赤い公園@EX THEATER ROPPONGI

赤い公園@EX THEATER ROPPONGI - all pics by 福本和洋all pics by 福本和洋
「まさかまさかのソールドアウトということで。今年頭にここでやるって決まった時は『絶対埋まらない!』って思ってたんですけど、みなさんのご協力、お力添えがあって、こうやって埋まることができました!」と意気揚々と呼びかける佐藤千明(Vo)に、満場のフロアから熱い拍手喝采が湧き起こる。9月に発売された2ndフルアルバム『猛烈リトミック』のリリース・ツアーとして、10月24日から福岡/名古屋/大阪を巡ってきた『赤い公園ワンマンツアー 2014 ~お風呂にする?ご飯にする?それとも、リトミックにする?~』のツアー・ファイナル=11月23日:東京・EX THEATER ROPPONGIワンマン公演。亀田誠治/蔦谷好位置/蓮沼執太というプロデューサー陣とのコラボが実現した『猛烈リトミック』でその才気と意欲をさらに大きく開花させた赤い公園の、躍動感とスケール感と「整合性なきポップ」が、独特のホール的な広がりを備えたライヴハウスを舞台に炸裂した、至上の一夜だった。

赤い公園@EX THEATER ROPPONGI
赤い公園@EX THEATER ROPPONGI
冒頭からアルバムのラスト・ナンバー“木”のミステリアスかつ清冽な音像で会場の熱気を高揚の異次元へと導いたところで、衝動爆裂100秒ロックンロール絵巻“絶対的な関係”へ!――といった具合に、『猛烈リトミック』の計15曲を全曲セットリストに盛り込みつつ、“のぞき穴”“カウンター”“塊”などキラー・ナンバーをアンコール含めトータル21曲の中に凝縮。“絶対的な関係”“のぞき穴”連射でアグレッシヴに炸裂する制御不能なヴァイタリティ、苦悩と情念が目映く咲き乱れるギタポ曲“108”やシャッフル・ビート弾みまくりの“誰かが言ってた”といったポップ・ナンバーが描き出す色彩感……ジャンルもテイストも無用の多種多様な楽曲群が渾然一体となって、それこそ色とりどりの爆薬で描き出す晴れやかな点描画のようにカラフルでスリリングな、赤い公園という唯一無二の音楽空間を展開していく。

赤い公園@EX THEATER ROPPONGI
赤い公園@EX THEATER ROPPONGI
佐藤千明のドレスをはじめメンバー全員が身にまとった純白のコスチュームと、時折紅蓮の業火の如く燃え盛る凄絶なアンサンブルが相俟って、前衛的ロック・バンド的な表情を見せることはあるものの、津野米咲(G)の詞曲も、赤い公園の4人が鳴らす音も、常に挑戦的なポジティヴィティに満ちている。おとぎ話とホラーが一丸となって轟々と吹き荒れるような“塊”の戦慄必至の歌と言葉とサウンドも、出口なきネガティヴな煩悶の発露としてではなく、そのイメージの先へ突き抜けようとする強烈なヴァイブに満ちたものだ。「ポップな曲をやるためのポップな音」「エッジィな曲をやるためのエッジィな音」といった枠組みを取っ払い、楽曲が求める音、4人の音楽的探究心が求めるアンサンブルを追求した結果、聴く者のねじれた心情を解きほぐして、爽快なまでのロックとポップのダイナミズムの彼方へとぶん投げる音楽が生まれるに至った……そんな『猛烈リトミック』での極限進化ぶりが、“塊”を挟んで鳴らされた“私”“ドライフラワー”のサウンドスケープからもリアルに伝わってきた。

