あっ、良いライブここにあります。2014@渋谷TSUTAYA O-EAST

グッドモーニングアメリカ主催フェス「あっ、良いライブここにあります。2014」。始まりは、音楽が飽和している時代だからこそ「多くの人に自分たちの音楽を、そして仲間の音楽を届けたい」「何かのきっかけを作りたい」という想いのもと、グドモが主催したオムニバスCD『あっ、良い音楽ここにあります。』。そのレコ発ライヴはフェス形式のイベントへと発展し、規模を拡大させながら3年目を迎えた。今年は東名阪での開催。最終日の東京・渋谷TSUTAYA O-EAST公演では、ジャンルの枠組みなんか関係なしに様々な音楽が鳴らされ、金廣真悟(Vo・G)/渡邊幸一(G・Cho)/たなしん(B・Cho)/ペギ(Dr・Cho)の4人だからこそ作ることができた唯一無二の、まさに4人の想いの賜物のようなフェスがそこに生まれたのだった。以下では、計15組のアクトを駆け足でレポート!

グドモ4人による前説を経てメインステージであるファイヤーステージに登場したのは、当日になって発表されたシークレットバンド・KANA-BOON! SEなしで堂々と登場すると会場から大きな歓声が上がった。「一発目を任されたからには盛り上げて帰ろうと思います」という谷口鮪(Vo・G)の宣言通り、フロアをドッカンドッカン盛り上げていく4人。「ファイ×6 ファイヤー♪」「良い×6 良いフェスー♪」とこの日にちなんだコール&レスポンスで沸かせた“ないものねだり”のあと、ラストを飾ったのは“シルエット”。11月26日リリースのシングルの表題曲であるこの楽曲は、光を目指してどこまでも伸びていくバンドのサウンドが印象的だった。

ファイヤーステージと、フロア上手側に設置されたパッションステージを交互に使いながらイベントは進行していく。パッションステージのトップバッターを務めたのはircleだ。ときにはメロディラインをはみ出してオフマイクで叫びながら、まるで吠えるかのように唄う河内健悟(Vo・G)。焦燥感を漂わせながら熱を増していくバンドのサウンド。殴り合いのように凶暴であると同時に、決して潰し合わずに、お互いを鼓舞しあうかのような絶妙な関係性だ。そんなスリリングなアンサンブルを味わえるアッパーチューンも良かったが、「この4人でできる限り心を誠心誠意伝えていきます」というMCのあとのミディアム・バラード“失敗作”には胸を打たれた。

ザ・チャレンジは、2012年:カレーの売り子、2013年:オープニングアクト(パッションステージ)を経て、今年は満を持してファイヤーステージに登場だ。沢田チャレンジ(Vo)/チャレンジオノマック(Vo・G)/タラコチャレンジ(Vo・G)が代わる代わるメインヴォーカルをとっていくスタイル。“キラキラ”“一等賞”では恒例の振りつけを楽しみながら踊るオーディエンスの姿が目立った。「お前ら、金髪でサングラスのヤツが好きなんだろ!?」と自身がグドモ・たなしんに似ていることをネタにしていた沢チャレ。しまいには「3、2、1、チャレンジー!」と大合唱してからラストチューン“恋をしようよ”へ突入したのであった。

ザチャレのライヴが終わるとフロアがどよめき始めた。というのも、パッションステージ上はネコグスパブリッシングのメンバー+白装束×顔面カラフルペインティングの人×7(フロアに風船を投げ込んでいる)+中央に透明な巨大風船、というカオスな状況だったからだ。高橋とーる(Vo・G)は巨大風船内に入ってそのままフロアの観客の上を転がり始め、そのまま演奏がスタート。不安定なコード、キャッチーなリズムライン&ギターリフ、とーるの粘着質な声――それらが混ざった楽曲たちも不可思議な世界の住人のようだ。ラストの“人生”では白装束の合唱&ダンスが楽曲を彩って大団円。計4曲、呆気にとられているうちにあっという間に時間が過ぎてしまった。

