KEYTALK@EX THEATER ROPPONGI

開演時刻になると、ステージを隠す白い幕の上に汽車とクラゲをモチーフにしたアニメーション映像が。それを背景に、大阪、福岡、広島、名古屋、と今回のツアーで廻った会場の名前と日時が順番に映し出され、ラストの「2014.11.15 東京 EX THEATER Roppongi」の文字に拍手が起こる。その昂揚感を後押しするかのように、首藤義勝(Vo・B)/寺中友将(Vo・G)/小野武正(G・Cho)/八木優樹(Dr・Cho)のシルエットが現れると、フロアから大歓声が沸き上がった。KEYTALKの「SUPER EXPRESS TOUR 2014」。その最終地点=東京 EX THEATER Roppongi。バンド史上最大規模のワンマンライヴということもあって首藤は「六本木と聞くだけで緊張で震えていた」と言っていたけど、緩急豊かなセットリストのなかでバンドとしての武器を堂々と振るうかのようなその姿には頼もしさすら感じられた。

「六本木ー!」という寺中の叫びを着火剤にして、“トラベリング”でライヴがスタート。透明度の高い首藤の歌声を筆頭にバンドのサウンドが会場を真っ直ぐに突き抜けるなか、八木は大きく口を開けて笑いながらリズムを刻み、短パン姿の小野は目を輝かせながら、右へ左へとステージ上を走り回る。心の底から音楽を楽しんでいるのだと一発で分かるような、とてもいい表情だ。トリッキーかつキャッチーな首藤&寺中のツインヴォーカルで進む“fiction escape”、イントロから「オイ!」コールが勃発した“S.H.S.S.”と会場をガッツリ盛り上げていく。「『六本木以外の都市へは新幹線移動だったから』という理由で今回のツアータイトルを決めた」という話などを含んだ軽めのMCを経て、「一緒にパラレルワールドに行きたくありませんか!? 行こうぜ、パラレル!」(小野)と3分間のキラーチューン“パラレル”が炸裂すれば、会場一体となってのハンドクラップが“サイクル”へと導き、“O型”ではまるで音同士で殴り合いを繰り広げるかのようにエネルギーを爆発させていく4人。そんなふうにしてライヴはもちろんアツいのだが、メンバー紹介中に「今日は特に張り切っています。なぜなら、おばあちゃんが来ているからです」(首藤)、「僕も張り切っています。なぜなら、家族全員が観に来ているからです」(寺中)とヴォーカル陣が言えば、メンバー親戚一同に向けてフロアから大きな拍手が起こる、なんてホッコリするような場面もあった。

スリリングな展開の前6曲に対して、変拍子のなかに一抹の切なさを織り込んだ初期の楽曲“消えていくよ”、ハイテンションなビートと歌謡曲的色気が交錯する“MURASAKI”など、「楽しさ」とはまた違うKEYTALKの魅力をにじませていた中盤パート。首藤&寺中のツインヴォーカルが悠々と伸びていった“コースター”でひとつめのハイライトを迎えたあと、「僕たちだっていつもワッショイワッショイ言っているわけではなくて。日本に生まれたからには四季を感じられるような曲を、ここからのゾーンで見せていきたいと思いますので……」と首藤。夕焼けのような温かいオレンジ色の照明がとてもよく似合っていた“フォーマルハウト”、情感たっぷりの寺中の弾き語りから始まった“Winter March”と、秋から冬へと変わっていくこの時期にピッタリな2曲を届けたあとは、“エンドロール”で夏へと思いを馳せる。聴き手の快楽に直結するようなビートとスピード感も彼らの魅力のひとつだけど、日本人的な「切なさ」を掬うようなメロディライン&歌詞もまた珠玉のものである。アッパーチューンのときには第3のヴォーカルのように首藤&寺中の歌声とグイグイ張り合っている小野のギターが、存在感はそのままに、2人の歌と螺旋を描くように絡んでいく様子もまた良い。

