SPECIAL OTHERS@日比谷野外大音楽堂

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あまりにも快楽指数の高すぎる音楽と、初夏の屋外ステージという快適なロケーションが手を取り合う、2011年以来3度目となるSPECIAL OTHERSの日比谷野音ワンマン。大阪城音楽堂公演(6/29)に続いて迎えた、立見席まで一杯の日比谷野音は、またしても梅雨時の開催にして雨を寄せ付けない強運、そして驚きの贅沢な趣向も持ち込まれ、今回も2部構成の濃密ライヴとなった。アーシーなコーラスのSEが響き渡る中に4人が登場すると、ウォームアップと呼ぶには夢見心地に過ぎる音出し、そして昨年の武道館公演で配布された楽曲“neon”が次第に形を成してゆく。芹澤 “REMI” 優真(Key)のぽっかりと宙に浮かぶようなリフレインと、柳下 “DAYO” 武史 (G)の紡ぐフレーズが語らうように響き、ぐっとジェントルに纏まった音像が、都心の公園から辺りを浸食するように広がっていった。

又吉 “SEGUN” 優也(B)がエレキのアップライト・ベースに持ち替えたところで、爽やかなイントロが溢れ出す“Good morning”。宮原 “TOYIN” 良太(Dr)が軽やかなビートを刻みながら芹澤と共にハーモニーを歌い始めると、その歌声に誘われるように、客席一面には掌がかざされて揺れる。そんな光景を前にヒート・アップする柳下のギター・プレイは、オーディエンスとの相乗効果が育む、一期一会のライヴ感だ。そしてどこかノスタルジックな情景を呼び起こしながら、ダビーな音像で奏でられる“Stay”。自由度の高い、スリリングなコンビネーションを持ち込んでオーディエンスを沸かせる。

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柳下がブルージーかつテクニカルなギターで煽りを絡めてからのメロウな“Raindrops”、続いて柔らかな哀愁のキーボード・フレーズに彩られつつ壮大な物語性を帯びる“beautiful world”といった『Have a Nice Day』収録曲群は、鉄壁の盛り上がりぶりでオーディエンスを跳ね上がらせていた。客席からの賑々しいハンド・クラップを巻いて駆け抜ける“Birdie”まで、MCもなく4人のサウンドだけにすべてを語らせるコミュニケーション。それぞれが高い演奏技術を誇りながら、キャリアを重ねるほどに音像が人懐っこく、人間臭くなってゆく。そんなスペアザの地力の高さを見せつける1st. SETの全6曲であった。「2nd. SETも楽しみにしてくださいっ!」と、ここでようやく発せられた一言を残し、あらためてオーディエンスの喝采を浴びる4人である。

さて、転換中にアコースティック楽器の数々が持ち込まれ、それぞれに柄違いのポンチョを纏って再登場したスペアザ(?)。1st. SETとは柳下と又吉の立ち位置が入れ替わっており、ステージ上手側から順に芹澤・柳下・宮原・又吉となっている。ここで披露されたのは、今回の大阪&東京の野音公演で来場者に配布されたCDに収録の新曲“LINE”である。芹澤は左手で鉄琴を叩きながら口と右手で鍵盤ハーモニカを吹き鳴らし、楽曲のフックとなる旋律を奏でてゆく。宮原は自ら腰掛けたカホンをペダルでキックしつつパーカッションを担当。又吉が奏でている8弦の小ぶりな撥弦楽器は、マンドリンだろうか。そしてアコースティック・ギターの柳下という編成で、夕暮れ時に映える柔らかな楽曲を披露してゆくのだった。

