J-WAVE「BEHIND THE MELODY」〜FM亀の恩返し@恵比寿ザ・ガーデンホール

音楽プロデューサー/ベーシストの亀田誠治がナビゲーターを務めるJ-WAVEのミュージック・プログラム「BEHIND THE MELODY~FM KAMEDA」。その番組がラジオ局を飛び出し、初のイベント「J-WAVE 『BEHIND THE MELODY』~FM亀の恩返し」を開催した。ミュージシャンのルーツを辿る番組の内容をリアルタイムで観客に見せるトーク&ライブイベントには、この日、6組のゲストミュージシャンが登場した。

J-WAVE「BEHIND THE MELODY」〜FM亀の恩返し@恵比寿ザ・ガーデンホール
J-WAVE「BEHIND THE MELODY」〜FM亀の恩返し@恵比寿ザ・ガーデンホール
「亀田とのトーク→小倉博和(G)/亀田(B)/河村“カースケ”智康(Dr)/皆川真人(Key)で構成されるスペシャルバンドとの演奏」という形で進行していった本イベント。トップバッターは和田唱(TRICERATOPS)だ。以前に番組に出演した際にはThe Beatlesなどをルーツ・ミュージックとして挙げていたという和田だが、この日は小学5、6年のころからハマっていたというマイケル・ジャクソンの話題に。当時の和田が弟とともにマイケルのモノマネをする写真がスクリーンに映り会場に笑いが起こるなど、トークは終始和やかなムードだった。そして“Man In The Mirror”をカバー。バンドではほぼ日本語詞の歌を唄っている和田が全編英詞のこの曲を唄う姿は新鮮だったが、その発音がマイケルのそれにどことなく似ている気がする。そのあとには自身の楽曲“Fever”へ。この曲について「『ロックで踊らせたい』という気持ちで作った」と和田は言っていたが、カバーを聴いた直後ということもあり、なるほど、リフ主体&グルーヴでオーディエンスを踊らせようとする感じにマイケルに通じる部分があるかもしれないと思った。これ以降の出演者の演奏も「カバー→オリジナル曲」という形だったが、だからこそルーツからの影響が色濃く見えてきてとても興味深い。

J-WAVE「BEHIND THE MELODY」〜FM亀の恩返し@恵比寿ザ・ガーデンホール
J-WAVE「BEHIND THE MELODY」〜FM亀の恩返し@恵比寿ザ・ガーデンホール
続いて登場したのは片平里菜。ルーツの写真として19歳のときに出演したオーディション「閃光ライオット」でのライヴの様子がスクリーンに映し出されるが、それもわずか3年前の出来事なのだそう。アヴリル・ラヴィーンやシェリル・クロウなどの洋楽女性シンガーに影響を受けて高校3年生のときに作曲とギターを始めたという片平は、まずアラニス・モリセットの“You Learn”を演奏。アコースティックギターを鳴らしながら歌声を震わせる彼女の姿は観客を一気にグッと引き込んでしまった。力強い地声と柔らかなファルセットを軽やかに行き来しながら唄い終えたあと、“Oh JANE”へ。亀田プロデュースのこの曲はポップなメロディとパワフルな歌声に乗せて女性の生き様を唄ったもの。片平が描く歌詞のなかに登場する「何にも縛られない女性像」は先述の女性シンガーたちの影響によるものなのかもしれない。

J-WAVE「BEHIND THE MELODY」〜FM亀の恩返し@恵比寿ザ・ガーデンホール
J-WAVE「BEHIND THE MELODY」〜FM亀の恩返し@恵比寿ザ・ガーデンホール
3番手のRIP SLYMEは黒のスーツ姿でビシッとキメて登場。ルーツの写真としてスクリーンに映されたのはメジャーデビューをした当時の5人の初々しい集合写真。そんな彼らがルーツ・ミュージックとして挙げたのは布袋寅泰。コラボレーションシングルのリリース、FUMIYAから布袋への楽曲提供などの音楽的交流、さらには布袋の自宅に招かれるなどのプライベートな交流もあるという両者だが、BOØWYが活躍していた1980年代のバンドブーム期に思春期を過ごしたという5人にとって布袋は憧れの存在だったのだそう。ということで、“バンビーナ”をRIP SLYME流に再構築した“バンビーナ(BANBINO MIX)”を演奏。陽気なサンバのリズムを背にエアギター風のダンスをしながらノリノリなRYO-Z/ILMARI/PES/SUに、客席からもハンドクラップが発生する。一転、艶やかなダンスナンバー“SLY”を終えてステージを去っていった。

