東京スカパラダイスオーケストラ@日本武道館

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すさまじい熱量と愛に溢れた、至上の4時間だった。3月4日にデビュー25周年ベスト盤『The Last』をリリースした東京スカパラダイスオーケストラ、それに伴う一夜限りの日本武道館公演。昨年のアルバム『SKA ME FOREVER』でバンドコラボした10-FEET、MONGOL800、ASIAN KUNG-FU GENERATION、さらにバンドコラボ三部作のプロデューサー亀田誠治に加えて驚きのスペシャルゲストまで迎えたステージは、その尺度も内容もスカパラ史上最大のスケール感。あらゆる垣根を越えて音楽を鳴らし続けてきたスカパラの25年間の重みを痛感させるような、エモーショナルで威厳に満ちた祝祭だった。

東京スカパラダイスオーケストラ@日本武道館
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のっけから驚いた。“The Last Session”と名付けられた1曲目で、ステージ中央のセリから現れたスカパラの9人。挨拶代りに“The Movin' Dub(on the whole red satellites)”を奏でると、谷中敦(Baritone sax)の呼び込みで早くもゲストの10-FEETが登場! その後もモンパチ、亀田誠治、アジカンが順番に現れ、それぞれの持ち曲をメドレー形式で披露していく。最後は総勢20人の「The Last Session All Stars」による熱いセッションが繰り広げられる。そのサウンドの迫力といったら、言わずもがな。何しろドラムが茂木欣一(Dr)に、各ゲストバンドを加えた4ドラムで形成されているんだから! 特にドラマー全員で血沸き肉躍るような祭り太鼓を叩き出したシーンは圧巻だった。こうして冒頭からクライマックスのような高揚感を描き出し、絶頂への階段を一足飛びに駆け上がっていく20人であった。

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開演から約40分が経過して、やっとスカパラ9人のみで2曲目の“ペドラーズ”へ。先ほどの濁流のようなセッションからは一転、鋭い刃のようなサウンドが客席に突き刺さっていく。谷中/NARGO(Trumpet)/GAMO(Tenor sax)/北原雅彦(Trombone)の4人によるホーンの音が激しく吹き荒れ、観客一斉のモンキーダンスを誘引。続く“スキャラバン”では沖祐市(Key)のピアノの旋律がハラハラと舞い散り、“White Light”では加藤隆志(G)&川上つよし(B)のリフとビートが爽やかに疾走し……と、目まぐるしく変化するパフォーマンス・リレーに、場内の温度は上昇の一途を辿るばかりである。まさに音の力のみで世界中のライヴ会場を瞬間沸騰させてきたスカパラの本領発揮と言える爆演だ。

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その後は沖ひとりがステージに残り、「デビュー当時の曲をやります」とアコーディオンと口笛のみで“君と僕”を披露。他にも、加藤が「気づけば17年間もスカパラで演奏しています。おかげで本当にいい人生になっています。これを少しでも皆に返していきたいです」とヴォーカルを執った“Diamond in your heart”や、陽だまりのように温かいサウンドと共に「♪ラーララー」の大合唱が響きわたった“チャンス”など、アニヴァーサリー・ライヴらしい感傷的なシーンが何度かあった。その度に思いを馳せてしまったのは、メンバーの脱退や死を含む紆余曲折に満ちたスカパラのバンドヒストリー。簡単には語り尽せない苦悩や困難の果てに、彼らはバンド25年目の節目となるこのステージに立っているのだ。その重みと凄さを、アッパーな楽曲の合間に届けられるエモーショナルな楽曲の数々が、鮮烈に映し出しているように思えた。

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ライヴの要所要所では、各ゲストをステージに迎えて2曲ずつ披露するコーナーが。コラボ三部作に加え、10-FEETとは“hammer ska”、モンパチとは“DON'T WORRY BE HAPPY”、アジカンとは“遥か彼方”と各バンドの楽曲を共に奏でて会場を華やかに盛り上げていく。バンドごとに個性と笑いに溢れたトークも見どころ。個人的に面白かったのは、アジカンのゴッチが身長差のある谷中との2ショットを自虐的に披露するシーンでした。ちなみに亀田誠治との共演シーンでは、“The Look of Love”の演奏中にステージから姿を消していた川上。「このままスカパラに亀田さん加入でいいんじゃない?」というトークから“ハプニング”に突入するなり、ベースを弾き鳴らした川上がステージ中央からせり上がり、亀田とふたりでグルーヴィーなベースプレイを繰り広げた一幕は痛快だった。

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「20人のセッションもこんなに長いコンサートも初めてです。それに付き合ってくれて本当にありがとう!」という谷中の呼びかけから、観客全員で肩を組んでの横揺れが生まれた“All Good Ska is One”。この時点でスペシャルな演出は数知れず、記念ライヴに相応しい壮大なスケールで進んできたステージだったが、最大のサプライズはこの後に隠されていた。一度メンバーがステージを去った後、無人のステージにふらりと現れたのは、なんと『The Last』にライナーノーツを寄稿した小沢健二! 悲鳴のような歓声が沸き起こる客席を前におもむろに朗読を始め、彼らしい語り口でスカパラの魅力を解き明かしていく。朗読を終えてステージを去るオザケンとハイタッチをして再び9人が現れると、ゲストを迎えた20人でのセッションを経て、最後に9人のみで届けたのは、ベスト盤収録の新曲“The Last”。胸を突くメロディーと燦然とした輝きを放つ9人のアンサンブルが、25年の軌跡を経てなお前に突き進んでいくスカパラの未来を明るく照らし出していた。(齋藤美穂)

■セットリスト

01.The Last Session
The Movin' Dub(on the whole red satellites)~super stomper(w/10-FEET)~Melody(w/MONGOL800)~歌舞伎(w/亀田誠治)~N.G.S(w/ASIAN KUNG-FU GENERATION)~Lonesome Eddy(w/10-FEET、MONGOL800、亀田誠治、ASIAN KUNG-FU GENERATION)
02.ペドラーズ
03.スキャラバン
04.White Light
05.君と僕
06.Mission Impossible Theme
07.hammer ska
08.閃光
09.Diamond in your heart
10.ルパン三世'78
11.花ふぶき〜愛だろ、愛っ。〜 -Dub ver.-
12.SKAHOLIC GENERATION
13.DON'T WORRY BE HAPPY
14.流れゆく世界の中で
15.SKA ME CRAZY
16.DOWN BEAT STOMP
17.チャンス
18.The Look of Love
19.ハプニング
20.戦場に捧げるメロディー
21.水琴窟-SUIKINKUTSU-
22.Fuckin' In The Bushes
23.遥か彼方
24.Wake Up!
25.Can't Take My Eyes Off Of You -君の瞳に恋してる-
26.All Good Ska is One
27.JUST A LITTELE BIT OF YOUR SOUL
28.The Last
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