郎のロック評論について、「曲を作ると、やられたなあ、っていう言葉で書いてくれて。ゴール前でボールを奪われて逆にゴールされた気持ちになるんだけど、そういう人あまりいないから嬉しくて。でも、インタヴューしてもらったことはなくて、今日を機にぜひしてもらいたいと思います。今後、もしインタヴューに山崎洋一郎の名前がなかったら、ショボイと思ってください」と告げて、“おやすみ泣き声、さよなら歌姫”へと向かうのだった。

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“リバーシブルー”では、腰をくねらせるほどにベース音が艶かしく響く長谷川カオナシ(B)のプレイに嬌声が上がる。食の細い彼が近頃コンビニのドーナツばかり食べている、という話題に触れて、その長谷川が美声のリードヴォーカルを披露する“グレーマンのせいにする”が続いた。まくしたてるヴォーカルを小泉拓(Dr)のビートが追い回す、“身も蓋もない水槽”の爆発力はこの夜随一。“社会の窓”に“HE IS MINE”という一斉コール2連発のクライマックスでは、「同じビルにFM大阪、入ってるでしょ。声が大きすぎて電波に乗っちゃうぐらいでお願いします!」と《セックスしよう》コールが導かれる。更に、アンコールでは、尾崎から改めて感謝の思いも伝えられ、「また生活する中で、お会いしましょう」と“さっきの話”が温かな余韻を残しながら、珠玉の3マンを締め括ってくれた。(小池宏和)

〈セットリスト〉

・米津玄師
01. ゴーゴー幽霊船
02. 駄菓子屋商売
03. メランコリーキッチン
04. アイネクライネ
05. パンダヒーロー
06. ドーナツホール
07. アンビリーバーズ
08. Blue Jasmine

・androp
01. Voice
02. Bell
03. Dreamer
04. Star
05. Run
06. MirrorDance
07. One
08. Yeah! Yeah! Yeah!

・クリープハイプ
01. イノチミジカシコイセヨオトメ
02. 手と手
03. 愛の標識
04. おやすみ泣き声、さよなら歌姫
05. エロ
06. オレンジ
07. リバーシブルー
08. グレーマンのせいにする
09. ウワノソラ
10. 身も蓋もない水槽
11. 社会の窓
12. HE IS MINE
(encore)
13. さっきの話
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