サザンオールスターズ@横浜アリーナ

サザンオールスターズ@横浜アリーナ
サザンオールスターズ、実に9年振りの横浜アリーナ年越しライヴ「ひつじだよ!全員集合!」。ステージ後方の座席も解放された、オーディエンスに包囲される形でのステージが12/27・28、一日挟んで30、31の4日間、繰り広げられた。その初日の模様をレポートしたい(※写真は31日のものです)。“東京VICTORY”の華やかなコーラスを登場SEに、桑田佳祐(Vo/G)、原由子(Key/Vo)、関口和之(Ba/Vo)、松田弘(Dr/Vo)、そして2014年めでたく還暦を迎えた野沢秀行(Percussion)が、更にはサポート・メンバーとして片山敦夫(Key)、TIGER(Cho)、斎藤誠(G)、山本拓夫(Sax/Flute)、吉田治(Sax)、菅波雅彦(Tp)、佐藤嘉風(Cho)らも揃ってステージに立つ。国民的バンドに相応しい、賑やかな大所帯ライヴの幕開けだ。

原のブルージーなピアノ・プレイに導かれ、ゴリッとしたサウンドで繰り出されるオープニング曲は、今日においてもリアルな手応えを残す“Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)”だ。そしてアリーナごとぐっと持ち上がるようなアンサンブルで“フリフリ '65”へと繋ぎ、イントロで大歓声を浴びる“希望の轍”の中であらためて、桑田が高らかに挨拶を投げ掛ける。この歴代オリジナル曲の力を信じ切った「登場」感。楽曲そのものが最もドラマティックな演出だ、と言わんばかりである。桑田は「このときを待ってましたー! マシャでーす! 男ばっかりー! 男ばっかり集めて何が面白いんでしょうね」「僕ら一応、まだ元気ですからね!」「ステージバックの皆さんも、スタッフのつもりで見守ってくださいね!」とさっそく笑いめかしつつ、歓声に応えながら意気揚々と、再び歌に向かうのだった。

今回のライヴでは、セット・リストがいくつかのテーマで分割され纏められており、まずは「ちょっと懐かしの選曲コーナー」。セカンド・シングル“気分しだいで責めないで”に始まって『KAMAKURA』『SOUTHERN ALL STARS』辺りまでの楽曲が繰り出される。野沢のパーカッション大活躍の情熱的なラテン・フレイヴァーから“JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)”の無国籍ミクスチャー、“Computer Children”から立ち上るテクノ・ポップ混じりのアイロニー。そんな無限の引き出しを次々に開け放ちながら、絶妙のタイミングで文鎮のようにどん、と配置されるのは“メロディ(Melody)”の普遍的な旋律だ。この曲は、幻想的なライティングにも染まって実に美しかった。そして原のリード・ヴォーカル曲“鎌倉物語”では、山本のフルートの音色も心地良く差し込まれる。

サザンオールスターズ@横浜アリーナ
「何か質問あります? 今年、いろんなことがありましたけれども。は!? 紅白は、出ませーん! 今のところね」(※27日時点での発言です)と、桑田はユーモラスな表情を交えつつオーディエンスと言葉を交わし、あらためてのメンバー紹介という場面では関口が森本レオのモノマネを、原が黒柳徹子のモノマネを披露したりといったふうに、和気あいあいとしたムードだ。「ちょっとだけ新しめの選曲コーナー」では、露骨なお涙頂戴ではない、抑制を効かせた奥ゆかしいメロディだからこそグッとさせられる“LONELY WOMAN”。そして鮮やかなピアノ・イントロからロックンロールど真ん中へと飛び込む『キラーストリート』収録曲“ごめんよ僕が馬鹿だった”など、21世紀サザンも披露する。時代のどこを切っても名曲だらけなだけに、ライヴの展開を考慮した曲順に唸らされてしまう。

「忘年会のような気分でやっています。まだレコーディングの最中で、言えないけど言っちゃいます。来年、アルバム出します」と「進撃のサザン!2014」における第3弾トピックについても肉声であらためて約束し、大歓声を浴びる桑田である。「いろんなことがあったでしょう。私、皇居に行ってきました。なんか勲章をくれるって言われて」。見ます? と取り出した紫綬褒章を掲げて「五千円から!!」と恐れ多いジョークも飛ばすのだが、ここで黒澤明とロス・プリモス“ラブユー東京”の替え歌“ラブユー褒章”を歌い出し、《シジュ シジュ みんなの褒章ー♪》と締め括ることで、受章理由を完璧に説明してしまうさまが見事だった。

