THE BACK HORN×クリープハイプ@川崎CLUB CITTA’

THE BACK HORN主催の「KYO-MEI 対バンライブ in KAWASAKI」がCLUB CITTA'川崎にて行われた。ツーマンライヴの相手に選ばれたのはクリープハイプ。この報せを聞いたときは正直想像のつかない組み合わせだと思ったが、蓋を開けてみればとても合点がいった。捻くれている性格さえも包み隠さずに真っ直ぐ鳴らしていくバンド・クリープハイプと、命を燃やすがごとく全身全霊で音楽を鳴らしていくバンド・THE BACK HORN。バンドとしてのベクトルは完全に違えど、各々のロックバンドとしての美しさが詰まった2時間強のアクトだった。

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THE BACK HORN×クリープハイプ@川崎CLUB CITTA’
〈クリープハイプ〉
19時ジャスト開場BGMが止み、SEもないまま、ボンヤリと照らされたステージ上に小川幸慈(G)、小泉拓(Dr)、長谷川カオナシ(B)、尾崎世界観(Vo・G)が現れる。各々の立ち位置につくと、尾崎が〈もうすぐこの映画も終わる〉と弾き語りを始める。1曲目は“百八円の恋”。たっぷりとタメを作りながら、しかし時間を贅沢に使うというよりかは「声にすらならない声」さえも表現するかのようなその歌のあと、尾崎が「よろしくお願いします」と呟き、小泉が大きく振りかぶって2発、そして堰を切ったように溢れ出すイントロ――そんなオープニングにグッと引き込まれた。特に曲紹介もないまま始まった新曲“社会の窓と同じ構成”はその名の通り、たとえばギターソロのタイミングも、楽曲が盛り上がったりトーンダウンするタイミングも“社会の窓”と同じ、である。2曲が連続に演奏されることによってその事実は分かりやすく浮き彫りになり、ドサッと放り込んだ皮肉のなかに一つまみのユーモアを加えたような、あの絶妙なセンスがギラリと光る。“HE IS MINE”ではお決まりのフレーズの前に「一番盛り上がる曲を4曲目に持ってきてしまった……。頼むよぉ〜」なんてナヨッとした口調でオーディエンスに言ってみせる尾崎だったが、かつての必殺曲が序盤で繰り出されること、そしてこの日演奏した楽曲の半分が12月3日にリリースの『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』からのもの(シングル既発曲も含む)というセットリストからも、先日のワンマンライヴで自身も言っていた「バンドが変わっていく」という姿勢が感じられる。高校生の頃から聴いていたというTHE BACK HORNと同じステージに立つ喜びと感謝を伝えつつも、「後輩だからこっちから挨拶に行かなきゃいけないのにあちらから来てくれた」「お通夜みたいなうちの楽屋を盛り上げようとしてくれた」と舞台裏でのエピソードを語ると、“オレンジ”でライヴを再開。“大丈夫”は長谷川&小泉のリズム隊による跳ねるリズムが印象的で、その軽やかさがあったからこそ“グレーマンのせいにする”はいつになくしっとりとした響きを伴っていた。「インタビューとかを受けていると、レコーディングしたばかりの曲のことを忘れていることもあって。よくないなーと思うけど、こうしてライヴで思い出していけたらと思います。聴いてくれる人もきっといつか忘れるだろうけど、少しでも思い出すキッカケがあれば、1つでも多く傷をつけることができればと思います」(尾崎)という言葉から始まった“傷つける”を聴いた直後だったからだろうか、たとえ“2LDK”の明るい曲調のなかであっても、サビの〈さよなら〉という言葉には胸がつまるような想いがした。そして“?憂、燦々”を経て、尾崎が、10代の頃にチッタで銀杏BOYSを観に来たときに終電がなくなってしまって「朝からバイトなのに……」と途方に暮れたことがあるというエピソードを話したあとに、“二十九、三十”で終了。個人的にワンマン以外のサイズで観たのは久々だったが、短時間の中にもクリープハイプらしい起承転結が凝縮されたステージだった。