12月17日に発売のライヴDVD『OVERTONE TOUR 2014 at AKASAKA BLITZ』の告知も挟みつつ、多数のモノマネレパートリーを持つ寺中がフリーザ(ドラゴンボール)のモノマネで笑いを起こしたり、男性/女性、平成生まれ/昭和生まれに分かれての「ぺーい!」のコール&レスポンスを小野が先導したりと、キャッチーなキャラクターを振りまいていく4人。八木は「みんなのおかげで楽しい時間を過ごせています! マジで! ありがとう!」と興奮を言葉に表し、「良き日の記念に変な呪文を唱えてみませんか?」 と“MONSTER DANCE”中に登場する呪文「アルバラーバ」でのコール&レスポンスをレクチャー。そして全員一体となっての「アルバラーバ」の大合唱と八木の勢いバツグンのドラミングを経て、華やかなテープキャノンが“MONSTER DANCE”の始まりを告げる! ただでさえみんな踊りまくりのフロアを見渡しながら、首藤は両手を高く上げながらさらにオーディエンスを煽っていく。隙あらばステージ前方に走り込み、自分の唄うタイミングになったら猛ダッシュでマイクのところへ戻る……を繰り返しているのは寺中。八木は時々立ち上がりそうになるくらいにピョコピョコ体を動かしながらビートを刻んでいる。沸騰状態のオーディエンスのテンションに気圧されることなく、それどころか一緒にハイテンションになりつつもしっかりと熱を牽引していく姿が頼もしい。“MABOROSHI SUMMER”が終わったころには、フロアから「あっつい!」「最高!」なんて声が聞こえてきた。小野が装着したヘッドセットカメラによる臨場感たっぷりの映像がスクリーンに映った“夕映えの街、今”ではギターを置いてステージから身を乗り出して唄う寺中のアツいパフォーマンスもあり、ヴォルテージマックスのまま“太陽系リフレイン”で本編フィニッシュ!

アンコール、グッズのTシャツ&パーカー姿で登場した4人はまず“a picture book”を演奏。本番前に「ついに俺らも新幹線移動かあ……」と漏らしたら「あ、今回だけなんで」と告げられて落胆したこと、KEYTALKは4人で1つの楽屋なのに事務所社長のKOGA氏だけ専用の楽屋が用意されていたことなどを小野が話したり、八木が「やぎスター」と称してハムスターのマネをしたり……というアットホームなMCを、寺中が孫悟空のマネ(こちらはあまり似ていなかった・笑)をしながら「最後の曲行くぞー!いけんのかー!?」と締めると、“アワーワールド”で大団円。マイクを通さずに4人が一緒に叫んだ「今日は本当にありがとうございましたー!」という言葉に大きな拍手が贈られるラストシーンを見ながら、このバンドが愛される理由を改めて実感したのだった。

今年は特に年中休みなくライヴをしていた彼らだが、ワンマンライヴは実に約4ヵ月弱ぶりだった。その4ヵ月間でのイベントやフェスへの出演、他バンドとの対バンなどでさらに磨き上げられた「踊れるロック」の鉄板っぷり。そしてワンマンだからこそより深く見せられる、和情緒に満ちた楽曲の美しさ。盛り上げどころと聞かせどころのメリハリが効いたセットリストのなかで、バンドが持つ2つの大きな側面、さらには各々の個性豊かなキャラクターまで想う存分に輝かせる4人の姿に、エンターテイナーとしての、そしてロックバンドとしての成長を感じた。2014年はバンドにとって大きな飛躍の年となったが、だからこそここから先、次の進化と覚醒が楽しみだ。なお、KEYTALKは12月29日のCOUNTDOWN JAPAN 14/15に出演予定。彼らの今年の総決算をぜひ目撃しにきてほしい。(蜂須賀ちなみ)



■セットリスト

01.トラベリング
02.fiction escape
03.S.H.S.S.
04.パラレル
05.サイクル
06.O型
07.消えていくよ
08.MURASAKI
09.FREEDOM
10.コースター
11.フォーマルハウト
12.Winter March
13.エンドロール
14.MONSTER DANCE
15.sympathy
16.MABOROSHI SUMMER
17.夕映えの街、今
18.太陽系リフレイン

(encore)
19.a picture book
20.アワーワールド
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