コンテンポラリーな生活×Brian the Sun@下北沢SHELTER

「同じ大阪の同い年のバンドで、コンポラのヴォーカルの朝日とは同じ大学同じ学部同じ学科の同じクラス出身なんですよ」Brian the Sunの白山治輝(B・Cho)がMCでそう話すと、会場からはどよめきが起こった。―――東京・下北沢の老舗ライヴハウスSHELTERの恒例企画である60分ステージのツーマンライヴ「BATTLE60×60~真夏のライブ合戦2014~」。今回選ばれたのは、Brian the Sunとコンテンポラリーな生活の2組。白山の話にもあったような強靭な縁で結ばれた2組が、今回地元とは遠く離れた下北沢の地で闘いに挑むことになった。大阪の若き才能の一騎打ち、果たしてどちらに軍配が上がるのだろうか。

<Brian the Sun>
コンテンポラリーな生活×Brian the Sun@下北沢SHELTER - Brian the SunBrian the Sun
ソールドアウトとなった今回の公演。立っているだけで汗をかいてしまいそうなほどの熱気で溢れ返った会場のステージに先に現れたのは、Brian the Sunの4人。メンバーの登場に待ってましたと言わんばかりの歓声と拍手が沸き起こる。そして「どうも、Brian the Sunです。みんなの声で曲を始めたいと思うんで、1,2,3,4でカウントしてくださいよ? せーの…」との森良太(Vo・G)の声で始まった会場全員でのカウントから、いきなり新曲“Intro”を叩きこむ。タイトル通りまるでイントロのようなショートチューンに、ギターロックの全てを詰め込んだようなクールなメロディーに会場が揺れる。そして、森がその場にしゃがんでエフェクターのつまみを捻り空気を歪ませると“13月の夜明け”のソリッドで激情的な空間へと誘い、《何気ない君の言動が僕を殺してしまう》と過激な恋心を歌う“Sister”へと続く。森の紡ぐ歌詞は、僕と君との恋愛事情のなかに感情の刹那を描いたものが多い。渦中の楽しさや喜びを歌うのではなく、必ず訪れる最後を躊躇なく歌う。そしてそこに死をイメージさせる言葉を使うことも厭わない。しかし、それを単に「全て終わってしまうから」と投げやりになるのではなく、「全てに終わりがあるからこそ」と前向きな意味で捉えているのが彼の詩の魅力だ。

身動きがとれないほどの人で埋め尽くされたフロアを見て「今日はいつもやったらワ―ってやるんやけど、これ人数多いからワ―ってやったらワ―ってなるからワ―ってやらんどこうと思います、許してください」と、観客を気遣う森のカウントから始まった“Noro”のイントロで結局ワ―っとなってしまうフロア。小川真司(G・Cho) の艶のあるギタープレイを前にして歓声を上げずにいられるわけがない。そしてそのまま田中駿汰(Dr・Cho)の叩き出した激しくも切ないワルツのテンポから“グラストライフル”の抒情的な世界が会場を包み込む。そんな、観る者全てを飲み込んでしまうほどの雰囲気を作り上げてしまう彼らだが、MCで喋ればさすが大阪人!と言わんばかりのテンポの良さで会場を笑わせてしまうからさすがだ。本来MCを組み込むところでないところで白山が話しだしたことにより、「次やる予定だった曲が繰り上がってどっかに入るから」と話した森に対して「え、繰り上がるの?繰り下がるのではなく?」と白山がすかさず突っ込んだりと、その息の合ったやりとりに思わず手を叩いた。そして、現在レコーディング中で年内に作品も出す予定だと明かし、突然の吉報に会場からは大きな拍手が沸き起こる。「じゃあ、レコーディング中の新曲を」という森の言葉から“チョコレートブラウニー(新曲)”“セピア(新曲)”を立て続けに披露。そんなフロアの熱も上がってきたところに打ち水の如く奏でられたのは“telomere”の切ない調べだった。そこには数分前にあった笑い声も拍手も歓声もない。ただただ森の歌声に耳を傾ける観客の姿があった。そして最後の一音を丁寧に聴き取った会場からの拍手を待たずして“アレカラ”“彼女はゼロフィリア”で一気にテンションを沸点まで上げていく。目まぐるしく展開する彼らの快進撃のラストは「自分が正しいと思うことが揺らぐ瞬間ってあるとおもうんです。でも、お前らが正しい、一番」と言い放った森の言葉で始まった“ロックンロールポップギャング”。《気に入らない事ばっかりだ。》と繰り返し歌うこの曲。実際、生きていくうえで気に入らないことは多い。しかし、彼らが肯定してくれるからまた自分を信じて頑張ろうと思える。そんな力をもらったアクトだった。


