THE ORAL CIGARETTES@渋谷CLUB QUATTRO

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7月16日に1stシングル『起死回生STORY』でメジャーデビューを果たしたばかりのTHE ORAL CIGARETTESのワンマンツアー「THE ORAL CIGARETTES ワンマンライブ ~唇ワンマンツアー2014の巻~」その初日公演が渋谷CLUB QUATTROで行われた。彼らにとってクアトロという場所は「バンドが無名のときにたくさんのお客さんに出会えた場所」らしく、東京での初ワンマンはここでやりたいと以前から思っていたのだそう。そんなこの日を楽しみに待っていたオーディエンスで超満員のなか、肺炎を患っていた山中拓也(Vo・G)も完全復活を果たし、バンドのエネルギーがこちらの期待値を軽々と超えていく痛快かつ感動的なライヴを見せてくれた。「今の俺らに怖いものなんてありません!」と言わんばかりの清々しいライヴ。こんなものを見せられたら「またひとつ追いかけたいバンドが増えた」と感じた人も多いのではないだろうか。名古屋公演(7/19)も大成功のもと終えたそうだが、以下では東京公演の模様をレポートしていこうと思う。大阪(7/21)、そして彼らの地元である奈良(7/23・追加公演)とツアーは続くのでセットリストの掲載は控えるが、少々の演奏曲表記を含むため、これからの公演に参加予定の人は閲覧に注意していただきたい。

THE ORAL CIGARETTES@渋谷CLUB QUATTRO
THE ORAL CIGARETTES@渋谷CLUB QUATTRO
「ただいまより『THE ORAL CIGARETTES ワンマンライブ ~唇ワンマンツアー2014の巻~』、開演いたします! 渋谷クアトロ、かかってこい!」と山中がバンドのサウンドに乗せて高らかに宣言すると、初っ端から自分の楽器にありったけのエネルギーと感情を落とし込むような切れ味&スピード感バツグンの演奏がノンストップで繰り出される。このバンドのアッパーチューンは、衝動や勢いだけでは乗りこなせないようなクセのある展開をするものが多いのだが、何本ものライヴを重ねることによって鍛え上げられたバンドとしてのタフさや筋力、瞬発力がフロアをリズミカルに揺らすことを可能にさせてくれている。オーディエンスも飛び跳ねたりクラップをしたりと思い思いのスタイルで楽しんでいて大盛り上がりだ。その様子を受けてメンバーは何度も「いい景色です!」と叫び、さらにこれでもかというほどオーディエンスを煽りまくり、会場の奥の方までしっかり見渡してはしきりに頬を緩めていた。あきらかにあきら(B・Cho)のリフが印象的なダンスナンバー“N.I.R.A”の鉄板っぷりはさることながら、インディーズ時にリリースした1stミニアルバム『オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証』に収録されているボーナストラック “31歳童顔”(ex.“30歳童顔”)といったインストトラックでもオーディエンスを端から端まで跳ねさせ、クアトロ全体を揺らしまくる。また、中西雅哉(Dr)が実年齢に対して若く見られがちだということにちなんで “30歳童顔”というタイトルが付けられていたこの曲だが、彼は先日誕生日を迎えたのだそう。そのことを受けてタイトル改名の儀式としてドラムソロが披露される場面もあった。

THE ORAL CIGARETTES@渋谷CLUB QUATTRO
THE ORAL CIGARETTES@渋谷CLUB QUATTRO
この日はシングル『起死回生STORY』収録曲以外の楽曲も披露されたのだが、不穏なハーモニーが怪しく余韻を残す“瓢箪山の駅員さん”、切なくも温かいバラード“この季節に僕が唄う歌”、歌謡曲的メロディラインや山中の声色が色っぽい“出会い街”など、このバンドは実に多彩な楽曲を持っている。山中が自身の音楽を「ダンスロック」という単語で括られることへの疑問を語る場面もあったが、自身の楽曲やライヴそのものが、THE ORAL CIGARETTESの音楽は一つの単語にカテゴライズされるべきものではないということを証明していた。そんな演奏時に対して「クアトロ埋まったで!」と無邪気に喜んでみせたり「1ヶ月前まで全然売り切れなくて。埋まらんかと思った~」と泣きそうな声で言ってみせたりと、山中の飾り気のない口調には親しみやすさを感じる。フロアからも温かい拍手や笑い声などが飛ぶ。高いテンションから始まったライヴだったため、バンド側もオーディエンス側も最後まで持つのか?と思いきや、両者のテンションはセットリストが進むのと一緒に右肩上がりに上昇していくから驚いた。ライヴ定番曲群の中でもひときわ輝いていたのが先日リリースされたばかりの“起死回生STORY”だ。同世代のバンドや同じ関西出身のバンドが次々とメジャーデビューしていくなか、悔しさや焦りがあったのかもしれない。だからデビュー作にして≪起死回生≫と唄うのかもしれない。しかしこの1年で積んできたライヴバンドとしての経験は、バンドの血となり肉となった。確かな演奏力で以て自らの曲に強固な説得力を持たせることができる今のTHE ORAL CIGARETTESは強い。そしてこれからもっと強くなるだろう。金髪を振り乱し、左足をエアロビのごとく高く上げたりしながらあきらが低音をうねらせる一方、彼に比べると一見クールな佇まいの鈴木重伸(G)は、髪まで汗でびっしょりになりながら熱量の高いギターワークを繰り広げる。真ん中に立つ山中は時には声が裏返りそうになってもさらに声を張って突っ切るというな根性のヴォーカルを見せ、その後ろでは中西が力強く、時にはフロント3人を煽るようにリズムを刻み込む。ここからの「逆襲」を祝うかのような飛翔感を持つ演奏と、シンガロングも高速手拍子も起こってたくさんの腕が上がる景色が合わさったその空間はとても美しかった。

THE ORAL CIGARETTES@渋谷CLUB QUATTRO
「これから僕らのことを知ってくれる人が増えると、(オーラルのことを)嫌いな人も増えるだろうけど、この景色を見たらそんなんどうでもよくなりました。いつも通りやっていたらみんな振り向いてくれるんやって分かりました」「俺らはどんどん上に上がっていきます。振り落とされずについてきてください!」。そう言って笑う山中を見て、このツアーを通してバンドが一回りも二回りも大きくなるであろうことをより強く確信したのだった。(蜂須賀ちなみ)
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