LUNA SEA@札幌ニトリ文化ホール

6月からキックオフしたLUNA SEAの結成25周年ツアー『THE LUNATIC -A Liberated Will-』。アニバーサリーなツアーにふさわしく来年の3月まで続く長いロードであるが、今回の北海道公演はその丁度折り返し地点である。前半戦のクライマックスとも言っていい2DAYS公演、ここではその初日のライヴをレポートしていきたい。

LUNA SEA@札幌ニトリ文化ホール
数日前まで続いた記録的な大雨から一転、この日の札幌は清々しいほどの晴れ模様。結成25周年であるのと同時に、ニューアルバム『A WILL』リリース後のツアーということで、会場に集まったファンの温度も尋常じゃない高まりを見せている。その証拠に、ホール内ではどこからともなくハンドクラップが沸き起こり、瞬く間に会場全体へと反響していくのだ。定刻から10分後、拳を突き上げたSUGIZOを先頭にしてメンバー5人が颯爽と登場。あらためてこの5人が同じステージに「いる」ことの凄さを、ひしひしと感じさせてくれる瞬間だ。そして真矢のドラムを着火点に5人の鼓動がひとつになる。5月の代々木第一体育館のライヴも見ている筆者だが、ホールクラスで体感するLUNA SEAのグルーヴも、これまた極上である。オープニングから一気に自分たちの渦の中へと我々を引き込んでいくのだ。「札幌のみんな元気ですか? 久々のLUNA SEA全国ツアーということで戻ってきました」――RYUICHIの軽快な挨拶に観客からは自然と笑みが溢れる。雨、というか嵐を呼ぶバンドとして有名なLUNA SEAだけに、東京を発つ前はかなり心配したというRYUICHI。まさにジンクスを跳ね返した今日の晴れっぷりに彼もご満悦の様子であった。

LUNA SEA@札幌ニトリ文化ホール
前述した通り、13年振りのニューアルバム『A WILL』のツアーでもある今回、セットリストの随所で鋭さを見せているのは、そのアルバムに収録された新曲群だ。中でも白眉だったのは収録曲中で最速のBPMを誇る“Metamorphosis”。LUNA SEAが持つ「理知的な構築力」と「肉体的な爆発力」が渾然一体となったナンバーであるが、これがライヴバージョンになると音源以上の輝きを放ってしまう。まるで阿修羅の如く、変幻自在の手捌きを繰り出す真矢のドラミング。カッティングひとつにLUNA SEAの真髄を表現してしまうINORANのギター。地の奥底から宇宙の果てまで、聴くものをフレーズのみで異世界へと誘うSUGIZOの天才的なソロ。適格にリズムを刻むだけではなく、その細部に歌とエモーションが宿ってしまうJのベース・ライン。そして歌唱力がどうこうという次元を超えて、表現者としての「魂」を吐き出すようなRYUICHIのヴォーカル。ただLUNA SEAの場合、そんな5人の卓越した想像力や技術力が「バンド」という共同体の元で「ひとつになっている」わけではない。あくまで5人は「個」としてステージにそびえ立ち、各人それぞれが交じり合うことはあっても、メンバー全員がひとつになりLUNA SEAの名のもとに5人が「溶け合う」瞬間などはない。これがLUNA SEAの凄さである。つまり「妥協」「慣れ合い」「予定調和」の類がLUNA SEAには生まれない。このスリリングさにこそ、我々は何よりも「バンド」の実体性を感じるのではないだろうか。

この日のMCでRYUICHIは、「新しい世界」という言葉を何度か使っていた。「みんなに新しい世界を見せてもらった。全国ツアーをスタートさせて本当に良かった」と。それこそ本編終盤で披露された“ROSIER”が決して色褪せることなく、2014年の現在もLUNA SEAのアンセムとして響くことができるのは、5人が常に「新しい世界」を模索しているからではないだろうか。アンコールでプレイされた“WISH”も同様だ。モンスターバンドとしてきっちりとファンの欲望に応えてみせる。それでいて、ニューアルバムに象徴されるような「新しい世界」を自分たちから提示することも忘れない。このツアーを観る限り、「体力」「想像力」「精神力」という点において、25年目のLUNA SEAは新たな絶頂期を迎えたと言っても過言ではないだろう。

冒頭にも書いた通り、この北海道公演をもってツアーの前半戦は終了。各自がソロ活動等に戻った後、来年1月から再び後半戦がスタートするのである。あらゆるロックバンドとも比較できない、孤高の存在としてあり続けるLUNA SEA。そんな5人が繰り広げるライヴに、僕はロックバンドの「究極のロマン」を感じずにはいられない。(徳山弘基)

LUNA SEA@札幌ニトリ文化ホール
※ちなみに翌14日の公演では、9月29日に誕生日を迎えるINORANを祝う「サプライズ」が行われたとのこと。本人には内緒で彼以外の4人が突如演奏を止め、ステージ袖からはギターの形をしたバースデーケーキが登場。RYUICHIの先導とともに、観客全員がバースデイソングで祝福したそうです(上の写真がその瞬間)。
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