Plastic Tree@豊洲PIT

Plastic Tree@豊洲PIT
「みんなのおかげで秋がとても好きになりました」――ライヴ中、有村竜太朗(Vo・G)はそんなことを言っていた。確かに、1曲ごとに濃淡のあるPlastic Treeのサウンドは、秋の夜長によく映える。実は筆者も秋に彼らのライヴを観るのがとても好きだったりするのだが、この日のライヴは、また格別だった。通算37枚目のシングル『落花』を引っ提げた、Plastic Treeの秋ツアー「自由落花」のファイナル。実りの季節を迎えたバンドの今を象徴するように、瑞々しくもダイナミックなサウンドが全編にわたって鳴っていた。

“バルーン”でしっとりと幕を開けたステージ。夜の闇に溶けていくような深く豊かなサウンドと、有村の吐き出すようなヴォーカルが、会場を包み込んでいく。アウトロでは「自由落花」の文字がバックスクリーンに投影され、本格的な攻勢モードへ。“瞳孔”“メルト”とアグレッシヴかつヘヴィなナンバーを叩きつけ、オーディエンスの拳を果敢に振り上げさせていく。真っ白な衣装をなびかせて絶唱する有村は、曲の随所で唐突にシャウトするなど衝動を抑えられない様子。「やあやあ」というお馴染みの挨拶でスタートした最初のMCからも、いつになくオープンでリラックスした4人のムードが伝わってくるような気がした。

Plastic Tree@豊洲PIT
今回のライヴで特筆すべき点は、じっくりと胸に沁み入るような楽曲が多く配されていたこと。7thシングル『スライド』のカップリング曲“ベランダ”などレアな曲も登場し、心の深淵に寄り添うような柔らかなアンサンブルを紡ぎ出していく。中でも圧巻だったのは、テント状の沙幕にバンドがすっぽり収まった状態で演奏された、中盤の3曲。美しいアコギのフレーズが冴えわたった“時間坂”、有村の掠れた歌声がセンチメンタルに響いた“サナトリウム”、そしてループするアルペジオと電子音で宇宙空間へと連れ去った“ムーンライト____。”。隔離された場所から音を鳴らすことにより、時間も空間も超越していくPlastic Treeのドラマツルギーが、かつてなく鮮明に浮かび上がっているように思えた。

しかし、その直後に幻惑的なムードは突き破られることに。“落花”のエモーショナルな轟音が、フロアを狂騒の只中へと落とし込んでいく。さらに鋭利なリフとビートがぶつかり合う“曲論”を経て、強靭な四つ打ちビートが鳴り響く“マイム”へ! 一心不乱にジャンプするオーディエンスを眺めながら、「ああ、ここまで含めてプラのドラマツルギーなんだ」と気づかされた。夢幻の境地へ陶酔していくだけでなく、今この瞬間に衝動を爆発させること、静と動の両極に振り切れまくることで、そんな彼らならではの世界との闘い方をダイナミックに提示した一連のドラマは、とても感動的だった。その後は“メランコリック”“バンビ”で疾走感たっぷりに駆け抜けて、本編ラストの“蒼い鳥”へ。切なさと激しさがせめぎ合う轟音を会場いっぱいに響かせて、盛大な拍手が送られる中メンバーはステージを去っていった。

アンコールでは、ダブルアンコール含め4曲を披露。最後はオーディエンスをバックにした記念撮影と一本締めで、たっぷり2時間半にわたるステージは幕を閉じた。メンバーひとりひとりの挨拶では、「本編で全部出し切ろうと思ってやりました」と言っていた佐藤ケンケン(Dr)。その言葉に嘘はないと思えるほど、濃密でエネルギッシュで、バンドの充実っぷりを強く物語るようなステージだった。結成から22年、今こうしてPlastic Treeが何度目かのピークを迎えているという事実には、本当に感服させられる。終演後には、恒例の年末ライヴ「ゆくプラくるプラ」を12月29・30日の2DAYS(しかも全曲ファンのリクエストで決定されるそう!)開催することと同時に、12月23日に3年ぶりのアルバムをリリースすることを発表! 実りの秋が過ぎた後にも、Plastic Treeの実りの季節はまだまだ続いていく。(齋藤美穂)

●セットリスト

01. バルーン
02. 瞳孔
03. メルト
04. ベランダ
05. 真っ赤な糸
06. 梟
07. 時間坂
08. サナトリウム
09. ムーンライト____。
10. 落花
11. 曲論
12. マイム
13. メランコリック
14. バンビ
15. 蒼い鳥
(encore 1)
16. ヘイト・レッド、ディップ・イット
17. テトリス
(encore 2)
18. 感傷ダイアリー
19. あバンギャルど
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