ACIDMAN@Zepp Tokyo

ACIDMAN@Zepp Tokyo
開演SE“最後の国(introduction)”の段階から満場のクラップと熱気にあふれていたZepp Tokyoが、いきなり“風、冴ゆる”“波、白く”とドラマチック&エモーショナルな楽曲の連射でカオティックなまでの熱狂の渦へ叩き込まれる! 「ACIDMAN New Single『世界が終わる夜』発売記念ワンマンライブ」という公演タイトルの通り、9月24日にリリースされたばかりの最新シングル『世界が終わる夜』のリリース・ライヴとして行われたこの日のステージ。大木伸夫(Vo・G)自身、「こういうことをやるのは、実は長いキャリアの中で初めてなんですね。いつもはアルバムが出てからワンマン・ツアーをやるんですけど。初めての試みにもかかわらず、こんなにたくさん来てくれて、ありがたいです。感謝してます!」と話していたが、それこそ銀河レベルのスケールのギター・ロックをトリオ編成で響かせながら、壮大な世界における人間という存在の儚さと対峙し、だからこそ「今をいかに生きるか」という命題を渾身の力で鳴らし続けるACIDMANというバンドの核心が凝縮されたような、珠玉のアクトだった。

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「落ち込んでる人、元気な人、嫌なことをいっぱい抱えてる人……いろんな人がここに集まってると思います。でも、ライヴっていうのは、みんながひとつになることだと思っています。みんながなるべく、悲しみとか、そういうものを全部乗り越えて、明日が見えるような、輝く星に手を伸ばすような、永遠にその光がずっと続くような――明日を信じられるようなライヴにしたいなと思います。最後までよろしく!」という大木のメッセージとともに、凛としたメロディとアグレッシヴなバンド・サウンドが爽快に吹き荒れた“EVERLIGHT”。初期からのキラー・ナンバー“アイソトープ”であたり一面に広がる、むせ返るほどの高揚感……武道館やさいたまスーパーアリーナなど幾度も大会場の舞台にも立っているアシッドマンだが、やはりオールスタンディングでは都内最大級のライヴハウス=Zepp Tokyoでの、フロアから拳やOiコールとともに熱く突き上がる「魂の密度」の高さは、他の会場ではなかなか味わえないものがある。

テレキャスターからリッケンバッカーに持ち替えて鳴らすのはもちろん名曲“赤橙”。さらに、「イメージから、気持ちが変わってくる。たった1秒でも、世界が変わる、気持ちが変わる……そんな素晴らしいものが音楽だと思っています。インストゥルメンタルは好きですか?」という言葉とともにインスト・ナンバー“Slow View”でミステリアスな音風景を描き出し、“spaced out”ではピンク・フロイド的なサイケデリック・ブルース感から狂騒の彼方へと昇り詰めてみせる。大木伸夫/佐藤雅俊(B)/浦山一悟(Dr)の3ピースのバンド・アンサンブルの中に、ロックのみならずジャズ/ボサノヴァ/ブルースなど多彩な音楽性のピースを感じさせながら、豊潤でダイナミックで、タフな包容力と訴求力を備えた音楽世界を構築してきたACIDMAN。その真摯なる進化の足跡そのもののような熱く澄んだ空気感が、Zeppの空間いっぱいに満ちあふれていく。

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そして――今回のライヴのメイン・テーマでもある楽曲“世界が終わる夜”。ストリングス・アレンジを再現すべく、舞台後方に登場した8人編成の四家卯大ストリングスの面々に驚きと感激が広がる中、「僕はよく、世界を終わらせるなあと思うんですよ、歌詞の中で」とオーディエンスに語りかける大木。「もちろん、世界が終わってほしいなんて、1mmも思ってないです。だけど、君も、僕らも、必ず死んでしまう。そして、世界も必ず終わるんです。そういうことが、ずっと昔から怖くて、悲しくて、不安で、寂しくて、ずっと眠れない時もあって。愛しい人と死に別れたり、震災以降いろんな悲しみも生まれて、何がいちばん希望が持てるのかな?とか考えるんですけど……まずひとつ、自分の価値観の中で、きっと世界は生まれ変わるんじゃないかなと思っていて。そうすれば、別れた人ともまたどこかで会えるんじゃないかなって」と語る言葉に、誰もが静かに聞き入っていく。「でもやっぱり、今生きている以上、必ずその終わりは来るわけで。その時に、隣にいる人だったり、家族だったり、仲間だったり、友達だったりが笑ってくれれば、それだけで救われるような気がして。大災害の時でも、手を握り合って、笑っていられたらなと思って、この曲を作りました。大切な人を、みなさんも思い浮かべて聴いてください」……そんな切実な祈りが、ストリングスの響きと相俟って、どこまでも力強く美しいサウンドスケープを描き出していた。そのまま続けて演奏した“ALMA”とともに、研ぎ澄まされた音像が熱気あふれるフロアを荘厳なまでの感動で包んでみせた、至上の名場面だった。