「とある港町の物語のコーナー」では、“涙のアベニュー”を皮切りにヨコハマ・ソウルを連発。“思い出のスター・ダスト”ではTIGERにリード・ヴォーカルをスイッチし、“LOVE AFFAIR〜秘密のデート”では若い女性オーディエンス1名をステージ上に招き入れるなど、サービス精神旺盛なパフォーマンスがさすがだ。ここでもやはり絶妙な曲順構成でアリーナを丸ごと高揚させ、「人生いろいろあるけれど、今年もホントにありがとう」というナレーションに導かれるのは“ピースとハイライト”。入場時に配布されていたLEDリストバンドが一斉に煌めき、ひたむきで肯定的なメッセージを投げ掛けながら桑田は真剣な表情で「カモーン!!」と手招きする。そしてステージ後方に聖火台の如く炎が揺れ、チャントのような歌声を巻き起こす“東京VICTORY”へ。ユニバーサル・デザインのポップ・ソング、何よりも最新のサザンが最強のサザンであることをこれでもかと伝える、圧巻の2曲であった。

サザンオールスターズ@横浜アリーナ
なのに桑田は、「えーと、こういうふうに4日間やるわけなんですけど……飽きたでしょ? 年取ると、しつこくなるのよ」と肩透かしを食らわせつつ、年越しライヴの都合ということで「時間調整のコーナー」という身も蓋もないタイトルのブロックへと向かう。世相を斬りまくる“爆笑アイランド”では《衆議院解散なんですと無茶を言う》という歌詞に差し替え、爆走コズミック・ロック・ショウと化す“イエローマン〜星の王子様〜”では、馬(午)と羊(未)の着ぐるみが喧嘩しているところに「やめろよ!何やってんだよ!」と割り入ってハグさせる。序盤から登場していた羊のセクシー・ダンサー、色とりどりの芸妓風ダンサー、サンバ・ダンサーが入り乱れる、まさに全員集合な“BOHBO No.5”→“ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL)”→“勝手にシンドバッド”というえげつない沸騰チューンの連打は、舌を巻くより他にない本編フィナーレであった。

アンコールに応えて今一度感謝の言葉を伝えると、“ロックンロール・スーパーマン 〜Rock’n Roll Superman〜”を披露したあとに「言いたいことはいろいろあるんですけれども、えー、現時点で紅白が決まっていないということと、いつ頃か分かりませんけれども春頃にアルバムを出して、せっかくアルバム出すんでね……何も言ってませんよ!」と思わせぶりに語る桑田である(2015年、年明けと共に改めてオフィシャルにアナウンスされた→http://ro69.jp/news/detail/116380)。アンコールでも最新モードのサザンをがっつりと見せつけ、最後に“Oh!クラウディア”でどよめきを巻き起こしながら渾身のパフォーマンスを届けると、全34曲のパフォーマンスは幕を閉じた。素晴らしいライヴはいつでもそうだけれど、胸の奥深くにまで根を張るようなメロディの余韻ゆえなのか、サザンのライヴ終演後はとりわけ強烈な寂寥感に襲われる。この気持ちが、また彼らの新しい歌への渇望を掻き立てるのかも知れない。今から、ニュー・アルバムが楽しみだ。(小池宏和)

■セットリスト

01.Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)
02.フリフリ '65
03.希望の轍
04.気分しだいで責めないで
05.匂艶 THE NIGHT CLUB
06.メロディ(Melody)
07.逢いたくなった時に 君はここにいない
08.あっという間の夢のTONIGHT
09.JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)
10.死体置場でロマンスを
11.Computer Children
12.鎌倉物語
13.BLUE HEAVEN
14.LONELY WOMAN
15.SAUDADE〜真冬の蜃気楼〜
16.ごめんよ僕が馬鹿だった
17 ラブユー褒章
18.涙のアベニュー
19.思い出のスター・ダスト
20.シャ・ラ・ラ
21.LOVE AFFAIR〜秘密のデート
22.ピースとハイライト
23.東京VICTORY
24.爆笑アイランド
25.愛と欲望の日々
26.イエローマン〜星の王子様〜
27.怪物君の空
28.BOHBO No.5
29.ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL)
30.勝手にシンドバッド

(encore)
31.天国オン・ザ・ビーチ
32.ロックンロール・スーパーマン 〜Rock’n Roll Superman〜
33.栄光の男
34.Oh!クラウディア
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