後藤まりこ@赤坂BLITZ

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「11月12日に『こわれた箱にりなっくす』というCDを出して、大阪・名古屋とワンマンでツアーしました。そして、2015年1月23日、今日が『私のRe:booooot ワンマンツアー』の最終日です!」……冒頭からブレーキ壊れた爆演でフロアを歓喜と衝撃で震わせてみせた後藤まりこの言葉に、熱い歓声が湧き上がる。昨年2月にマネジメント/所属レーベルとの契約終了を発表→無所属の状態のまま5月にSHIBUYA-AXワンマン敢行→新マネジメント決定&11月にキングレコード移籍後初アルバム『こわれた箱にりなっくす』をリリース……と激動の2014年を経て、2015年開幕早々から大阪・umeda AKASO(1月9日)、名古屋・池下CLUB UPSET(1月10日)と巡ってきた後藤まりこの東名阪ツアー『私のRe:booooot ワンマンツアー』のファイナル:東京・赤坂BLITZ。1曲1曲に己の存在と感情とリアリティのすべてを投げ出し暴発させる彼女の表現者精神が凄絶に極まった、圧巻のステージだった。

後藤まりこ@赤坂BLITZ
後藤まりこ@赤坂BLITZ
後藤まりこ自身のギター・アンプとAxSxE(G)/仲俣“りぼんちゃん”和宏(B)/マシータ(Dr)/坂井キヨヲシ(Key)/中村圭作(Key)の機材が半円状に隙間なくセットされたその中心で後藤がギターを構え、まずは『こわれた箱にりなっくす』のオープニング・ナンバー“触媒”を披露。紅蓮の衝動を目映いメロディに結晶させたような熱唱で、フロアを震撼させ高揚させていく。ここでギターを置いた後藤、アイドル・ポップ×パンク・ロックの正面衝突のような“関東ローム層”でフロア最前の柵に仁王立ちして大歓声を呼び起こし、両手にポンポンを持って軽快なダンスを繰り広げたポップ・ナンバー“れっつきるみ”へ……と最新アルバム曲を連射してみせる。「純粋さと獰猛さという対極の要素を併せ持って」ではなく、できる限り純粋に「今」を生きようとするがゆえに獰猛なまでに衝動を炸裂させずにいられない、という彼女の在り方が、『こわれた箱にりなっくす』の楽曲群からも切実に伝わってくる。

後藤まりこ@赤坂BLITZ
後藤まりこ@赤坂BLITZ
2ndアルバム『m@u』から“4がつ6日”、さらにシングル曲“sound of me”へ――という場面でフロアの熱気が一段と高まったところで、フロアの柵から今度は華麗にダイヴを決めてみせる後藤。曲中盤の《おやすみ〜おやすみ》のパートでは一面のハンドウェーブを巻き起こし、最後の《あたし、しあわせだ。》を力の限りに爆唱して無上の一体感を描き出してみせる。“Re:なくす”のイントロで、後藤ギター弾き語り状態でカオスの果てから静寂の極致まで歌い上げてみせた瞬間の濃密なスリル。“すばらしい世界。”のプログレ的なリズムと爆音の渦の中、オーディエンスを高らかなクラップへと導いてみせる彼女の躍動感とヴァイタリティ。狂気と情愛の狭間をメロディアスに漂う“好き、殺したい、愛してる”……ノイズとポップとジャズとパンクがせめぎ合い昇り詰めていく、後藤まりこにしか描けない音楽世界が、そこには確かに広がっていた。

後藤まりこ@赤坂BLITZ
後藤まりこ@赤坂BLITZ
終盤のMCでは、心臓の絵をあしらったツアーTシャツについて説明しつつ、サイリウムを手に「ブシュー! ザシュー!ってやって(とライトセイバーのようにメンバーを次々に斬る仕草)、死ぬの。で、リブートなの」と語りかける後藤の姿にフロアが沸く。しかしその直後、今後の活動について後藤から意味深な発言が飛び出すと一転、会場の空気が凍りつく。「これは僕の投身自殺です」と続ける彼女の言葉にオーディエンスの当惑と緊迫感が渦巻いたところで、“正しい夜の過ごし方”の《へい りすんとぅーざ music 聴こえる?私なんて》のリフレインがびりびりと観る者すべての身体と心を震わせていく。本編ラストを飾った“スナメリ”では、ミラーボールきらめき色とりどりの風船が飛び交う景色の中、後藤はギターをかき鳴らしながらマイクを握りしめ、絶叫とも絶唱ともつかない声を噴き上げていく……12曲を1時間ほどで爆風のように駆け抜けた、熾烈なアクトだった。

アンコールを求める熱烈な手拍子と「まりこ!」コールに応えて、まずは仲俣/マシータ/坂井/中村の4人がオン・ステージして“ゆうびんやさん”の軽快な演奏を繰り広げたところに後藤が登場、少女の如きイノセントな歌を聴かせていく。AxSxEが加わってフルメンバー編成になったところで、後藤がステージを降り、下手の柵に登ってイントロのフレーズを歌い始めた――と思いきや、リズム・インのタイミングで再び勢いよくダイヴ! 喉も裂けよとばかりの歌を放射しながら、観客の頭上をサーフしてステージ最前の柵に立ち上がり、もう一度クラウド・サーフしてフロア中央に仁王立ち、さらにそこからダイヴ、と捨て身のパフォーマンスでBLITZを狂騒空間へと引きずり込んでみせる。

後藤まりこ@赤坂BLITZ
「後藤まりこを殺すのは誰?」「寂しくなったら、僕の名前を呼んで!」「手を伸ばしたら、僕はすぐそばにおるから」……そんなメッセージに続けて放った“あたしの衝動”でフロアの温度をさらに高めた後、この日の正真正銘のラスト・ナンバーとして披露したのは“I / O”。「愛してくれてありがとう。これからもよろしく」と呼びかけ、ギターを構えた後藤がイントロのアルペジオを奏でながら、その合間に「後藤まりこを殺すのは誰?」「あなたでしょ」「僕が死なないようにずっと、あなたの中で生かしといて」と静かに言葉を挟んでいく。「僕なんかを愛してくれてありがとう。フィクションじゃなくて、ドラマじゃなくて、リアルで、後藤まりこを生かしてくれてありがとう」……そんな彼女の言葉と、《歌うことで 救われるのか/人は人に還れるのか》という真摯なフレーズが、そして渾身の歌声とともにひときわエモーショナルに突き上がるメロディが、バンド・メンバー一丸の至上のアンサンブルとともに響き渡り、空気を真っ白に染め上げて……終了。衝撃のライヴの痺れるような余韻が、後藤とメンバーが舞台を去った後も拭い難くフロアに満ちあふれていた。(高橋智樹)

■セットリスト

01.触媒
02.関東ローム層
03.れっつきるみ
04.ドローン&シンデレラタイム
05.4がつ6日
06.sound of me
07.Re:なくす
08.Hey musicさん!
09.すばらしい世界。
10.好き、殺したい、愛してる
11.正しい夜の過ごし方
12.スナメリ

(encore)
13.ゆうびんやさん
14.うーちゃん
15.あたしの衝動
16.I / O
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