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そんな会場の空気感が、「ある程度想像はしてたんですけど、ここまで神聖な雰囲気になるとは思ってなくて、すごくしゃべりづらいです!(笑)。楽しんでますか?」というイチゴのMCで一転。“世界が終わる夜”のミュージック・ビデオ撮影でアイスランドに行ったエピソードを紹介しつつ、「本当にいい国だったね!」とサトマに話しかけるも「話しかけんじゃねえよ!」といじられる。浦山「……高校の同級生だろ、俺ら?」 佐藤「あと、演奏してる時に、こっち見ないでください!」 浦山「お前が見てるから俺が見てんのわかるんだろ? お前こそ俺のほう見るなよ! アイコンタクトでしょ、これが?」といった小学生のケンカかってくらいのやり合いに、フロアがどっと沸く。さらに、アイスランドの車での移動中、道の駅的なスポットで買わされたというニワトリの形をした帽子をかぶり、「アイスランドでいちばん多く発した言葉は『すげえ!』でも『最高だ!』でも『メシがうまい!』でもなく『コケー!』。アイスランドにはコケもいっぱいあったし……」と続けるもややウケだったところを、さらに2人に突っ込まれる。
大木 「もうちょっとウケるかと思ったよね?」
佐藤 「ちゃんと昨日の通しリハでも練習してたんだけどね」
大木 「2回連続で同じMC練習して、今日3回目。リハのほうが調子よかったね(笑)」
佐藤 「別にリハも調子よくないんですけど(笑)」
浦山 「お前、バカウケだったじゃねえかよ!」
佐藤 「全然ウケてないんですけど!」
 そんな会話のひとつひとつに笑いが巻き起こり、会場の温度を上げていく。かつてはアルバム1枚作るたびに解散の危機を迎えるくらいシリアスな緊迫感に満ちていた3人が、メジャー・デビューから12年経った今、その真摯な表現に向かうシビアな戦闘態勢すらも「日常」としてポジティヴに受け止めている――ということが、この日の3人の姿からも伝わってきて、なんだか嬉しくなった。“type-A”からライヴは一気にクライマックスへ! 今年7月リリースのシングル曲“Stay in my hand”から“新世界”へ、さらに鉄壁のアンセム“ある証明”へ流れ込み、怒濤のシンガロング越しに狂おしいほどの多幸感を巻き起こして――本編終了。

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「来月の19日には、新しいアルバムが出ます。なんとメジャー・デビューして10枚目です。あんまり自分のアルバムを誉め称えるのは嫌だけどね、すげえいいのができましたよ!」。アンコールの冒頭、意気揚々と大木が語る。「告知があるんですよね、大切なお知らせが。まあ、まずは一悟くんがやめるっていうことと……(笑)」とここでも軽くイチゴをいじった後、「アルバムを出すっていうことは、ツアーがありますね。初日は2月6日、Zepp Tokyoスタートです! 全国いろいろ行って、今回また海外、アジアも行きます。そして最後は、4月18日、日本武道館!」。ACIDMAN自身5回目となる日本武道館公演のアナウンスに、オーディエンスから怒号のような大歓声が湧き起こる。アンコール1曲目では、その11月19日リリースのニューアルバム『有と無』から“EDEN”を披露。清冽なるメランコリアの風景が、4つ打ちキック+裏ハット→16ビートのリズムとともに晴れやかな高揚の頂へと導かれていくような、ACIDMAN新次元の予感に満ちた楽曲だ。最後は“アルケミスト”から“Your Song”へ! トータル2時間強の爆演でもって、己の「これまで」と「これから」の両方を全力で照射してみせるような圧巻のアクト。来るべきアルバム『有と無』、そして台湾・香港公演や武道館も含め全20公演にわたって開催されるツアー「ACIDMAN LIVE TOUR “有と無”」に向けていやが上にも胸躍る、最高の一夜だった。(高橋智樹)


■セットリスト

01.風、冴ゆる
02.波、白く
03.スロウレイン
04.EVERLIGHT
05.アイソトープ
06.River
07.FREE STAR
08.赤橙
09.Slow View
10.spaced out
11.世界が終わる夜
12.ALMA
13.type-A
14.Stay in my hand
15.新世界
16.ある証明

(encore)
17.EDEN(新曲)
18.アルケミスト
19.Your Song
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