マキシマム ザ ホルモン×KANA-BOON@新木場STUDIO COAST

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マキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)の体調回復を待って12月に告知され、年明けに開催されたマキシマム ザ ホルモンの最新ツアー「MAGROSTIC FRONT~kin to gin no tsutsumi ni haitta shikakui tuna no yatsu saikin tabeteru?~」。松山ではGOOD4NOTHING、大阪でtricot、名古屋でandrop、川崎でOVER ARM THROWと相見えて来た対バン・ツアーのファイナルは、前日1/21にニュー・アルバム『TIME』をリリースしたKANA-BOONを迎えてのステージである。

マキシマム ザ ホルモン×KANA-BOON@新木場STUDIO COAST
先行するのはKANA-BOON。谷口鮪(Vo・G)がやたら長いサブタイトルも含めてツアー・タイトルをコールしつつ挨拶し、勢いに満ちた高機動型ロック・バンドの姿勢をそのままぶつけるかの如く“フルドライブ”でパフォーマンスをスタートだ。ステージで披露されるたびに《フルドライブ フルドラァァイブ♪》と力強い節回しを備えて来た谷口の歌が、集まったオーディエンスを早速跳ね上がらせる。飯田祐馬(B)、古賀隼斗(G)と揃って3人がステージの縁に躍り出て来る“1.2. step to you”は、タイトなサウンドと機動性はそのまま、新作モードなのか楽曲の狂おしさ、エモーショナルな表現が増幅されている手応えがある。

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「僕、音楽を始めたきっかけが、他でもないホルモンだったんですよ。14歳の頃に、友達が『ロッキンポ殺し』をジャケ買いしたって言って、それを聴かせて貰って。もの凄い衝撃を受けて。中学の卒業文集に、将来の夢で、17歳でインディーズ・デビューして、20歳でメジャー・デビューして、ホルモンと対バンする、って書いたんですよ。10年越しに、夢が叶いました!」と語り、ツアー・タイトルと鮪との一致も含めて喜びを露にする谷口である。どこかワイルドな男臭ささえ滲ませる“盛者必衰の理、お断り”から、古賀のギター・ソロも熱く吹き荒れる“ワカラズヤ”。こんなふうに、感情表現豊かなサウンドを剥き出しにするKANA-BOONは初めて観た。開演前の出演者やスタッフ全員によるラジオ体操で、痛風のダイスケはんの身体が全然曲がらない、という谷口&飯田のMCも面白かったが、やはりウェットな情感も鮮やかに描き出してみせる“スノーグローブ”、そして少年時代のエピソードも紹介されたからこそ尚更グッとさせられる“シルエット”といったふうに、成長し続ける味わい深いバンド表現に魅せられたステージだった。

マキシマム ザ ホルモン×KANA-BOON@新木場STUDIO COAST
さて転換後、交差した骨のメロイック・サインの背後に無数のババアが描かれた巨大なバックドロップ(ステージにピッタリ合うサイズ)が浮上し、大歓声を巻き起こしながらマキシマム ザ ホルモンが登場である。ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)による「ライヴとベッドでは、マグロはあかんよ!」という言葉も飛び出したステージは、“恋のメガラバ”始まりでフロアを沸騰させる。それは確かに凄いのだけれども、えっ? ええっ!? と少し慌ててしまうくらい、サウンドがとんでもないことになっている。もちろんラウドはラウドだし音響も素晴らしい。その上で、4人のコンビネーションが驚異的な精度で噛み合い、タイトかつクリアに届けられるのだ。歓喜に渦巻くフロアを前に、ナヲ(ドラムと女声と姉)は「イエァァァアアー!! 新木場ー! 既に仕上がっとるやないかーい!」と昂った声を上げていた。

マキシマム ザ ホルモン×KANA-BOON@新木場STUDIO COAST
「特にリリースもない、自由なツアーへようこそ!」「自由だーっ!!」と、ナヲ&ダイスケはんは2人してさっそく無軌道トークを垂れ流しながらも、「三度の飯より飯が好き! マキシマム ザ ホルモンですー!!」の口上が轟き、亮君はワルい目をして魔貫光殺砲の溜めポーズ。そして“「F」”のヴォーカル・フレーズとビートが弾け飛ぶや否や、瞬く間にアンサンブルが引き締まって熱狂を呼び起こす、といった具合なのである。視界一面に合掌が揺れる“maximum the hormone”では、上ちゃん(4弦)の歌うようなベース・フレーズが伝い、コーラスのエフェクトを噛ませた亮君の幻想的なギター・プレイも浮かび上がって目眩を起こしそうになる。間を置かず亮君が歌い出すのは“鬱くしきOP~月の爆撃機~”。ということはもちろん、“鬱くしき人々のうた”へと連なって激しく明滅する照明演出の中でプレイされるのだが、終盤の折り重なるようなコーラス・ワークが余りにも美しかった。

