Base Ball Bear@Zepp DiverCity

Base Ball Bear@Zepp DiverCity
「バンドの結成日である11月11日(今年で13周年)に、下北沢GARAGEでファイナルが終わって、今日はまた初日みたいな、新鮮な気持ちでやれています。ありがとうございます」と本編序盤に小出祐介(G・Vo)が語っていたように、過剰な力みがなく、ときにユルいMCも挟みながら、ツアーを通して育て上げられて来た『二十九歳』の楽曲群にじっくりと浸るステージであった。2ヶ月強の新作ツアー追加公演(23本目)にあたる、Zepp DiverCityである。

18時きっかり、心なしか男性ファンの野太い声が多い歓声を浴びて(小出は後に、Base Ball Bearは男性ファンが多い、と話していた)4人が姿を見せると、湯浅将平(G)の歪みながらも美しいギター・フレーズがなびき、刺激的なサウンドと瑞々しくポップなメロディで届けられるオープニング・チューンは『二十九歳』同様“何才”だ。続いて、メンバー間でしっかりとコンビネーションを確認し「いくぞお台場ー!!」と繰り出されるのは、一面的な享楽性ではない、悩み戸惑いながらのダンスに誘う“アンビバレントダンサー”。膝を折って全身でベース・ラインをグルーヴさせつつ、ステージ上を右へ左へとステップする関根史織(B・Cho)。ここでの湯浅は、速いフレーズを弾きまくるというより、あたかも響きの良い声を持つ人が語りかけるようなギターを奏でていて、序盤から好調ぶりが伺えた。そして、堀之内大介(Dr・Cho)が湯浅をビッと指し、鮮烈に鳴り響くのは“PERFECT BLUE”。瞬間を永遠に真空パックするベボベの音と言葉の力が、遺憾なく発揮されていった。

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「前回の下北沢から約2週間、僕はまったくメンバーとも会わず、まあリハーサルはあったんですが、ずっと『ゼルダ無双』というゲームをやっていました」「ずっとLボタンを押しっ放しのゲームで、昨日12時間ぐらいLボタンを押し続けていたら指が痛くなって(笑)。お風呂の中でこう、動かしてたら、大丈夫になりました!」と、微妙な武勇伝でマシンガン・トークを飛ばしまくる小出。ヴィーナスフォート(お台場)で新婚さんの中国人観光客に話しかけ、「馴れ初めとか聞いて、でもそれ以前にも、付き合ったりとかいろいろあったんじゃないですかって訊いたら、前の恋人はそんなに好きじゃなかったって言ってました!」と、ネタっぽい前フリで沸かせて“そんなに好きじゃなかった”に向かう。歌い出しでオーディエンスの嬌声を浴びる“STAND BY ME”は、堀之内による手数の多いビートがしっかりと歌をブースト・アップしている。楽しそうな4人の姿が、そのままサウンドに表れているのがいい。ヘヴィなサウンドを振り回して焦燥感が熱を帯びる“Ghost Town”、そこからフレッシュで眩い“17才”が鮮やかなクラップを誘ったりと、新旧の楽曲を並べてコントラストを描き出してゆく。

小出が『ゼルダ無双』に夢中になっていた頃、他の3人は何をしていたかという話題を経て、加齢・健康ネタへと展開する無軌道MCタイム(小出が金メッシュにメガネといった堀之内のヴィジュアルを茶化してすぐさま「あ、塁さんごめん!」と金髪×メガネ姿のカメラマン・橋本塁氏に謝罪したりもしている)。そんな中で「あたしねえ、ここにきて一番元気かも知れない。思春期の頃は、いつも疲れてた」と語るのは関根である。小出は唐突に《追加した〜い 定食食べたら 納豆追加した〜い♪》といったアドリブの弾き語りをスタートさせ、「言えよプラスワン!」「プラスワン!」とコール&レスポンスを巻き起こしていた。小出は「初日みたいな」と語っていたけれど、ボーナス・ステージとでも言うべき自由度である。しかし、この直後に滑らかなファンキー・セッションで“スクランブル”へと向かって堀之内のドラムソロを挟み、更に甘くほろ苦い陶酔感に彷徨う“方舟”、果てしなく続く人生と向き合ったときの心象を生々しく描き出す“The End”といった『二十九歳』のディープ・サイドの一幕は、あらためてアルバムの一曲一曲の濃さ、生活を直視する歌の凄さを味わう時間になった。

