サンボマスター×東京スカパラダイスオーケストラ@新木場STUDIO COAST

サンボマスターの自主企画イベント「男どアホウ サンボマスター」が新木場STUDIO COASTにて開催された。昨年に6年ぶりの復活を果たし、2年連続の開催となった本イベント。今年は1日目(9/13)にSPECIAL OTHERS、2日目(9/14)に東京スカパラダイスオーケストラをゲストに迎えたツーマンライヴ、一見異色に思える対バンだ。以下では2日目の模様をレポートしていこうと思う。

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サンボマスター×東京スカパラダイスオーケストラ@新木場STUDIO COAST
野球コートを模したステージの床(芝生を整備する道具を手にしたスタッフがいたりと芸が細かい!)や、開場BGMとして流れていた吹奏楽による応援歌が示唆するように、この日のモチーフは甲子園。 「プレイボールに先立ちまして……」とウグイス嬢が注意事項をアナウンスしたあとは、走・攻・守のバランスが持ち味の「東京スカパラダイス学園」、超攻撃的なスタイルの「サボ日大学園」の学校紹介VTRが映し出される。本家そっくりのVTRが笑いを起こすと、サンボマスター・木内泰史(Dr・Cho)が登場。昨年はレキシ、10-FEETにコールド負け、そして前日のスペアザには延長戦の末惜しくも敗れてしまった無念を語り、本日の対戦相手=スカパラにはリハを終えた時点で0対6と大差をつけられていることを告白。「そもそもライヴは勝ち負けではない!」というこの日のテーマ自体を揺るがしかねない発言で会場を沸かせつつ、サボ日大学園・野球部主将として堂々と開幕を宣言! 審判の「プレイボール!」という叫びとサイレン音が高らかに試合開始を告げたのだった。

サンボマスター×東京スカパラダイスオーケストラ@新木場STUDIO COAST
先攻は東京スカパラダイスオーケストラ。黒のスーツでビシッとキメた9人(ちょうど野球ができる人数!)がステージに並ぶ画は何度見てもやはり圧巻だ。“Mission Impossible Theme”をミドルテンポでスタートさせると、加藤隆志(G)の「男どアホウ、始めるぞー!」という叫びを合図にしてテンポアップ! 硬質なサウンドのなかでNARGO(Trumpet)、北原雅彦(Trombone)、沖祐市(Key)が次々とソロを炸裂させ、大森はじめ(Percussion)によるボンゴの軽妙なリズムがオーディエンスを踊らせていく。挨拶には申し分ない、最高に華やかな幕開けだ。“ルパン三世'78”ではのっけからクラップを促し、“DOWN BEAT STOMP”や“スキャラバン(CARAVAN)”ではフロアから雄叫びのように太い歓喜の声が多数上がる。時折自らのマイクをフロアへ向けて笑顔を浮かべていた谷中敦(Baritone sax)は「『男どアホウ』には初出場でどんなお客さんかなと思ってたけど、最高だな!」とその興奮を言葉に表した。そして絶妙に擦れた音色のサックスと閃光のように鋭いギターのコントラストが鮮やかだった “STORM RIDER”、NARGOの鍵盤ハーモニカから始まった“SKA ME CRAZY”、沖が奏でるアコーディオンの哀愁溢れる音色も相まってエキゾチックな後味を残した“ペドラーズ 2014”……と、様々なタイプの楽曲でオーディエンスを熱狂させていく。
サンボマスター×東京スカパラダイスオーケストラ@新木場STUDIO COAST
サンボマスター×東京スカパラダイスオーケストラ@新木場STUDIO COAST
さらに“美しく燃える森”では黒スーツ&ハット姿のサンボマスター・山口隆(Vo・G)が登場! スカパラ9人の艶やかなハーモニー&コーラスを従えていつものように叫びまくり、熱情のヴォーカルを震わせる姿はとても新鮮だったし、GAMO(Tenor sax)とメロディの掛け合いを繰り広げ、グイグイと熱量を上げていくさまは観ているこちらまで胸が熱くなった。山口が去ると、ラストの“All Good Ska is One”まで駆け抜ける! 「両手を上げて隣の人と肩組んで!」という谷中の言葉がピースフルな光景を生み出したのだった。

