チャットモンチー「9周年記念ライブ“9愛”」@Zepp DiverCity

今夏、「ROCK IN JAPAN FES.2014」で、1年半ぶりに新体制で復活したチャットモンチー。新バンドは、橋本絵莉子、福岡晃子に、サポートメンバーの恒岡章(Hi-STANDARD, CUBISMO GRAFICO FIVE)、下村亮介(the chef cooks me)の4人。今回の自主企画ライブ「9周年記念ライブ“9愛”」は、2005年のメジャーデビューからの9年の活動を、対バンを招いて祝う記念ライブで、チャットモンチーのほか、the chef cooks me、group_inou、くもゆき、あさ・ひる・ばんが登場。いずれもチャットモンチーと深い関係のある対バンで、会場に詰めかけた熱いファンとともに、新しい門出を祝う「チャットモンチー愛」にあふれたライブとなった。

チャットモンチー「9周年記念ライブ“9愛”」@Zepp DiverCity - pic by 古溪一道pic by 古溪一道
<あさ・ひる・ばん>
チケットは早々にソールドアウト。会場の熱気から、新生チャットモンチーへの期待の高さが伝わる。開演時間に場内が暗転すると、樹齢9年という、人の背丈サイズのもみの木のMCが、オープニングアクトのあさ・ひる・ばんを呼び込んだ。「当たり前を気づかせていく」「謎のアーティスト」という触れ込みだが、ひょこひょこと現れたのは、1人アコギを抱えた橋本絵莉子で、あさ・ひる・ばんとは、彼女の変名プロジェクトなのだった。とはいえ、えっちゃんは「あさ・ひる・ばんは、ライブが(今日)人生で2回目で、しかも1回目はもう4、5年前」とあいさつ。脱力系のリラックスした空気が広がるが、演奏は、1曲目にウルフルズのカバー“サムライソウル”を熱唱。男言葉の関西弁が絶妙にハマる。さらに「あさ・ひる・ばんは、チャットモンチーのすき間産業として、すき間をゆるく狙って、チャットモンチーが最近やっていない古い曲をやります」と言い、(一応)チャットのカバーとして“キャラメルプリン”を披露し、大歓声を浴びた。最後に加山雄三の“君といつまでも”を「チャットモンチーに捧げます」と言って歌ったが、曲中間部の語りなど、えっちゃんからあっこへの親愛の表現とも受け取れ、ラストにホロっとさせられもした。

チャットモンチー「9周年記念ライブ“9愛”」@Zepp DiverCity - pic by 古溪一道pic by 古溪一道
<くもゆき>
2アーティスト目は、あっことおおはた雄一の2人が「こどももおとなも一緒に楽しめる曲を作る」をテーマに2013年8月に結成したユニット、くもゆき。あっこはMCで「まずは、足湯をテーマにした曲です」(“I see you, You see me〜足湯のうた〜”)「次はパクチーの存在感を歌ってみました」(“I ♡ パクチー〜パクチーなしじゃ生きられない!〜”)などと解説。穏やかながら、ノリのよい演奏で、客席から自然に笑い声と手拍子が起こるなど、明るい雰囲気で包んでいく。子どもにも理解できる親しみやすい歌詞と、アメリカンフォークやラグタイム風の、音楽に詳しい大人にも「おっ!」と楽しめるメロディのマッチングが楽しく、3曲目の“ザ・ギョーザ!”では、チャットモンチーのマネージャー氏がドラムで参加。最後は喘息持ちのおおはたがパンクなドラムを披露する“ぼくは喘息もっちもち”で大盛り上がり。年齢やジャンルにこだわらず、音楽を心から楽しもうという自由な空気が心地よかった。

チャットモンチー「9周年記念ライブ“9愛”」@Zepp DiverCity - pic by 山川哲矢pic by 山川哲矢
<the chef cooks me>
続いて、シモリョーこと下村亮介(Vo・Key・Programming)、佐藤ニーチェ(G)、イイジマタクヤ(Dr・Percussion)を中心に、ベース、パーカッション、キーボード×2を加えた7人で登場のthe chef cooks me。シモリョーは、新生チャットモンチーのサポートメンバーでもある。最新アルバム『回転体』を中心に“環状線は僕らをのせて”で、ラップや女性ボーカルを交えた緩やかな声のループからスタート。来年リリースの新曲“PAINT IT BLUE”を経て“適当な闇”で徐々にスピードアップさせながら、切なげなポップにハートウォーミングなソウルを絡ませ、フロアを高らかなシンガロングの渦へと巻き込んでいく。チャットモンチーとの出会いについて、シモリョーは「7年くらい前、『若若男女サマーツアー(08年大阪)』のオープニングアクトで出演したとき、ぼくら、まったくコミュニケーションの取れないやつらだったのに、唯一話しかけてくれたのがチャットモンチーで。2人は優しかった」とほろ苦エピソードを披露。また彼は「(メンバーとして)チャットモンチーでライブするのは、今日が6回目。近くで見ていると、えっちゃんは地球人じゃないみたい。あっこちゃんは男のソウルがありつつ、とても女性的なブルースもあって、むちゃくちゃ楽しいんです」と手放しのラブコールを贈る。ライブの最後は、音楽愛を性急な言葉で刻むパワフルな“song of sick”だったが、熱い感情に突き動かされたシモリョーのダンスに反応し、フロアもいつしか腕をふり、手を叩き、声を張り上げる。《きっかけはきみさ 狂おしいほど愛してる》と歌われる「きみ」とは、この歌の中では「音楽」を指すと思われるが、シモリョーのMCを聞いたあとでは「きみ」=チャットモンチーという意味もダブって聴こえてくるのだった。