J-WAVE「BEHIND THE MELODY」〜FM亀の恩返し@恵比寿ザ・ガーデンホール
J-WAVE「BEHIND THE MELODY」〜FM亀の恩返し@恵比寿ザ・ガーデンホール
小休憩が明けて、最初に現れたのは藤井フミヤ。ルーツの写真として、キメポーズ&カメラ目線がバッチリな中学生のころの写真(当時から練習していたというサイン付き)がスクリーンに映れば客席から大きな笑いが起こる。中学1年生のときに初めてバンドを組み、高校2年生のときにチェッカーズを結成したという藤井に大きな衝撃を与えたのが、当時テレビで放送されていたキャロルの解散ライヴだという。彼らの楽曲のなかでもロマンチックなバラード“二人だけ”をカバー。そして昨年ソロデビュー20周年を迎えた藤井にとっての始まりの歌でありソロデビューシングル曲“TRUE LOVE”と、珠玉のバラードを連続で披露。豊かな放物線を描くように会場を満たしていくのびやかかつ甘い歌声。先ほどまでの3組の演奏ではハンドクラップなども起きていた会場内だが、藤井のステージの間は客席全体が息を飲んでステージへ視線を向けているようだった。

J-WAVE「BEHIND THE MELODY」〜FM亀の恩返し@恵比寿ザ・ガーデンホール
J-WAVE「BEHIND THE MELODY」〜FM亀の恩返し@恵比寿ザ・ガーデンホール
続いてステージに現れたのは、フラメンコギター奏者の沖仁。スクリーンに映るルーツ写真には、毛糸で奇抜な装飾をしたエレキギターを抱えた高校時代の沖の姿。RCサクセションが流れているような家庭で育った沖の音楽ルーツはロックだったのだそう。そこでRCサクセション“雨あがりの夜空に”をインスト・バージョン(!)でカバー。原曲通りのロックンロールではなく、南国のリゾートの風さえ感じられそうな軽やかなタッチのサウンドに様変わりだ。そしてその斬新なアレンジに首謀者の沖だけではなく、バックバンドのメンバーもとても楽しそうな笑みを浮かべている姿が印象に残った。対して、自身の楽曲“オンセ / ONCE”では情熱的なセッションを繰り広げていく。他出演者が全員シンガーということもあって登場したときには不安の言葉を漏らしていた沖だが、バツグンの存在感を残していった。

J-WAVE「BEHIND THE MELODY」〜FM亀の恩返し@恵比寿ザ・ガーデンホール
J-WAVE「BEHIND THE MELODY」〜FM亀の恩返し@恵比寿ザ・ガーデンホール
イベントのトリを務めるのは秦基博。ルーツ写真として登場したのは高校2年生のときの文化祭ライヴの様子。兄の影響で小学6年生のころギターを始めた秦は、兄の部屋にあった全曲集から大きな影響を受けていたのだそう。そんな秦がカバーに選んだのは、井上陽水の“氷の世界”。中学生にしてこの曲に惹かれるなんて相当渋いと思われるが、この曲を弾き語りしているとき、子どもながらに感じたことのない感覚に触れているような気がしたという。時にはハーモニカを鳴らしながら16ビートファンクを唄いきった姿に大きな拍手が湧き起こると、「見たか、俺の早熟!」と得意気な表情を見せた秦だった。そして自身の最新曲“ひまわりの約束”を披露。大切な人を想う人間の気持ちが丁寧に描写されたこの曲を聴いたあとの「人と人が影響を及ぼしあって絆が生まれるし、音楽もそのひとつだと思う」という亀田の話が胸に沁みたのは、このイベントが目に見えない絆を一つの形に表したようなものだったからであろう。音楽のバトンが時を越えて受け継がれ、受け継いだ者はそれを踏まえたうえで自分の表現を磨いていき、またそれが受け継がれていく――そんな音楽の尊さを改めて教えてもらえたような気がした。なお、このイベントの模様は後日J-WAVE内の番組にて放送される予定とのことなので、ぜひチェックしてみてほしい。(蜂須賀ちなみ)
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