THE BACK HORN×クリープハイプ@川崎CLUB CITTA’
THE BACK HORN×クリープハイプ@川崎CLUB CITTA’
〈THE BACK HORN〉
続いて、THE BACK HORNの登場。SEとハンドクラップに迎えられて登場。山田将司(Vo)が「こんばんは、THE BACK HORNです」と挨拶して、“閉ざされた世界”からスタートだ。1番が終わると「フゥー!!」と歓声、2番が終わるとまたもや歓声が上がり、まだ1曲目にも関わらずオーディエンスの高揚っぷりが凄まじい。さらに“赤い靴”のイントロが鳴るなり、先ほどの歓声を軽々と上回る音量であちこちから歓喜の声が上がる。ステージ上ではハンドマイクを手にした山田が前方に乗り出し、菅波栄純(G)は長髪を豪快に振り乱しながら楽器を掻き鳴らし、岡峰光舟(B)は山田のヴォーカルの対旋律とも呼べるような低音を這わせていく。松田晋二(Dr)が「クリープハイプとはほぼ初対面だけど、ヒリヒリした夜になりそうな予感がして呼ばせていただきました。今日だけしかないライヴを感じていただければと思います。最後までよろしくお願いします!」と軽く挨拶すると、“生命線”“冬のミルク”“美しい名前”といった、泥臭さのなかにもどこか哀愁がにじんだ楽曲を次々と演奏していく。そのパートのラストを飾った“美しい名前”がいつもに増して素晴らしかった。岡峰が拍頭で静かにリズムを刻むなか、ほぼアカペラに近い状況での山田の唄い出し。そこに菅波&松田も加わり、なだらかな放物線を描くBメロを経て、一気に音の層が分厚くなるサビ、そしてラストの転調――THE BACK HORNというバンドのドラマチックな部分を1曲に凝縮したかのような壮大なサウンドスケープ。岡峰が弾く最後の一音の余韻が完全に消えるまでフロアから拍手が起きなかったその状況、そして沸き起こった拍手の音量が、その名演っぷりを物語っていた。公開中の映画『光の音色-THE BACK HORN Film-』内での演奏シーンの撮影をチッタで行ったこと、クリープハイプの演奏後にそのカッコよさを楽屋でアツく語っていたこと、クリープハイプ・尾崎がリハーサルの際に「FUCK OFF」と描かれたTシャツを着ていたことが気になっていたということ(山田曰く、本番では着てこないところが絶妙でいいらしい)、などを語ったMCタイムを、松田が「まだまだ最高の夜にしましょうよ!」と締めたあとは“シンメトリー”へ。4人が息を揃えて鳴らす最初の一音は、MCタイムで生まれた和やかな空気を吹っ飛ばすかのような凄まじい音圧だ。ハンドクラップも起こって祝祭感高まるなか、“コバルトブルー”では「オイ!」コールも発生。「どうもありがとう!また会おうぜ!」という山田の言葉を皮切りに“戦う君よ”からラストスパートへ! 「チッター‼」と叫びながら山田がフロアへマイクを向けると、〈さぁ走り抜けよう〉の大合唱が会場を満たし、その様子を見ながらメンバーたちもまた歌詞を口ずさんでいる。そして“サイレン”で大団円を迎えたのだった。アンコールの“シンフォニア”でも山田は衝動そのままに叫びを繰り返しながら唄い進めていき、バンドは本編ラストからの熱狂を冷まさずにそのまま持ち込んだかのような演奏を繰り広げる。そこにオーディエンスの熱狂も加勢していき、会場全体が一気に熱を爆発させるその瞬間は、まるで一つの巨大な生き物を見ているかのようだった。

なお、12月11日には埼玉・HEAVEN'S ROCK 熊谷 VJ-1にて、赤い公園を迎えて「KYO-MEI 対バンライブ in KUMAGAYA」が開催予定。こちらも壮絶な対バンが期待できそうなので要チェック!(蜂須賀ちなみ)



■セットリスト

〈クリープハイプ〉
01.百八円の恋
02.社会の窓と同じ構成
03.社会の窓
04.HE IS MINE
05.オレンジ
06.エロ
07.大丈夫
08.グレーマンのせいにする
09.傷つける
10.2LDK
11.憂、燦々
12.二十九、三十

〈THE BACK HORN〉
01.閉ざされた世界
02.赤い靴
03.声
04.生命線
05.冬のミルク
06.美しい名前
07.シンメトリー
08.コバルトブルー
09.戦う君よ
10.サイレン

(encore)
11.シンフォニア
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