チャットモンチー「9周年記念ライブ“9愛”」@Zepp DiverCity - pic by 古溪一道pic by 古溪一道
<group_inou>
登場してすぐに“THERAPY”や“MYSTERY (INA BAUER VERSION)”など、ファットなエレクトロビートでフロアをビンビン震わせたgroup_inou。だがMCのcpは、不安からか「(チャットモンチーの)新しいシングルの、おれら、3曲目に入ってるリミックスの人たち」と、たまらず自己紹介して可笑しかった。チャットモンチーの『こころとあたま / いたちごっこ』収録の“変身 (GLIDER MIX)”を手がけた彼らのことは、客席もわかっているわけだが、所在なさげな様子がいかにも彼ららしい。徹底的に非マッチョで、ひねくれた文系のリリックを類まれなメロディに載せるエレクトロ・ヒップホップ・ユニット。DJのimaiは「チャットモンチーの映画(“チャットモンチー TOUR 2012~2013”のツアードキュメンタリー『ふたりじゃない』)を見てると、ここ(Zepp DiverCity TOKYO)の楽屋がそのまま出てきて、大雪の日に2人が『やる?』みたいな感じで顔を出していた廊下が、本当にあるのよ、あそこに」と感激しきり。そして“変身 (GLIDER MIX)”を演奏する段になると「今日は新進気鋭のフィーメルラッパー、2人を呼んできてるんで」と、芝居っぽく呼び込み、揃いの緑のキャップに白いダボTのえっちゃんとあっこが登場。リミックスバージョンのリアルな共演に、フロアも大喜びとなる。最後は“KNUCKLE”と初期の名曲“MAYBE”でトドメ。コンパクトなパフォーマンスながら、group_inouのエッジの立ちまくった、ねじれた世界観を堪能した。

チャットモンチー「9周年記念ライブ“9愛”」@Zepp DiverCity - pic by 古溪一道pic by 古溪一道
<チャットモンチー>
対バンたちが、次々にチャットへの愛を告白したあと、いよいよ新チャットモンチーの登場。客席から見てステージ中央右にえっちゃん、左にあっこ、中央後方にシモリョー(key・B)、えっちゃんの右に、横向きにドラムをセットしたツネ(恒岡章/Dr)という布陣。1曲目、最新シングル“こころとあたま”が始まると、すぐにこのバンドの音圧に圧倒された。あっことツネのリズム隊の疾走感、シモリョーの軽快なキーボードは、今までのチャットモンチーになかった新たな色彩で、さらにえっちゃんの鋭角的に突き抜けるボーカルは、いっそうの存在感を身につけたよう。間髪入れず、2曲目の“ハテナ”になだれ込み、客席から大きな手拍子が巻き起こったあと、ツネの4つ打ちビートのイントロから“シャングリラ”の投下で、フロアは興奮をもはや抑えられず大合唱となる。
チャットモンチー「9周年記念ライブ“9愛”」@Zepp DiverCity - pic by 古溪一道pic by 古溪一道
チャットモンチー「9周年記念ライブ“9愛”」@Zepp DiverCity - pic by 古溪一道pic by 古溪一道
歓声止まぬなか「今日は、ここまでくる道のりが長かったけど、めっちゃいいイベントじゃない? チャットモンチー、4人でやってます」と語るあっこと「みなさん、お疲れじゃないですか?」と話しかけるえっちゃん。ほんわか、ゆったりの2人のやり取りにほっと一息、和まされる。後半はミドルテンポの“Yes or No or Love”や最新シングルのもう1曲“いたちごっこ”のポップなテイストと、定番曲の“親知らず”“恋愛スピリッツ”を交互に展開。バラエティ豊かな選曲は、むしろ新編成4人のポテンシャルの高さを感じさせるに十分だ。“恋愛スピリッツ”のディープなギターサウンドで、ひとまず本編終了。

チャットモンチー「9周年記念ライブ“9愛”」@Zepp DiverCity - pic by 古溪一道pic by 古溪一道
アンコールは、チャットモンチー側から、この日の出演者への感謝のお返しという意味もあったかも。Hi-STANDARDのカバー“NEW LIFE”とgroup_inouのカバー“JUDGE”を演奏。“NEW LIFE”は、えっちゃんが初めてギターでコピーした曲とのこと。それを本家のツネと演奏するというのも不思議な縁だ。さらに最終曲“満月に吠えろ”では、対バンしたメンバー全員と、チャトモンチーグッズのキャラクター・ちゃんくまや、徳島のゆるキャラ・すだちくんまでステージに登場。2人体制期のこの曲も明るいオーラを放ち、9周年を祝うライブは、会場全体がポジティブなバイブスに包まれた大団円を迎えた。

01.こころとあたま
02.ハテナ
03.シャングリラ
04.Yes or No or Love
05.親知らず
06.いたちごっこ
07.恋愛スピリッツ

(encore)
08.NEW LIFE(Hi-STANDARD カバー)
09.JUDGE(group_inou カバー)
10.満月に吠えろ

「このイベントが終わったら、来年、何周年やと思います?」(あっこ)「お正月、年明けの1日にHPを見てください。重大発表があります」(えっちゃん)「でかいお知らせがバババンと」(あっこ)「来年の10周年でまた会いましょう」(えっちゃん)とのことである。(岸田智)
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