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「どうもはじめまして! SPECIAL OTHERS ACOUSTIC (S.O.A)です!! デビューしたての新人という設定です!」と切り出す宮原。「芹澤が、重大発表とか言ってツイッターでガウガウとか言うから、なんかマンウィズとコラボするみたいになっちゃって(笑)」「新人っぽい活動をしたくて。SPECIAL OTHERSってもともと先輩感がないじゃん。でも、だんだん敬語で話してくるバンドが増えてきて」「(S.O.Aでは)テレフォンズとかとも敬語で喋らなきゃいけない(笑)」「なんか公式サイトでは、S.O.A(ソー)って書いてあるんで、みんなでソーって言いまくっちゃってください」「toeと被るね(笑)」「あと、この(ステージに配置された)サボテンがトレード・マークです」と語りまくる宮原&芹澤。とにかく、4人の演奏スキルを活かしたアコースティック・サウンドが本格始動していること、そして4人がフレッシュな意気込みに満ちていることは一目瞭然だ。10/8には、全10曲収録となるS.O.Aのデビュー・アルバムがリリースされることも、告知された。

そのアルバムにも収められるという、“Wait for The Sun”のS.O.Aヴァージョン。ゆったりとしたテンポに、柳下&又吉の2つのアコースティック弦楽器が交錯するさまが美しいアレンジで、その静謐かつ優しげなサウンドにも関わらず、客席からは「ラーラーラララー♪」と歌声が上がる。それをフィニッシュしたところでそそくさとSPECIAL OTHERSのエレクトリック編成に戻ると、アップリフティングなオリジナル“Wait for The Sun”を立て続けにプレイしてオーディエンスを沸騰させてしまうのだった。これは贅沢な上に心憎い演出だ。柳下の熱く歪んだギターといい、宮原の炸裂音のようなスネアといい、ただでさえ「絶対的にスペシャル」なスペアザのロック・アンサンブルが、「相対的にもスペシャル(当社比)」みたいな手応えで響き渡るのである。

この後には、豪快なサウンドで遠慮なく煽り立てる“PB”からの、歴代の必殺曲連打である。一様に手を打ち鳴らしてバンドに食らいつき、ビルの谷間に顔を覗かせた朧月の下で踊りまくるオーディエンス。夜に沈む時間帯に、眩い照明もいよいよ大活躍を始め、瑞々しくキャッチーなメロディが少しずつ形を成してゆく“Laurentech”へと連なるのだった。「お足元の良い中、ありがとうございます!〈#晴れバンド〉ってハッシュタグ付けて、ツイッターに流してもいいくらい」「昔、あと5、6年は音楽で食べさせてくださいって言ったんですけど、本当にやらせて貰ってます! WIN-WINだね!」とご機嫌に言葉を投げ掛ける芹澤と宮原。本編ラストはその宮原の高速回転ドラム・プレイに乗ってドラマティックに駆け上がる“IDOL”で、美しいフィナーレを迎えるのだった。

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アンコールに応えると、「晴れて良かったね。ヒヤヒヤしてたからね。眺めがいい(又吉)」「やっぱり野音だね。武道館やってからの野音。帰って来た、っていうね(柳下)」といったふうに、ここまでほぼ喋る機会のなかった2人も言葉を残し、“AIMS”のとてつもない祝祭感を巻き起こしてくれる。そして4人が手を組んで挨拶し、記念撮影を行った後にも、「横の2人(宮原&芹澤)がバーッって喋るじゃん」と少々不服そうだった又吉が、「気をつけて帰ってくださいっ!」と最後の一言を放って、ステージは幕を閉じた。今夏、スペアザにS.O.Aにと二足の草鞋で各地フェスやイヴェントにも出演予定の4人。ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014には、SPECIAL OTHERSとして8/3(日)のLAKE STAGE、12:50に出演予定です。こちらもぜひお楽しみに。(小池宏和)

■セットリスト

【1st. SET】
01.neon
02.Good morning
03.Stay
04.Raindrops
05.beautiful world
06.Birdie

【2nd. SET】
07.LINE [S.O.A]
08.Wait for The Sun [S.O.A]
09.Wait for The Sun
10.PB
11.Laurentech
12.IDOL

(encore)
13.AIMS
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