<コンテンポラリーな生活>
コンテンポラリーな生活×Brian the Sun@下北沢SHELTER - コンテンポラリーな生活(pic by 菊池茂夫)コンテンポラリーな生活(pic by 菊池茂夫)
先攻Brian the Sunが作り上げた最高の雰囲気のなか、この3人にバトンが渡った。ステージには、サウンドチェックの段階から湧き上がる興奮を隠せない様子の朝日廉(Vo・G)の姿。藤田彩(B)、酒井俊介(Dr)からもはやく演りたい!というそわそわとした雰囲気が見て取れた。そしてスタンバイするや否や、朝日がバスドラムの上に飛び乗って「いけるかー!」と叫びながら会場を見渡すと、フロアは手を挙げて大歓声で応える。その様子に満足したかのように朝日がジャンプして着陸したと同時に「ワン、ツー!」のカウントから“ひとえの少女”のイントロが掻き鳴らされる! その勢いを一切緩めることなく、“ピンポンダッシュ”で全力疾走していく。「下北沢SHELTERまだまだいけるやろ!」との朝日の強気な煽りに《まだまだまだまだ》とのコールレスポンスで応える観客。そんな初っ端から満身創痍なライヴアクトに「俺は早くも息が切れてるよ!」と朝日が本音を漏らすと、「みんなが元気なのに俺だけバテてられへんから宜しく頼むぜ!」と全員でライヴをやり切ろうという意気に、会場も「任せろ!」というべく大歓声で応えた。そんな一致団結した雰囲気のなか、“笑えない日々、笑える毎日”を叩きこむ。【コンテンポラリー】とは、訳せば「現代的な」という意味を表す。《財布を落として 中身が空になって返ってきた》と、現実あり得る不幸な歌詞をポップなメロディーに乗せて歌う。実際あったら全然笑えないのに、人に話す時は思わず笑い話に仕立ててしまう情けなさと矛盾。そういった、日常生活で抱くちぐはぐした感情をものの見事に曲にしてしまう。一見ポップでキャッチーに聴こえても、どこかで変則的なリズムが組み込まれていたりするところが、まさに私たちのコンテンポラリーな生活を表しているのだ。

ここから、3人が奏でる音で会話をしているかのように始まった“さかな暮らし”、開放的で爽やかさ溢れる“終電劇場”と、日々の変化を表現するように多様な色の音楽を散りばめていく。そして、8月も始まったばかりだというのに本公演が8月ラストのライヴだとの話から、「これからスタジオに缶詰になってレコーディングします。…年末にフルアルバムを出します!」と、Brian the Sun同様リリース発表で会場を沸かした。詳細は後日ということで「ツイッタ―やHPをチェックしてほしい」という朝日が、何かを思い出したかのように話しだした。何やらツイッタ―上で藤田の偽アカウントが大暴れしたとのことで、「今日も治輝や良ちゃん(森)が、『藤田お前本物?』って開口一番に言ってきた」(酒井)とのエピソードで会場は爆笑。そして朝日が「でも本物じゃないと、なんちゃら殺法みたいなとんでもベース弾けないですもんね」と絶妙な前振りで次の“東京殺法”へと導く。「本物の証でもある藤田の必殺技をみんなにも見てもらおうじゃないですか!」との合図で、藤田の超巧ベースが火を噴く! 仰け反りながらプレイするなどの絶好調ぶりをアピールし、会場のテンションを“死なない声を探す”“彼女はテレキャスターを手放さない”のラストまで全開状態にさせたまま走り抜けていった。

そんなハイテンションの会場が落ち着くわけも無く、早々に鳴り出したアンコールを求める拍手に呼ばれて再度ステージに戻った3人。「テレキャスターじゃ終われんよな。もうちょっと暴れてもいいんやで?」と朝日が観客をけしかけると、“ポップソングと23歳”を投下!さらに朝日の「ゴミ箱に行けるかー!」の叫びからのキラーチューン“ゴミ箱人間さん”でフロアをこれでもかというほどに引っ掻き回した。

 さて、果たして今回の闘いに決着はついたのだろうか。どちらの方が良かったなんて一様に判断できないのがライヴの面白いところだ。大阪の若獅子バンドの対決はこれからも続く。(峯岸利恵)


■セットリスト

<Brian the Sun>
01.Intro(新曲)
02.13月の夜明け
03.Sister
04.Noro
05.グラストライフル
06.チョコレートブラウニー(新曲)
07.セピア(新曲)
08.telomere
09.アレカラ
10.彼女はゼロフィリア
11.ロックンロールポップギャング

<コンテンポラリーな生活>
01.ひとえの少女
02.ピンポンダッシュ
03.嫌々々々(新曲)
04.笑えない日々、笑える毎日
05.憎しみのブギ(新曲)
06.さかな暮らし
07.終電劇場
08.東京殺法
09.死なない声を探す
10.彼女はテレキャスターを手放さない

(encore)
11.ポップソングと23歳
12.ゴミ箱人間さん
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