LOUD PARK 14(2日目) @ さいたまスーパーアリーナ

日本最大級のヘヴィ・メタル/ラウド系ロック・フェス=『LOUD PARK』、2006年のスタートから早9回目を数える今回の2日間のヘッドライン・アクトを務めたのは、『LOUD PARK』初出演となるUSプログレッシヴ・メタルの英雄・ドリーム・シアター! 単独ジャパン・ツアーから2年半ぶりの来日となる彼ら、昨年リリースされたセルフタイトル最新アルバム『ドリーム・シアター』からの“The Enemy Inside”“The Looking Glass”“Along For The Ride”や前作『ア・ドラマティック・ターン・オヴ・イヴェンツ』から“On the Backs of Angels”“Breaking All Illusions”といった最新・最強の楽曲群に加え、 “Overture 1928”~“Strange Déjà Vu”(『メトロポリス・パート2:シーンズ・フロム・ア・メモリー』1999年)や20年前の名盤『アウェイク』(1994年)から“The Mirror”“Lie”“Lifting Shadows Off a Dream”まで盛り込んで、さいたまスーパーアリーナを荘厳にして壮絶なるメタルの王宮へと塗り替えてみせた。普通のバンドなら「個人技の見せ場」となるはずのジョン・ペトルーシ(G)&ジョーダン・ルーデス(Key)&ジョン・マイアング(B)の超高速プレイすらアンサンブルの一部として取り込んだ、緻密で爆発力に満ちたサウンドスケープ。初代=マイク・ポートノイに代わるリズム・マスターとして今や風格すら湛えた「世界最速の男」ことマイク・マンジーニ(Dr)がインスト曲“Enigma Machine”で披露した、櫓状のブースの頭上にまでシンバルやキャノンタムが所狭しと組まれた要塞の如き4バス(!)セットから繰り出す圧巻のソロ・パート。そして、そんなハイ・クオリティな音像に強烈なドラマ性を与えていく、ジェイムズ・ラブリエ(Vo)のパワフルなヴォーカリゼーション……そんなアクトのラストを飾ったのは、1992年の出世作的アルバム『イメージズ・アンド・ワーズ』から“Pull Me Under”。メタルとプログレの狭間から生まれた異端の才能が、ついにはメタルを代表する豪傑へと昇り詰めた歴史そのもののような、珠玉のステージだった。

ドリーム・シアターの直前にはヨーロッパ勢2組:オランダが生んだシンフォニック・ゴシック・メタルの旗手=ウィズイン・テンプテーション、ジャーマン・スラッシュの帝王=クリエイターが立て続けに登場。実に7年ぶりの来日&『LOUD PARK』初回以来2度目の出演となるウィズイン・テンプテーション。2011年に新ドラマー=マイク・コーレンが加入、同年に創設メンバー=ロバート・ウェスターホルト(G)が制作に専念→ステファン・ヘレブラッド(G)加入、という変化があったため、ステージ上の6人のラインナップのうち2人が初来日となった今回のステージ。鋼鉄の轟音リズムと、ロマンの高純度結晶体のようなギター&シンセ・ストリングスのアレンジメント、そしてシャロン・デン・アデル(Vo)の麗しの熱唱が織り成す、壮麗かつヘヴィなメタル・シンフォニー……“Ice Queen”など初期曲はもちろんのこと、今年1月にリリースした最新アルバム『ハイドラ』収録曲“Paradise(What About Us?)”“And We Run”“Dangerous”“Covered By Roses”や2011年の前作『ジ・アンフォーギヴィング』からの“Faster”“In The Middle Of The Night”といった楽曲群で幾度となくシンガロングの輪を生み出し、日本における7年間のライヴ活動の空白をあっさり無効化してみせたのが印象的だった。一方、ミレ・ペトロッツァ(G・Vo)の絶唱とバスドラがびりびりと空気を震わせ、冒頭の“Violent Revolution”から“Civilization Collapse”の激烈スラッシュ・ビートへ流れ込んでピットに巨大なサークルを描き出してみせた初出演の古豪・クリエイター、タイトル曲“Phantom Antichrist”はじめ最新アルバム『ファントム・アンティクライスト』の楽曲(他公演ではやっていなかった“Victory Will Come”も披露)はもちろん、『エネミー・オブ・ゴッド』(2005年)からの“Enemy Of God”“Impossible Brutality”“Voices Of The Dead”、さらに1985年の1stアルバムから“Endless Pain”、翌年の2ndから“Pleasure To Kill”と初期曲も含め、デビュー29年に及ぶその足跡を約1時間に凝縮してみせた。

