SHISHAMO@赤坂BLITZ

SHISHAMO@赤坂BLITZ
16ヵ所19公演を廻ったSHISHAMO史上最長ツアー「SHISHAMO ワンマンツアー2014 秋『君ときみの彼氏と転校した彼女の日曜日のデートプラン』」。新メンバー・松岡彩(B)が加入してからわずか1ヶ月ほどでツアーは始まった。ライヴ中のMCにもあった通り、メンバーは「バンドが終わってしまわないか」「ツアーをちゃんと廻れるかどうか」という不安でいっぱいだったという。しかし、松岡の加入という出来事や彼女の存在自体がバンドに新しい風を吹き込み、宮崎朝子(G・Vo)と吉川美冴貴(Dr)をさらに強くさせた。自分たちの音楽を鳴らし、そしてそれを楽しむファンたちの姿を目の前にすることが、3人にとっての大きな喜びとなった。最初から最後まで、新生・SHISHAMOの門出に対する祝祭感に満ちた、ツアーファイナル・赤坂BLITZ公演。「今日来てくれてるってことはこれからも応援してくれるってことだと思うけど……これからもSHISHAMOをどうぞよろしくお願いします!」という宮崎の言葉に対して沸き起こった大音量の拍手が、このツアーの充実度を表していた。

場内が暗転すると同時にSEが流れ始め、それに合わせてハンドクラップが自然発生。そのハッピーなムードに迎えられる形で吉川美冴貴、松岡彩、宮崎朝子が走ってステージに現れると、待ってました!と言わんばかりに人の波がステージ目がけて押し寄せる。1曲目は“彼女の日曜日”。小柄な体で小刻みにリズムをとりながら松岡は芯のある低音を奏で、そこに吉川が刻む生き生きとしたリズム、宮崎のキュートな歌声が乗っかり、エッジの効いたギターがスパイスとなる。そこから、リバーブが深くかかったサウンドが幻想的な“深夜のラジオ”へと繋げる。「赤坂のみなさん、SHISHAMOです。今日はどうぞよろしくお願いします」(宮崎)と軽めの挨拶を済ませると、“僕に彼女ができたんだ”イントロのカッティングで沸き上がる歓声。ステージ前方にてときどき楽器を上に掲げながら演奏する宮崎は笑顔を浮かべていた。最初のMCでは「ベースの松岡彩です。あさちゃん、美冴貴ちゃんの1個下です」と松岡が自己紹介。フロアからは男女問わずあちこちから「かわいいー!」と歓声を上がってきた。そしてシングル『量産型彼氏』カップリング曲“きみと話せないのは”、宮崎の声が一段と伸びていた“行きたくない”、陽気なリズムラインと終盤でのテンポ加速が高揚感を生み出す“サブギターの歌”と様々な曲調の楽曲を連投していく。その振れ幅の広さは、「少女マンガのようなストーリーによるフィクション性」と「登場人物の感情描写によるノンフィクション性」が交差するSHISHAMOの世界をより立体的にさせていた。フロアからの声の大きさに対して「今日はあんまり元気ないんですかねぇ」などと言いつつも楽しそうに何度も「赤坂!」と呼びかけていたのは宮崎。そのまま「中学生!」「小学生!」「専門大生!」「大人!」などコール&レスポンスを行っていく(ちなみに小学生のファンは宮崎にどこでSHISHAMOを知ったかを訊かれて「YouTube!」「お父さんから!」と答えていた)。ここでツアーでの思い出が話題に上がり、吉川は福岡公演の終演後にファンの女の子から「結婚してください!」と言われたことを告白。松岡は北海道で食べた親子丼がおいしかったと話し(吉川は新潟のタレカツ、宮崎は岡山のポップコーン屋のアイスを挙げていた)、宮崎はハロウィン期の札幌・すすきのの盛況っぷりへの驚きを語った。