マキシマム ザ ホルモン×KANA-BOON@新木場STUDIO COAST
聴く度に新しい発見がある、なんて言葉が音楽ファンの間では交わされたりもするけれど、いざライヴの場で、すべての演奏曲でそんな体験を味わうとなると、興奮し過ぎてどう対処していいのか分からなくなってしまう。高速で濃いグルーヴを練り上げる“便所サンダルダンス”は、Aメロからこんなにカッコいい曲だったのか、と痛感させられてしまうし、「鮪くんがツアー・タイトルのこと言ってましたけど、さあ、ツアー行こうかなってときに、あ、って気付きました。狙ってませんゴメンナサイ。まあ……ここで一緒に音を鳴らす運命だったんじゃないかな♡ 石原さとみです」といったユルいMCのおかげで、過剰な高揚感が丁度いい具合に中和される感じだ。そしてまた“ロッキンポ殺し”の鋭いフレーズのリレーが面白いようにクリアに届けられ、フロアの至る所でサークルヘドバンが繰り広げられる“ロックお礼参り~3コードでおまえフルボッコ~”、“生理痛は神無月を凍らす気温。”というハードコアの連打。このスピード感の中で、ばっちりスラップを決めてくる上ちゃんのスキルもさすがだ。

マキシマム ザ ホルモン×KANA-BOON@新木場STUDIO COAST
コンビネーションが噛み合ったまま緩急自在に“アンビリーバボー! ~スヲミンツ ホケレイロ ミフエホ~”や“ブラック¥パワーGメンスパイ”をプレイすると、ダイスケはんは「痛風じゃなくても曲がりにくいですから!」と告げて立位体前屈を見せてくれる。手の指先が、脛あたりまでしか届いていなかった。ユルい笑いをまたもや即座にリセットしてくれるのは“え・い・り・あ・ん”である。カオティックな展開を演奏力でバシバシと決め続け、ダイスケはんとスイッチしたナヲが優雅な身振りを交えて踊りながら、キュートな最終コーラスで無理矢理な感動を巻き起こす。音楽って恐ろしい。さらに、“メス豚のケツにビンタ(キックも)”でパンキッシュに駆け抜けると、「反るバージョンと跳ぶバージョン、どっちがいい?」と挙手を募って、恋のおまじない(反るバージョン)を敢行。本編は、すこぶる華やいだサウンドを届けて大型ミラーボールも回る“恋のスペルマ”のダンス&シンガロングで締め括られる。

アンコールに応えてからも、ナヲとダイスケはんが阿吽の呼吸で『キテレツ大百科』の“マジカルBoy マジカルHeart”を歌い出したりする(オーディエンスとのジェネレーション・ギャップは若干感じられたが)という自由気ままなムードを振り撒きながら、“ぶっ生き返す!!”と“握れっっ!!”で思いっきり拳を振り翳し、歌声を上げるフィナーレへ。どの曲が、ではなく、ホルモンって凄い、と今更バカみたいに思い知らされる、そんな衝撃的なステージであった。(小池宏和)

■セットリスト

<KANA-BOON>
01.フルドライブ
02.1.2. step to you
03.ウォーリーヒーロー
04.盛者必衰の理、お断り
05.ワカラズヤ
06.ないものねだり
07.スノーグローブ
08.シルエット

<マキシマム ザ ホルモン>
01.恋のメガラバ
02.「F」
03.What's up, people?!
04.maximum the hormone
05.鬱くしきOP~月の爆撃機~
06.鬱くしき人々のうた
07.便所サンダルダンス
08.ロッキンポ殺し
09.ロックお礼参り~3コードでおまえフルボッコ~
10.生理痛は神無月を凍らす気温。
11.アンビリーバボー! ~スヲミンツ ホケレイロ ミフエホ~
12.ブラック¥パワーGメンスパイ
13.え・い・り・あ・ん
14.メス豚のケツにビンタ(キックも)
15.恋のスペルマ

(encore)
16.ぶっ生き返す!!
17.握れっっ!!
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