フジファブリック×髭(HiGE) @ Zepp Tokyo

フジファブリック×髭(HiGE) @ Zepp Tokyo - フジファブリックフジファブリック
フジファブリック×髭(HiGE) @ Zepp Tokyo - 髭(HiGE)髭(HiGE)
2008年ロック・シーン最前線のサイケ・ポップ頂上対決にして異種格闘技戦=フジファブリック×髭(HiGE)東名阪スプリット・ツアー、ここZepp Tokyoでいよいよ開幕! 14日Zepp Osaka、15日名古屋ダイアモンドホールでの公演を控えているのでセットリストのネタバレは控えるが、両バンドがロックとポップをまったく違う方向からぶっ刺しているような、摩訶不思議な一夜だった。

先攻は髭(HiGE)。『Chaos in Apple』以降の最近の楽曲でがっつりロックンロール系の序盤。最近の須藤のお気に入りというメイン・ギター=フェンダーのテレキャスター・デラックスのサウンドを前面に押し出し、サイケというよりグランジ/オルタナ方面にぐっと寄った手触りの音になっている。が、最初から「アゲていくぞ!」的なモードではなく、むしろそれらの楽曲を通して、フロアと一緒にバンド自身もアガっていこうとでもいうような、「平熱40度」的な心地好さの中でライヴが進んでいく。

途中、“ドーナツに死す”をさらに悪ノリさせたような曲が飛び出して「あれ?」と思ったら、「今サラッとやったの新曲です!」とやっぱり後から悪戯っぽく種明かしする須藤。「今日、ギターの音が大きいから、何やってるかよくわかりません! でも、いいグルーヴが生まれてる気がする。僕たちまだまだこんなもんじゃない。みんなもまだまだこんなもんじゃない。それは知ってる。徐々に持っていきます。最後にいい感じにします!」「最初から最高なものをやるのはバカだよ」とうそぶきつつ、高揚感よりは中毒性でがっつりオーディエンスを包んでいく。

あと、これまでは仮装担当だったり飛び道具担当だったりしたコテイスイだが、この日は1人でドラムを叩く曲があったりして、「反則技なしでも髭」な今のモードをさりげなくアピールしていた。「僕らは今日、ここに集まってるけど、明日になったら忘れてしまう。でもそれでいいと思う。また明日を更新すればいいから」という須藤の言葉通り、目映い白昼夢のような轟音&音響のサウンドスケープを残して、髭の出番は終了。熱にうかれたようなオーディエンスの歓声が湧き起こる。

そしてフジファブリック。打って変わって1曲目からアゲ倒す! 「さっき、髭のボーカルの須藤さんが『最初から最高なものをやるのはバカじゃないの?』って言ってましたけど……やってます! それでいいでしょ? バカなんです!」という志村のMC、そしてフジファブ史の中からアガる曲上位をピックアップして叩きつけるような選曲に、Zepp熱狂! 

フジファブリックは新曲を2曲披露。1つは、直線ビートでポリシックスやらツェッペリンやらと正面衝突しながら、それでも構わず真っ直ぐにかっ飛ばすような、カラフルでダイナミックな曲。もう1つは、志村のブルースハープ、ギター山内の奏でるエレクトリック・シタールなどをフィーチャーしつつ、デヴィッド・ボウイの“Space Oddity”をフジファブ流に再現するような、宇宙的な響きのスロウ・ナンバー。どちらも、どこを切っても驚きと新境地のカタマリのような彼らの音楽に、さらに驚きと新境地をもたらすような楽曲だ。

「実は、髭とは4〜5年前に下北沢CLUB QUEっていうところで対バンしてたんですよ。その時は最高でキャパ300人ぐらいだったんですけど、今日は1ケタ違うお客さんが集まってくれてます!」という志村の言葉に、じっくりと、しかし温かい歓声が広がっていく。そして、最後の曲をやる前、もう一度MC。「同世代のバンドが解散したり、近くにいなくなったりすることが多いですけど、髭とフジファブリックはこうしてまた一緒にやってます! そしてこれからも――」。

この日、ロックンロールもオーディエンスもひっくるめて煙に巻く魔術師に徹した髭と、ロックンロールもオーディエンスも引き受ける司会役に徹したフジファブリック。実に面白い。大阪&名古屋では両バンドの間にどんな化学反応が生まれるのか? 気になる。(高橋智樹)
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