THE ORAL CIGARETTES@渋谷TSUTAYA O-EAST

THE ORAL CIGARETTES@渋谷TSUTAYA O-EAST - all pics by Kohei Suzukiall pics by Kohei Suzuki
メジャー1stアルバム『The BKW Show!!』をリリースしたTHE ORAL CIGARETTESの東名阪ツアー「THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンツアー 2014 AUTUMN~食欲の秋にアルバムリリース、BKW勢食い尽くしてやる!の巻~」の東京・TSUTAYA O-EAST公演。曲中や演奏後に何度も「ありがとう!」と叫び、MCのたびに深々とお辞儀をする山中拓也(Vo・G)、1人1人の顔を確かめるかのようにフロアを見ながら演奏する鈴木重伸(G)/あきらかにあきら(B・Cho)/中西雅哉(Dr)の姿。まだ発展途上ではあるが、演奏面でも演出面でも見られた新たな挑戦(大阪公演が残っているため、曲目&演出の表記は最小限に留めます)。今目の前にいる人たちと感情を伝えあいたい、そのうえで次のステージへ進みたいんだ、という想いが伝わってきたライヴだった。

THE ORAL CIGARETTES@渋谷TSUTAYA O-EAST
ソールドアウトで超満員のフロアに対して山中が「さぁオーラルワンマン始めます、よろしくどうぞ!」と挨拶してスタート。最初の一音から4ヶ月前(前回ワンマンツアー時)とは違っていた。4人が放った音が凄まじい速さと圧で以って頬をかすめていく感覚。初っ端から大盛り上がりのフロア。熱量が会場のキャパシティをとっくに超えていることは明らかだった。音源の時点でスケールの大きな『The BKW Show!!』の楽曲が鳴らされるべきテンションで鳴らされた幸福と、それを受け止めるオーディエンスのエネルギーがガッチリと噛み合ったことが読み取れるが、それを可能にさせるのは紛れもなく4人の力である。静と動の対比をしっかりつけ、助走をして然るべきタイミングで飛翔するかのような演奏。強弱の振り幅が大きな表現によって楽曲のドラマチックさは増している。この4ヶ月での出来事のうち自分への影響が大きかった事柄にフェスの出演を挙げていた山中。広大な環境のなかで演奏したこと、もっと大きなステージで素晴らしい演奏をする他バンドの姿を目の当たりにしたことなどが刺激になったのだろう。今年の夏がバンドにとって重要な季節になったのだということがヒシヒシと伝わってきた。だから“モンスターエフェクト”のようなアルバム収録曲が早くもキラーチューンとしての役割を果たし、“逆恨み小僧”のような旧譜曲はたとえ「自分のことが大嫌いで、そんな自分に向けて書いた」という内省的な歌詞だとしても、こんな音像のなかで鳴らされれば、今この場所で昇華していくのだ。

THE ORAL CIGARETTES@渋谷TSUTAYA O-EAST
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THE ORAL CIGARETTESを確立したくて作ったアルバムだという『The BKW Show!!』。「『楽しい』だけじゃなくて伝えたいことがたくさんある」という山中の言葉通り、柔らかい曲調の“僕は夢を見る”では丁寧に音の糸を紡いでいき、“透明な雨宿り”では少なめの音数のなかにたっぷり行間を含ませる。そしてMCでは様々なエピソードを披露。1年前にストレイテナーとtricotのツーマンのオープニングアクトとして初めてO-EASTに出演した当時「テナー潰していきます、よろしくどうぞ!」といつもの調子で言ったら会場がシーンとしたこと、その楽屋での「来年は俺らの客だけでO-EASTを埋めよう」という誓いを今有言実行できているのだということ。また、キュウソネコカミ・ヤマサキセイヤが名古屋のライヴ会場に置き手紙を残してくれていたこと(前日にキュウソが同会場でライヴをしていたらしい)、KANA-BOON・谷口鮪が「“STARGET”めっちゃエエやん!」とメールをくれたこと、などなど。「嬉しすぎてたまらんくて! ほんとビックリしちゃう!」「腹たつことにヤツら向かうところ敵なしやん? スッゲー悔しいしムカつくけどいいヤツで!」と喜怒哀楽そのままに山中は語っていく。バリエーション豊かな楽曲群の演奏も、飾らないトークも、「オーラルがどんなバンドなのかを伝えたい」「そのうえでオーラルを愛してほしい」という意思からくる表現。そういう意味で「今日ここに来てる人は間違いなく俺らにとって大事な人です。俺らが作る景色を見ててくれたらいいな」という言葉に続いた“See the lights”は、たくさんの腕が上がるフロアの景色と《息を止め その瞬間に「このまま時が戻ればいい。」って/この思いはあなたの愛の跡だろう?》という歌詞が合わさってかつてなく輝きに満ちていた。

オーディエンスとの堅い信頼関係を望むバンドだからこそ見ることができる景色がある。鈴木&あきらは代わる代わるお立ち台に上がりながらフロアを覗き込んでは笑顔を見せ、山中はハイテンションで煽りまくる。グイグイと温度を上昇させるオーディエンスを見て思わず「お前らスゲーな!」と嬉しそうだ。そうして互いに高めあっていく状態が健全すぎて、フロアの光景を見ていると何だか清々しさすら感じられるのがオーラルのライヴだ。「みんなはヒーローを信じますか?」という言葉から始まったオーラル的選手宣誓“STARGET”などを含んだアッパーチューン・ゾーンでは、山中がスタンドマイクをフロアへ向ければ大合唱が発生し、熱気がムワッと上昇してくる。オーディエンスの大きなリアクションを受け止めながらカラッと笑う4人の表情が、この日の充実度を表していた。

THE ORAL CIGARETTES@渋谷TSUTAYA O-EAST
終盤、「1年越しの夢が叶いました。成し遂げたいことはまだたくさんあるから一緒に上へ上がっていけたらと思います」(鈴木)「ソールドしたって聞いて嬉しくてすぐ次のステップを考えてたけど早かったなあって反省してます。まずはここに来てくれてるみんなに感謝してからだなぁと」(中西)などと語っていた4人。もっともっと上へ行きたいという野心にも、それに伴う悩みや葛藤にも、自分たちに出会ってくれた人々に対する感謝の気持ちにも、とことん素直なバンドである。ゆえに人一倍壁にぶつかることが多いかもしれない。だからこそ「俺らはオーラルにはこういう曲もあるんやって知ってほしくて、オーラルにしか作れない空気を体感してほしくてワンマンやってます。体をいっぱい動かしたい人には物足りないかもしれないけど俺らはこういうバンドですから、俺らなりに伝えていきます」という山中の発言はとても頼もしかった。ともに関西シーンを盛り上げてきたキュウソやKANA-BOONへ「絶対抜いてみせますから」とも宣言していたけど(もちろん同輩への愛とリスペクトがあってこそ)、「俺らは俺らなりのやり方で」という前提があればきっと大丈夫だ。その逆転劇の過程をこれからも見続けていきたい。(蜂須賀ちなみ)
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