サンボマスター×東京スカパラダイスオーケストラ@新木場STUDIO COAST
後攻はもちろんサンボマスター! SEの時点で歓声が沸き上がり、「オイ!」コールが巻き起こる会場に向けて「新木場、準備いいのかー!?」と威勢よく叫んだかと思いきや、「ホントに今回ばかりはとんでもない強豪校と当たってしまいました。……現時点で20点差です」と語る山口。そして「助けてもらえますか、みなさん!奇跡の逆転、そう、僕ら、ミラクルをキミとおこしたいんです!!」と1曲目“ミラクルをキミとおこしたいんです”からスタート。大差をつけられて負けていようとも関係ない、というかそもそもサンボマスターってどんな場所からでも希望へと這い上がっていくというエネルギーが凄まじいバンドではないか。先ほどまで9人もいたステージ上には山口/近藤洋一(B・Cho)/木内のたった3人。なりふり構わない全身全霊のサウンドは、ものすごい速度と音圧で聴き手の心に迫る。剛速球のストレートだからこそ、それを正面きって受け止めたときにグローブ越しの手がジンジンと震えるのだ。
サンボマスター×東京スカパラダイスオーケストラ@新木場STUDIO COAST
サンボマスター×東京スカパラダイスオーケストラ@新木場STUDIO COAST
サンボマスター×東京スカパラダイスオーケストラ@新木場STUDIO COAST
フロアには巨大なサークルができていたり、たくさんのダイバーが人々の頭上を泳いでいる。そして山口は「谷中さんみたいにハンサムじゃないことは分かってるんですよ!それでも恋がしたい!」と“恋する季節”に突入したり、何度も何度も谷中コールを巻き起こしたりと、相変わらず唄っているとき以外もその喋りを一切止めずにセットリストを進めていく。現時点で未リリースの新曲“愛してる愛して欲しい”で自らが愛を唄う理由を堂々と鳴らしたあと、木内が突然「タイム」のジェスチャーを。ステージ袖から現れた審判とコソコソと話したあと、ウグイス嬢が「選手の追加をお知らせします」とアナウンス。そしてスカパラから谷中、GAMO、加藤、北原、NARGOを招き入れると、計8人の豪華な編成で“そのぬくもりに用がある”を披露。異種の熱と熱がぶつかりあっているにもかかわらず、それらが一切打ち消し合わずに、またお互いがお互いに刺激されて天井知らずにヴォルテージを上げていくような演奏に、熱狂の坩堝と化すSTUDIO COAST! フロアでもみくちゃになる人々も、カオティックに音と音をかき混ぜていくステージ上の8人も、とてもいい笑顔だった。
サンボマスター×東京スカパラダイスオーケストラ@新木場STUDIO COAST
しかしここで沸点を迎えたかのように思えたが、スカパラの5人が去ったあとも「あの、まだ終わりじゃないんですよ」と“青春狂騒曲”“世界はそれを愛と呼ぶんだぜ”などで幾度も沸点を迎えては更新していくからすごい。やはりとてつもないパワーをもつバンドだと改めて思い知らされた。そして「ボブ・ディランだけが、U2だけがロックンロールじゃない!お前が今ワーッてなってるのをロックンロールっていうんだ! お前の過去も未来も知らないけど死ぬなよ! 死んでほしくないんだ!」とラストの“ロックンロール イズ ノットデッド”へ。会場一体となっての「ロックンロール」コールがライヴを締めくくった。

アンコールを求める「ロックンロール」コールや「谷中」コールに応えてサンボマスターの3人+谷中が登場。谷中コールに笑顔で応え、山口コールを巻き起こした谷中が去ると、「さっきマネージャーに聞いたらまだ3-20でした。逆転信じてもいいですか!?」と“美しき人間の日々”へ。そのまま喋りも曲紹介も一切に挟まずに山口のエレキギター弾き語りから“あなたといきたい”へ――という最後の最後で胸がいっぱいになるようなニクイ演出。「みなさん今日はスゲーロックンロールをありがとうございました!男どアホウども、女どアホウども忘れんなよ! 愛してるからな!」とその叫びに万感の想いを託す山口。そしてサンボ+スカパラ+ウグイス嬢を務めた田中美里がステージ上にズラッと揃い、サイン入りボールをフロアに投げ入れて終了。「20-3で東京スカパラダイス学園の勝利となりました。また来年のご来場をお待ちしております」というアナウンスによって「男どアホウ サンボマスター」は幕を閉じたのだった。(蜂須賀ちなみ)

<東京スカパラダイスオーケストラ>
01.Mission Impossible Theme
02.ルパン三世'78
03.DOWN BEAT STOMP
04.スキャラバン(CARAVAN)
05.Wild Cat
06.STORM RIDER
07.SKA ME CRAZY
08.ペドラーズ 2014
09.美しく燃える森
10.5days of TEQUILA
11.Pride of Lions
12.All Good Ska is One

<サンボマスター>
01.ミラクルをキミとおこしたいんです
02.恋する季節
03.光のロック
04.世界をかえさせておくれよ
05.愛してる愛して欲しい
06.そのぬくもりに用がある
07.青春狂騒曲
08.歌声よおこれ
09.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
10.できっこないを やらなくちゃ
11.ロックンロール イズ ノットデッド

(encore)
12.美しき人間の日々
13.あなたといきたい
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