3/17に名古屋でスタートし、大阪、長野、東京と4公演のツアーを巡って来た「和田唱×山崎まさよしpresents “ヤマショウのマーチ”」。その千秋楽となった、品川インターシティホールの模様をレポートしたい。「ヤマショウは、このふたりだけでライヴやるだけでもスペシャルなのに、ツアーやっちゃったんですよー！」（和田）、「4本でしたけど、濃かったですねえ」（山崎）とそれぞれが語っていたように、素朴な弾き語りを中心にしているようでありながら変幻自在に担当パートを切り替え、互いの名曲やカバー曲を分かち合う。笑いを振りまきながらもその実真剣勝負で、ソングライター／プレイヤーとしてのふたりの高い技量が浮き彫りになるステージであった。

開演SE“大脱走のマーチ”に乗って行進しながら姿を見せたふたりは、歓声の中で敬礼のポーズを決めてギターを手に取る。ビートルズの“Two of Us”を彷彿させるユーモラスで鮮やかなハーモニー・ポップ“ヤマショウのマーチ”から、ソリッドなリフに振り付けも交え、本気度が高いほどにおかしいピンク・レディー“UFO”と繋いで喝采をさらってしまった。ここでひとしきり挨拶を済ませると、今度は山崎まさよしがヴォイス・パーカッションをループさせ、和田唱のハスキーかつ瑞々しい歌声からリード・ヴォーカルをスイッチする山崎曲“長男”へ。歌声のコントラストがまた素晴らしい。山崎がピアノを受け持つTRICERATOPS“スターライト スターライト”は、ウェットな落ち着いたアレンジによって楽曲の芯の強さが浮かび上がるのだった。

ブルースの名曲“Crossroads”のカバーから山崎によるピアノ弾き語りソロと、たったふたりではあるがパフォーマンス方法は自由闊達、無限に広がっている。和田が嬉しそうに熱唱する“One more time, One more chance”、そして座席から立ち上がったオーディエンスの賑々しいクラップ＆スウェイに彩られて“晴男”も披露された。約15分間の休憩を挟むと、ビートルズ“And I Love Her”を「シナガワ～♪」に空耳するカバーのついでに、ツアー各公演でご当地ネタを交えたビートルズ・カバーもダイジェストで届けてくれる。トロピカルなギターとタンバリンのループが弾ける“セロリ”がまた秀逸だ。

和田の独壇場と化す一幕では、ジャズ・スタンダードのピアノ弾き語りを経て“Happy Saddy Mountain”のスウィング感たっぷりなベース弾き語りを届ける。『STEREO』シリーズでお馴染みになっている山崎の卓越したマルチ奏者ぶりには舌を巻くが、和田だって負けてはいない。そして山崎の情感豊かなギター・アルペジオに支えられた、トライセラの狂おしい美曲“シラフの月”は絶品であった。山崎も思わず力が入ったという感じで「ええ歌やなあ。パコ・デ・ルシアみたいやったなあ」と賛辞を惜しまない。ファンキーに加熱する本編を締め括ったのは何とトライセラ曲“Fever”で、ふたりが力強いダンス・グルーヴで熱く盛り上げてみせた。

アンコールに応えると、「まさよしさん、いつの日かまた、ヤマショウ復活したいです」「ああ、ぜひぜひ！　ふたりとも、普段はフロントを務めている身ではござらぬか。2分割したみたいで、気が楽でした（笑）」と語り、がっちりと握手を交わす和田と山崎。そして情熱的なメロディーを分かち合い、またもや振り付けを絡める沢田研二のカバーを披露すると、最後には和田が山崎のお株を奪うように灼熱のボトルネック・スライドをかます“アレルギーの特効薬”でフィナーレへ。再び流れ出す“大脱走のマーチ”の中でふたりは敬礼し、ハグを交わして笑顔で去っていった。（小池宏和）

■セットリスト

01.ヤマショウのマーチ（オリジナル曲）
02.UFO（カバー）
03.長男
04.スターライト スターライト
05.Crossroads（カバー）
06.Passage / 山崎まさよし 弾き語り
07.ツバメ / 山崎まさよし 弾き語り
08.One more time, One more chance
09.晴男
10.And I Love Her（カバー）
11.Ebony and Ivory（カバー）
12.Warp
13.セロリ
14.Cheek To Cheek（カバー） / 和田唱 弾き語り
15.Happy Saddy Mountain / 和田唱 弾き語り
16.シラフの月
17.Fat Mama
18.Fever

（encore）
01.勝手にしやがれ（カバー）
02.アレルギーの特効薬