Base Ball Bear@Zepp DiverCity
小出は「いいアルバムですよね」と満足げに語りつつ、作品毎に変化を加えてきたバンドのキャリアにも触れて「Base Ball Bearが青春っぽいと思っている人は、それは一部です。本質ではないです。経年変化というか……記憶は、印象は残ってますよ。匂いとかは覚えてるんですけど、でも具体的なことは薄らいでいくというか。30過ぎてスクール感とか、ちょっとAVっぽいじゃないですか(笑)。これからもっと面白くなると思うし、今が一番、メンバーと仲いいですもん。前は、誰かしら嫌いだったけど(笑)。今は音楽との距離感がいいというか、メンバーとの距離感も」と告げていた。そして「作ったときは嫌いだった曲で、なんでこんな歌詞書いたんだろうって。若いときは、自分は悪くない、世界が変われって思ってたんですよ。でも今は、自分が世界で、自分が変われば……世界もそんなに悪くないよって(笑)。“恋するフォーチュンクッキー”みたいな。『二十九歳』にも繋がっている、大切な曲です。“changes”という曲をやります」と語ってパフォーマンスへと向かう。懐メロではない、ダイナミックで力強い演奏が、今の歌として響く“changes”を支えていた。

そこから“CRAZY FOR YOU の季節”、“UNDER THE STAR LIGHT”と畳み掛けるアップリフティングな終盤戦へ。とりわけ“UNDER THE STAR LIGHT”の嵐のようなサウンドは、ベボベのロック・バンドとしての凄味をまざまざと見せつけるものだった。大作にして既に消化され血肉化された“光蘚”も、力むことなく壮大なスケール感で描き出されてしまう。本編フィナーレを飾る“魔王”は、《いないことにされてた 僕の呪いが/君の傷を癒す お呪いになりますように》という願いもひっくるめてドラマティックに躍動し、次のフェーズを迎えるファンファーレのように鳴り響いていた。

Base Ball Bear@Zepp DiverCity
アンコールでは、「4つ打ちロックって呼び方、すっげえ嫌いなんですけど、敢えて言うならその4つ打ちロックのクラシックです」とプレイされる“ELECTRIC SUMMER”でまたもや沸騰。そして小出は、今後のBase Ball Bearのアクションとして、新たなシリーズ・ライヴ「LIVE IN LIVE」の開催を告知した。すべてのベボベ楽曲を対象に選曲し、例えば「ラヴ・ソングのみ」「B面曲のみ」「アルバム再現」といったテーマでライヴを行うのだそうだ。記念すべき第1回は2/4の渋谷クラブクアトロ。また、3月からはツアー「二十九歳+一(プラスワン)」も開催予定で、既に15公演がスケジュールされている。「海外バンドの真似すればいいってものじゃないけど、向こうだとアルバム出して2、3年ツアーするのは当たり前だから、行ってないところを中心に回ります」。なるほど、あの「プラスワン!」のコール&レスポンスは、この伏線だったわけだ。

「今日はホント、MC長くてごめんなさい! あ、僕、今日でたぶん29歳最後のライヴです!」と告げた小出が、「ドラムス・堀之内大介! いまだに実家住まい、別にいいけど!」とコールし、ドラム・イントロが鳴り響くという絶妙のタイミングで、2階席から小さな子供の声が発せられる。笑いを巻き起こし、あらためて披露される“カナリア”で、今回のステージは大団円を迎えた。湯浅のダンス・タイムを見ることが出来なかったのはちょっと寂しかったけれど、充実した楽曲制作、充実したライヴ、充実したバンド・ライフ。それらを胸に30代に差し掛かろうとするBase Ball Bearは、今後の大きな期待を抱かせてやまなかった。また、彼らはCOUNTDOWN JAPAN 14/15の大晦日、EARTH STAGEに17:55から出演を予定している。4人のサウンドから滲み出る充実感を、ぜひ味わって欲しい。(小池宏和)

■セットリスト

01.何才
02.アンビバレントダンサー
03.PERFECT BLUE
04.そんなに好きじゃなかった
05.STAND BY ME
06.Ghost Town
07.17才
08.スクランブル
09.方舟
10.The End
11.changes
12.CRAZY FOR YOU の季節
13.UNDER THE STAR LIGHT
14.光蘚
15.魔王

(encore)
16.ELECTRIC SUMMER
17.カナリア
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