序盤のMCで、「赤い公園は、アルバムを引っ提げてのツアーは2回目なんですよね。去年『公園デビュー』のツアーをやったんですけど……その時からひとつだけ変わったことがひとつだけあるんですよね。何だと思いますか?」とフロアに問いかける佐藤。観客「髪型!」 佐藤「それ定期的に変わってるから(笑)」 観客「顔!」 佐藤「確かに、ステージ前とステージ後では違うけど……」というやりとりの解答は、「うちのベーシスト、藤本ひかりさんに、このたびマイクが設置されました!」。これまで4人の中で唯一マイクレスだった藤本ひかり(B)、「自分の声がこんな広いところに響き渡ってるのが、変な感じがします。しろたんもね?」とタテゴトアザラシの癒し系キャラ「しろたん」の小さなぬいぐるみを手に、ほのぼのした空気感を醸し出してみせる。そのダイナミックなベース・プレイとは似ても似つかない、メンバーすら当惑させる天然キャラも、ライヴの熱量への絶妙のスパイスとして作用している。

赤い公園@EX THEATER ROPPONGI
ライヴ中盤では、アルバム収録のスタジオ・テイクではゲスト・KREVAのラップをフィーチャーしていた“TOKYO HARBOR”を披露。「間奏のところでちょっと待ってみたんですけどね、KREVAさん来ませんでした!(笑)」と佐藤がフロアを沸かせていたが、赤い公園流シティ・ポップスとでも言うべきAOR的サウンドからも、赤い公園の豊潤なクリエイティヴィティが滲んでくる。“いちご”から流れ込んだ後半では“ひつじ屋さん”で佐藤千明の絶唱が空気をびりびりと震わせ、歌川菜穂(Dr)&藤本のビートが“サイダー”の疾走感をどこまでも痛快に煽っていく。メジャー・デビュー・ミニアルバム下盤(白盤)『ランドリーで漂白を』からの“ランドリー”、子供目線の行き場のない感情をマシン・ビートと美しく歪んだアルペジオに重ね合わせた“お留守番”――と1曲1曲織り重ねた果てに広がる、狂おしいほどのロマンとセンチメントが噴き上がる“風が知ってる”の雄大な歌と音風景。そして、満場のクラップとともに晴れやかに響き渡った“NOW ON AIR”の祝祭感。バンドはここまで自由になれる!ということを鮮烈に体現する、胸の空くような開放感が、そこには確かに広がっていた。

赤い公園@EX THEATER ROPPONGI
本編の最後、「『猛烈リトミック』が、『日本レコード大賞』の優秀アルバム賞に選ばれました!」とオーディエンスに語りかける佐藤。ベースを抱えたまま、ふなっしー風のジャンプで喜びを表現する藤本。熱い歓声渦巻くフロアが、「みんなよかったね、日本と好みがようやく合ったね(笑)」という津野の言葉でさらに沸き返ったところで、ラスト・ナンバー“ふやける”へ。あらゆる感情も思考も概念も焼き払うような津野の爆音ギター/藤本&歌川のパワフルなビート/佐藤の凄絶な歌声が、EX THEATERの天井を夜空まで貫かんばかりの途方もないエネルギーをもって轟いて……終了。アンコールでは“今更”で会場一面のハンドウェーブを巻き起こし、正真正銘最後の“楽しい”では佐藤お馴染み(?)の倖田來未の物真似をフィーチャーした“キューティーハニー”へ突入するウルトラCまで盛り込んで熱いジャンプを巻き起こしてみせた。来年1月4日に(コピーバンド時代も含め)結成5周年を迎えることを記念して、バンドの本拠地・立川Babelで自主企画イベント『こめさくpresents〜もぎもぎカーニバル〜復刻版』を開催することを発表していた赤い公園。日々変化と進歩の真っ只中にある「今」を、4人が全身全霊傾けて謳歌しまくっていることが窺える、最高のアクトだった。そして、年末の『COUNTDOWN JAPAN 14/15』、赤い公園は2日目・12月29日のCOSMO STAGEに出演!(高橋智樹)

■セットリスト

01.木
02.絶対的な関係
03.のぞき穴
04.カウンター
05.108
06.誰かが言ってた
07.牢屋
08.私
09.塊
10.ドライフラワー
11.TOKYO HARBOR
12.いちご
13.ひつじ屋さん
14.サイダー
15.ランドリー
16.お留守番
17.風が知ってる
18.NOW ON AIR
19.ふやける

(encore)
20.今更
21.楽しい
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