そのあとは、スタジオへ向かうときに乗るという地元・川崎を走る電車についての楽曲だという“がたんごとん”、そして“転校の歌”と温かいアンサンブルが続く。中盤のMCでは宮崎の口から松岡加入の経緯が語られたのだが、3人が出会ったのはSHISHAMOが8月31日に出演した「RUSH BALL 2014」のステージ裏だったのだそう。専門学校の研修として楽器の搬入・搬出をしていた松岡に、「手際が良くて、顔が好みのタイプだったから」という理由で宮崎が声を掛けたのが始まり。そこから話をして翌日に3人でスタジオに入ったところ、松岡の演奏する姿からベースが好きだということがよく伝わってきたこと、もしも彼女が吉川と一緒にやったら面白いんじゃないかと感じたことなどを理由に、その日に加入が決まった。ハイスピードで人生が変わってしまった松岡本人は大阪を離れたくないから断るつもりだったのだが、両親からの言葉をきっかけに「やってみたい」という自分の気持ちに素直になり、加入することに決めたという。そんな松岡の初お披露目MVの楽曲……という宮崎の曲紹介で“量産型彼氏”へ突入しようとするも、「あ!服着てきたんですよ~!」とそのMVと同じ衣装を着ていることを無邪気に主張する松岡。愛嬌のあるマイペースっぷりにフロアからは笑いが起こったのだった。ラストに向かって徐々に熱を帯びていく様子がドラマチックだった“こんな僕そんな君”を終えると、今度は吉川によるMCタイム。前ベーシスト・松本彩の脱退から松岡加入までの間はバンドが続けられるのか不安だったこと、ツアーが始まる1週間前まではセットリストを通して演奏することができない状態だったこと、初日公演直前に通しで演奏できるようになったのだということ――『吉川美冴貴の本当の気持ち』と題して本音を語っていく。そして「(ツアーを)やりきれて嬉しかったです。SHISHAMOはまた新しくできる。ツアーを3人で廻れる。松岡に出会えてよかったし、感謝してます」と吉川。そして「この3人のSHISHAMOを受け入れて、ライヴに足を運んでくださるみなさんに感謝しています。本当にありがとうございます!」という彼女の言葉に惜しみなく拍手が贈られたのだった。

あっという間にライヴは終盤。オーディエンスによるハンドクラップと真っ白な照明が楽曲の眩しさを具現化するようだった“君と夏フェス”、タオル回しで大盛り上がりの“タオル”などのアッパーチューンを経て、宮崎の弾き語りから始まる“君との事”で本編終了。アンコールを求める拍手に応じて再登場した3人はまず“あの子のバラード”などの3曲を演奏。そのあと、来年1月に新木場スタジオコーストで行われる「KICK OFF VIVA!!!」への出演、さらに4月にZepp DiverCity TOKYOでワンマンライヴを開催することを発表し(来年春のワンマンツアーのうちの1公演。詳しくはこちら→http://ro69.jp/news/detail/114343)、オーディエンスを沸かせた。そして「いい意味でツアーファイナルって気負わずにこれまでの18本と同じように、かつ18本で得たものを上手く伝えることができたと思います」(吉川)、「大阪から東京に来ていろいろあって大変だったし迷惑もかけたけど、最後までやることができてよかったです。こんなに人が来てくれて嬉しかったです」(松岡/宮崎に「泣いたらクビだよ!」と言われながらも目を潤ませ言葉を詰まらせながら話していた)、「ツアーを廻れるのか、みんながライヴに来てくれるのか不安もあったけど、不安関係なしにみんながライヴを楽しんでくれてるのが嬉しくて。諦めなくてよかったです」(宮崎)と胸の内を語る3人。「またみんなに会いに来てほしいなと思ったので、会いに来てくれますか?」という宮崎の言葉にオーディエンスたちは拍手喝采で返事をしたのだった。「終わっちゃうんですけど……嫌だね。でも終わりますね」と“休日”をラストに披露。最後のサビでは、会場一体となっての大合唱がライヴのフィナーレを飾った。(蜂須賀ちなみ)

■セットリスト

01.彼女の日曜日
02.深夜のラジオ
03.僕に彼女ができたんだ
04.きみと話せないのは
05.行きたくない
06.サブギターの歌
07.がたんごとん
08.転校の歌
09.量産型彼氏
10.恋愛休暇
11.こんな僕そんな君
12.君と夏フェス
13.タオル
14.恋する
15.君との事

(encore)
16.あの子のバラード
17.デートプラン
18.バンドマン
19.休日
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