!!!(チック・チック・チック) @ LIQUIDROOM ebisu

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最高だった。いやほんとに。予想以上だった。自分自身、こんなに盛り上がれるとはびっくりだ。舐めていてすいません。

!!!が新作『アズ・イフ』を引っさげ、2年ぶりの来日。新作リリースの3日後という絶好のタイミングである。前回の来日は幕張メッセでのエレクトラグライドだったが、正直言って閑散とした印象しか残ってない。そのしばらく前に出たアルバム『THR!!!ER (スリラー)』がイマイチだったからだ。スプーンのジム・イーノがプロデュースした作品は楽曲のまとまりもサウンドの緻密さもアルバムの完成度もそれまでとは比較にならないぐらい上だったが、初期の彼らにあった猥雑で荒々しいエネルギーや破天荒な逸脱がなくなって、すっきりと整理整頓されたように聴こえるのが相当に物足りなかった。エレクトラグライド公演での彼らは会場の広さを持てあましている感じで、グルーヴにもキレがなく、彼らは牙を抜かれたケダモノのようにも見えた。

ところが『アズ・イフ』は、彼ららしいフィジカルでドープでヒプノティックなグルーヴのマジックが復活。しかも新作発売後のツアーの皮切りでモチベーションは最高。そして会場はすぐ手頃な広さのライヴ・ハウスだ。ただでさえ濃密な彼らのダンス・ビートがさらに凝縮され、汗の飛沫さえ飛んできそうな距離から、凄まじい勢いで放たれる。気取りやスノビッシュなところがまるでなく、構成や展開にヘンに凝ることもないから、演奏に勢いと一体感がある。白熱した演奏はときに1曲10分を超える長尺となるが、四つ打ち中心の演奏は機械的ではなくとことんグルーヴィで、フィジカルな弾力性に富み、自然にカラダが動き、否応なくのせられる。

見ての通り彼らは決してスマートなバンドではない。髪モジャ、汚いTシャツに短パンのヴォーカリスト。歌はヘタクソだしダンスは垢抜けない。ヴォーカリストとともに客を煽るキーボードはハゲメガネのおっさん。全員風采のあがらないインディ野郎のなれの果てそのもので、音楽だって決してオシャレでもなければ最先端でもない。肉体的という言葉がお上品に思えるほどダーティーでスリージーで、体臭さえ漂ってきそうな連中がなりふり構わず汗みどろになって骨太なリズムを一心不乱に刻み続ける。つまりステージの上にいる者と下にいる者に差違はない。そこで歌い演奏し踊っているのは同じ私たちであり、まさしく「One Nation Under A Groove」がそこに出現していたのだ。

彼らの世代は80年代末のレイヴ・ムーヴメントの洗礼を浴びている。だが実際に!!!の連中がハマったのはエクスタシーとレイヴではなく、アシッドとソニック・ユースだった。当時アシッドは2ドルで買えたのにエクスタシーは25ドルもしたから、貧乏な彼らはレイヴにハマれなかったのだという。その時点でダンスとパンクは対立事項だった。だがその後レイヴ/ダンス・ミュージックとインディ・パンクやオルタナティヴの精神は彼らの中で自然に結び付く。ハードコアなインディ主義者であることと快楽的なダンス・ミュージックであることが矛盾なく両立・融合した。その精華こそが、この日の!!!のライヴだったのだ。

周囲の空気さえも変えてしまうような混沌としたドープでヒプノティックなグルーヴのマジックは、アンコールに演奏された、新作収録の“I Feel So Free”で頂点に達した。最高だった。(小野島大)

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