androp@Zepp Tokyo

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「超楽しいです。どうもありがとう! ほんとに、音楽やっててよかったなと思います。音楽やってなかったら、こんな最高の瞬間を味わえなかったし、ここにいるひとりひとりとも出会えてなかったから」。晴れやかな表情で呼びかける内澤崇仁(Vo・G)に、Zepp Tokyo満場のオーディエンスが熱い拍手喝采で応えていく――8月30日のZepp Nagoya公演を皮切りに、andropが名古屋・札幌・福岡・東京・大阪を巡る5会場8公演のZeppツアー『one-man live tour "period"』。3月5日にリリースされた最新3rdフルアルバム『period』を引っ提げてのワンマン・ライヴとしては、androp初のアリーナ公演として3月23日に行われた「one-man live 2014 at 国立代々木競技場・第一体育館」(ライヴ映像作品として8月27日にDVD / Blu-rayで発売)に続いての場となる今回のワンマン・ツアー。アルバムのリリースから約半年、Zepp Tokyo 2DAYSの2日目となるこの日のアクトは、「ROCK IN JAPAN FES. 2014」など夏フェスやイベント出演などを通じて格段に肉体性と躍動感を増して響く『period』の楽曲群が、今のandropの開放的なモードと相俟って雄大なスケール感を描き出す、この上ない祝祭感に満ちた音楽空間だった。
 
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この後Zepp Nambaの2DAYS公演が控えているので、ここでは楽曲についての記述はごく一部に留めさせていただくが、アルバム『period』の楽曲群をセットリストの核としつつ、そこに歴代アンセムや初期曲など幅広く重ね合わせていたこの日のアクト。どこまでも緻密でハイパーで鋭利でダイナミックで、人間と世界の真実だけを真っ直ぐ貫いていくような純度に満ちた音楽――4人がこれまで“a”(『anew』)、“n”(『note』)、“d”(『door』)、“r”(『relight』)、“o”(『one and zero』)、“p”(『period』)という6つの作品を通じて編み上げてきたandropの表現が、トータル2時間強のステージの中でリアルかつヴィヴィッドに展開されていた。“One”の高揚感あふれるメロディに導かれてフロア狭しと湧き上がった高らかなコーラスに、4人が歌を委ねてみせた瞬間の歓喜の風景。内澤が奏でるピアノの力強い響きがZepp Tokyoのむせ返るような熱気を凛とした透明感で塗り替えてみせた“Melody Line”。新たな地平へと駆け出していくような“Lit”のアグレッシヴな加速感……我を忘れた熱狂による享楽性を追求する方法論とはきっぱり一線を画し、冷徹な覚醒感を丹念にハイ・クオリティなバンド・アンサンブルへと組み上げて、聴く者ひとりひとりを高揚の頂へと導いてきたandrop。その唯一無二の存在感が、『period』の楽曲群をはじめとするこの日の演奏と歌からもくっきりと浮かび上がってきた。

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「昨日もここでライヴやって、その後近くのスタジオに入ってまた練習して、4人でラーメン食って帰って寝て、またここ来てライヴして……最高の2日間を過ごしてます!」と上気した顔で語りかけていた佐藤拓也(G・Key)が「高校生ぐらいの時、『東京にレディオヘッドがやってくる!』っていうことで――俺、愛知県に住んでたんだけど、東京まで来て。音楽がただ好きで、一個一個のライヴに心を動かされて、動かされて、今このステージに立ってます。1日1日、何があるかわからないから、大切に過ごしてほしいなと思います。今日この瞬間も、心を開放して、最高に楽しんで帰ってください!」とアピールしていたり、「みなさん、明日仕事とか学校とかあるんですか? そんなの関係ないっしょ!」と前田恭介(B)がフロアをがっつり煽り倒したり……かつての「端正な音楽集団」的な佇まいとは打って変わって、この日の4人は終始晴れやかなバンド感に満ちていたし、今この瞬間を「全力で楽しみきろう」とする意欲にあふれていた。そして――この日のライヴを3月のアリーナ公演とも決定的に異なるものにしていたのが、8月13日にリリースされた最新シングル曲“Shout”だった。

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「音楽やってると、言葉って重いものなんだなって感じることが多くて。言葉って人を幸せにもできるし、ひと言で地獄に突き落とすようなこともできるのが、言葉の重さだなって。友達に慰めてもらう時は、いい言葉をかけてもらって、それで元気になることもあるし。相手を下手したら死に追いやることだってできるじゃない?」。“Shout”の直前、内澤が静かに語りかける。「最近はネットとかさ、誰かが発信した言葉に対して、不特定多数の顔の見えない人が叩いたりする世の中で。でも、そんな世の中を生きてる人に対して、背中を押せるような曲を作ったんだけども……要は、人にとやかく言われたりとか、人にどう思われたいとかっていうのは、生きていく中で二の次なんじゃないかなって。一番大事なのは、自分がどう生きるか、どうやりたいか、っていうことだと思ってます。自分自身の『今』を生きてもらいたいなって」……そんなメッセージとともに、ひときわ強く、揺るぎない「個の叫び」として響いた“Shout”。《光を求め叫んだ方へ/正しさ祈るより今を見てよ》という目映いばかりのサビのフレーズも、《本当に強い僕ならば/君を守る為に弱くなれるのに》という切実な言葉も、そのひとつひとつが身体と心に焼きつくほどの熱量と訴求力に満ちていた。

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その一方で、シングル『Shout』に収録されていた“Run”では伊藤彬彦(Dr)の熱風のような開放感に満ちたビートがフロアを揺らし、“Alternative Summer”では佐藤のギター・フレーズと前田のスラップ・ベースが8分の9拍子の獰猛なリズムをしなやかに踊らせ――といった具合に、随所で咲き乱れるバンドの圧巻のプレイアビリティが、1曲1曲に強烈なエネルギーを吹き込んでいたのも印象的だった。ツアーはあと9月27日・28日の大阪公演を残すのみ。デビュー5周年記念日となる12月16日には、かつてandropが初ワンマン・ライヴを行った会場=東京・代官山UNITでの一夜限りのプレミアム トーク&ライヴ「androp 5th Anniversary Special Live 20141216」を開催することを発表したandrop。“a”“n”“d”“r”“o”“p”の6作品で「やっとandropというバンド像が完成した」「ここからどこでも行ける」と内澤自身も語っていたandropの、『Shout』から始まった「その先」の世界をもっと観たい、感じたいと思わせる、充実のステージだった。(高橋智樹)
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