80年代USベイエリアが生んだスラッシュ・メタルの雄=デス・エンジェルは、“Left For Dead”など最新作『ザ・ドリーム・コールズ・フォー・ブラッド』の楽曲を軸として終始ピットに巨大な渦を描き続けていたし、「初めてここで演奏できて誇らしく思う」とマーク(Vo)が酒瓶片手に呼びかけたり、熱気あふれるフロアを“荒城の月”のフレーズでさらに熱く煽り倒していた。前回の来日から5年の間に長年リーダーを務めたマーク・リアリ(G)が急逝、なおも「RIOT V」として前進し続ける古豪ライオットは、“Fire Down Under”“Flight of the Warrior”などRIOT曲のみならず、日本公演の思い出について歌った最新アルバム『アンリーシュ・ザ・ファイア』収録曲“Land of the Rising Sun”までHR/HMの真髄を轟かせ、アリーナ一面に熱い拳を突き上がらせてみせた。そして、USシーンからもうひと組、開演前から熱い歓声を巻き起こしていたプログレッシヴ・メタル新世代の担い手=ペリフェリーは、独特の変拍子風シンコペーションとハイブリッド&超硬質ギター・サウンドでもって、新曲“Psychosphere”なども織り交ぜながらアグレッシヴな音空間を描き出していた。UKからはサンダーとグラマー・オブ・ザ・キルの2組が登場。頭の“Dirty Love”から♪ナナナ〜のシンガロングを呼び起こしたサンダーは、“Wonder Days”での華麗なコーラスワーク、あたり一面ジャンプ&クラップへと導いた“River Of Pain”など、ブリティッシュ・ハード・ロックの熱量そのもののようなサウンドで会場を魅了していった。一方、グラマー・オブ・ザ・キルは、“Second Chance”“The Only One”など最新アルバム『サヴェイジズ』収録曲に加え、パパ・ローチのジャコビーが参加した最新曲“Out Of Control”まで幅広く演奏、ポスト・ハードコアとメタルを両手に携えて驀進する彼らの現在地をリアルに刻み付けてみせた。

北欧勢では、スウェーデンが誇るデスラッシュの精鋭=ザ・ホーンテッドのマルコ(Vo)が序盤から額から流血するアクシデントもありながらも“No Compromise”から“Trend Killer”“Hate Song”までオーディエンスを爽快なまでのカオスへと叩き込んで「ファッキン・ビューティフル!」と万感の想いで叫び上げていたし、ストラトヴァリウスのマティアスの弟・トピアス・クピアイネン(Dr)を擁するフィンランドのメロディック・メタル新星=アリオンは、“I Am the Storm”でのイーヴォ(G)&アルットゥ(Key)のツイン・リード・ソロをはじめテクニカルなポテンシャルとヴィリアミ(Vo)のパンキッシュな衝動感越しに未知の可能性を見せつけていた。さらに、オーストリア発・血まみれのブラック・デス・メタル=ベルフェゴール! 雄大なスケールを誇る重轟音アンサンブルと超高速バスドラ連打が織り成す「ディアボリカル・デス・ミュージック(地獄死滅音楽)」の熾烈なサウンドの中で、厳粛な儀式か呪術の如きヘルムート(Vo・G)のデス・グロウルで歌われる“Lucifer Incestus”や“Rex Tremendae Majestatis”は、『LOUD PARK』史に残る衝撃的瞬間だった。そして、2日目唯一の日本からのアクトはthe GazettE。「メタル・フェスになぜヴィジュアル系が?とお思いの方はたくさんいらっしゃるでしょう。僕らも若干『なんでここに?』とは思いますが……」とルキ(Vo)自身もこの場でのアウェイ感を語っていたが、それでも自らのルーツであるメタルへのありったけの愛情と,アリーナ・バンドとして鍛え抜いたサウンドのスケール感でもって、“LEECH”“VORTEX”などダイナミックで妖艶な楽曲で会場をびりびりと震わせてみせた。

マノウォー(1日目)、シンフォニーX(2日目)のキャンセルは残念だったが、それでも両日とも世界各地の強豪バンドが勢揃いして濃密なメタル絵巻を繰り広げた『LOUD PARK 14』。2日間にわたって轟音を浴び続けた直後だが、いよいよ10回目の開催を迎える来年はどんなラインナップが実現するのか?と今から楽しみで仕方がない。(高橋智樹)
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