小休憩を挟み(休憩時間中は「あっ、良いお笑いここにあります。2014」と題してお笑い芸人がネタを披露していた)、ファイヤーステージのヒトリエからライヴが再開。それぞれのパートの音同士をカッチリ噛み合わせなければたちまち破綻してしまいそうな複雑な楽曲群も、しっかりとした熱量で以ってそれらを表現していく4人の手腕はさすがだ。1曲目“センスレス・ワンダー”から、wowaka(Vo・G)がシャウトし、シノダ(G・Cho)が前方に出てきてフロアを煽っていた。11月26日リリースのアルバム『WONDER and WONDER』から、5拍子と6拍子を行き来しながら転がっていく新曲“5カウントハロー”も披露した。

パッションステージ・赤色のグリッターは“愛の舌打ち”からスタート。会場奥まで伸びていく佐藤リョウスケ(Vo・G)の声&ギターの音色に3人の音が加わり、徐々に熱を帯びていく。「君」と「僕」の関係性、それに伴う様々な感情を描き出す彼らの楽曲が、ときには丁寧に紡がれ、ときには激しく掻き鳴らされることによってよりリアルになっていく。「パッションっていう言葉の意味を調べたら、『信念』と『愛情』という2つの意味がありました。僕らは『愛情』の方で行こうかなと思います」という佐藤の言葉にも納得だ。『あっ、良い音楽ここにあります。その四』参加曲の“ハナミズキ”ではハンドクラップも起こって温かい雰囲気に包まれた。

サウンドチェックを終えたLOST IN TIMEはそのままファイヤーステージに残って「じゃあボチボチ始めようか。ジングルくださーい」(海北大輔/Vo・B・Piano)とそのまま演奏を始める。全ての音の真ん中を射るかのような真っ直ぐな海北の歌声とバンドのサウンド。ここまで4~5人編成のバンドのライヴが続いたが全く物足りなさを感じないのは、その音に3ピースバンドとは思えない大きなスケール感と充分なゆとりがあるからだ。会場限定シングルとして今後発売予定の音源に収録される“366”、「歩き続ける全ての人へ。歩き続けるグッドモーニングアメリカへ」という言葉が添えられた“30”など、計5曲を演奏した。

4人で息を合わせて一発鳴らしたあと、「SHIT HAPPENINGです、よろしくお願いします!」と威勢よく小野崎建太(Vo ・G)が挨拶すれば、SHIT HAPPENINGはまず“透明人間”を投下。このバンドはとにかく音一つひとつに込められた熱量がものすごい。ギターのカッティングは鋭利で、リズム隊は底から自らのバンドを煽っているかのようだ。そんな演奏に対してフロアからは終始いくつもの腕が上がっている。そしてまたそういうオーディエンスのリアクションを見渡しながらたくさん笑ってみせるメンバーの表情が印象に残った。計6曲全てアッパーチューン、容赦なしのセットリストで攻めまくりの30分間だった。

フェスは後半戦に突入、続いてはファイヤーステージにて忘れらんねえよ。“Love Forever”(加藤ミリヤ×清水翔太)をバックに柴田隆浩(Vo・G)が金髪ロングヘアのカツラを被ってフロア後方から登場(どうやらミリヤのつもりらしい)。そしてステージ上でカツラを投げ捨てる。「改めてDragon Ashです!」と挨拶したり、柴田もオーディエンスに混ざりつつフロアを左右に分けてEXILE対決(“Choo Choo TRAIN”のようにグルグル回る)を繰り広げたり、とネタも山盛り。しかし、“ばかばっか”での老若男女がもみくちゃになっているフロアの様子、そしてラストの“バンドやろうぜ”の真っ直ぐさには胸が熱くなった。

パッションステージの5番手・JELLYFiSH FLOWER'Sは、この日の出演者のなかで最もシンプルな音を鳴らし、最もシンプルな楽曲を鳴らすバンドだった。松尾昭彦(Vo・B)の歌声は芯のある中音域で、ときに力強く、ときに切なく、その場面によって様々な表情を見せてくれる。そこにギター+ベース+ドラムのみの3ピースサウンドが加われば、歌い手が表現する感情はとてもリアルな状態で、ダイレクトに聴き手の元へと届けられ、刺さっていく。オーディエンスたちも固唾を飲んで目の前で鳴らされている音楽を見つめている様子だった。歌詞が印象的だった新曲“緑”は特に強く響いた。

続いてファイヤーステージに登場したのは、東京カランコロン。ヘビーなバンドサウンドとキーボードの奇天烈なメロディラインとの対比が面白い“16のbeat”、せんせい(Vo ・Key)の歌声がキュートな“恋のマシンガン”、いちろー(Vo・G)がリードヴォーカルを務めるロック色の強い楽曲“笑うドッペルゲンガー”……とバンドが持つキャラクターをくるくるとお披露目していく5人。年明けにリリースされるアルバム『UTUTU』収録曲“ヒールに願いを”はドリーミーな雰囲気のなかに不安定な和音が混ざっていたりして、柔らかくも一筋縄ではいかなさそうなミディアム・バラード。新譜でもまたバンドの新たな面に出会えることを期待したい。

SEが鳴るなり発生したハンドクラップに迎えられる形でパッションステージに現れたasobius。そのまま“starlight”でライヴをスタートさせる。思い思いのスタイルで楽曲を楽しんでいるオーディエンスの様子を見るメンバーは柔らかく笑っていて、その表情には余裕すら感じた。約3ヵ月ぶりにライヴを観たが、以前よりもいい具合に肩の力が抜けて音がより遠くに飛ぶようになった印象。映画音楽のような楽曲のスケールがより忠実に再現されるようになってきた。グドモについて、「イベントを企画することは大変だし、人徳があってこそできることだと思う」と甲斐一斗(Vo)。ラストには新曲“window”も披露した。

タイムテーブルはいよいよラストのブロックに突入! 黒幕越しのサウンドチェックから会場を沸かせていたのはGOOD ON THE REELだ。1曲目は“素晴らしき今日の始まり”。大きく腕を広げたりしながらその歌声で空気をビリビリ震わせていく千野隆尋(Vo)は、メンバーとアイコンタクトをとりながら満面の笑みである。「楽しいでも、嬉しいでも、悲しいでも、苦しいでも。それが全て、あなたの世界が全てです。あなたの世界で僕たちを受け取ってください」という言葉通り、フロアにはハンドクラップする人もいれば、食い入るようにステージを見つめる人もいる。ラストの“ハッピーエンド”ではシンガロングも起こってハッピーなムードに包まれた。

そしてパッションステージのトリは、04 Limited Sazabys! ハイスピードの楽曲を渾身の力で鳴らしていくバンドのサウンドに乗って、炸裂するGEN(B・Vo)の少年のようなハイトーンヴォイス。キャッチーなメロディラインも相まって即効性の高いその演奏に、1曲目“swim”からフロアは大熱狂。後方まで多くの頭が大きく揺れ、ダイバーも続出している。中盤には「盛り上がりすぎて前列が危険な状態になっている」と一旦演奏ストップの指示が出されてしまうほどだ。ラストのグドモにできるだけアツいバトンを渡したいと語るGENが、歌詞を《グッドモーニングアメリカが立たせてくれたこのステージ》とアレンジする場面もあった。

いよいよ、大トリのグッドモーニングアメリカのライヴ! 本フェス開催3年目にちなんでサンタクロース姿で現れ、フロアを通ってファイヤーステージに辿り着くと「このイベントをやって本当によかったと、みんなの顔を見て思います!」とたなしん。恒例のファイヤーコールを経て、“アブラカタブラ”からライヴはスタートした。ここまで出演した全バンドからの想いを背負い、さらに目の前で熱狂するオーディエンスからの想いを受け止めたグドモの演奏には凄みがあった。特に“空ばかり見ていた”で楽器を床に置いてからハンドマイクを手にフロアへ飛び込み、多くの人に支えられながら唄う金廣の姿は、間違いなくこの日のハイライトのひとつだっただろう。MCで、自分たちの周りにいる良いバンド/音楽が広まらないで終わっていくことの悲しさ・悔しさを語った渡邊。「繋がって広がって、音楽やバンドが続いていけばいいな、今日もそういう日になっていたら心から嬉しいです」とこのフェスに込めた願いを言葉にすると、会場からは大きな拍手が起こったのだった。曲が始まるなり大合唱が起きた“未来へのスパイラル”で本編を終えると、アンコールでは「このイベントを立ち上げたころにやっていた大切な曲」と紹介して“光となって”を演奏。《その輝きが/この絆が/消えぬ様に/俺は歌を歌う》――人と人との繋がりを大事にしてきたグドモだからこそのフレーズは、その場所で確かに最上級の輝きを放っていた。(蜂須賀ちなみ)
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