BURGER NUDS@LIQUIDROOM ebisu

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2004年6月21日、新宿ロフトでのライヴを以って解散した3ピース・バンド=BURGER NUDS。それから10年が経ったこの日、ワンマンライヴ「2014.6.21」を開催した。活動期間は5年間、リリースしたオリジナル・アルバムは2003年の『symphony』1枚のみながら、強いインパクトを残したバンドとして語り草となっている彼ら。しかし、その切なく、優しく、尖った音像を熱烈に愛するリスナーは多く、会場となったリキッドルーム恵比寿は満員御礼。10年ぶりの復活を見届けようと集ったオーディエンスによる、期待と緊張の入り混じる空気が開演前から立ち込めている。

そんな独特の空気に包まれたステージに、以前のライヴでも使用されていたCo-Edの“Going, Going, Gone”のSEをバッグに現れた門田匡陽(Vo・G)/丸山潤(B・Cho)/内田武瑠(Dr・Cho)の3人。大きな歓声を浴びながら所定の位置につくと、3人で向かい合ってのカウントからスタートしたのは“ミナソコ”。大海原をたゆたうような大きなグルーヴに乗って、独特の危うさとソウルを纏った門田の歌声が伸びていく。ステージ背後から放たれる黄金の光を背負い、まるで空白の10年間を埋めていくように、ゆっくりと、丁寧にアンサンブルを紡いでいく3人。その眩しすぎる姿に、思わず目頭が熱くなったのは私だけではないだろう。さらに瑞々しさ全開のポップチューン“逆光”、グランジ/オルタナティヴ直系のサウンドが吹き荒れる“ANALYZE”と繋げてギアアップ。そのまま雪崩れ込んだ“BRAVE GIRL IN HELL”では、彼らの真骨頂とも言える、冷気と狂気を孕んだヘヴィかつソリッドな音塊を気迫たっぷりに叩きつけ、固唾を呑んで見守るオーディエンスから拍手喝采を浴びていた。

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「えっと、ただいま」。そんな言葉少ない門田の挨拶から“歪み”へ。アルペジオの繊細な響きとともに、聴き手の胸をキュッと締め付けるような歌とメロディが届けられる。さらに水彩画のような淡いトーンで深い孤独が描かれる“タネリ”、荒野で力強く根を張る生命の息吹を感じさせるような“草の花”と続いたのだが、一音ごとに豊かなイメージが広がっていくような巧みな情景描写には改めて驚かされる。現在は自身がフロントマンを務めるバンド=Good Dog Happy Menやソロ・プロジェクト=Poet-type.Mでも、深い詩情文学性に裏打ちされた創造力をいかんなく発揮している門田。その原点と言えるのが、このBURGER NUDSの楽曲群だと思うと、より鮮烈な輝きをもって胸に迫ってくるような気さえする。一方“空気清浄機”“不感症”“自己暗示の日”の3連打では、静動自在の展開と研ぎ澄まされたサウンドで、真っ白な恍惚へと上り詰めていく三位一体のギターロックが全開に。その後の「なんか言うことあるんじゃないの?」(門田)→「えっと、こんにちは」(丸山)→「ただいま」(内田)というMCリレーはぎこちないこと極まりなかったけど、張りつめた緊張感の中で鳴らされるアンサンブルの結束力は、10年の時を経てもなお盤石のようだ。

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歌い出しの一声でフロアがどよめいた“エコー”、時空を超えた壮大な歌とサウンドスケープが広がる“指輪”を経て、「我々はつい最近『symphony』というアルバムを出したばかりなんですけど……」と、11年前のアルバムを、今年4月2日に復刻リリースしたことに絡めたギャグを飛ばす門田。しかし、笑いが巻き起こるフロアに向けて、「新しい曲を作りました」と正真正銘の新曲“LESSON”を披露する。スローテンポのアンサンブルの上で《今 無駄にはしゃがないで良い 無理に喋らないで良い 嘘を唄わないで良い/誰も頼らないで良い 君は独りで良い》と歌われるこの曲は、孤独や弱さに向き合うことで、確かな希望を見出だそうとする意志に満ちた、BURGER NUDS流応援ソング。続けて披露されたパワフルでダイナミックな新曲“NERD”とあわせて、現在の彼らのポジティヴなモードを雄弁に物語っているようで、胸が熱くなった。

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色彩豊かなアンサンブルが艶やかに花開いた“冷たい水”からは、クライマックスへ向けて熱量を増していくバンド。ダウナーな序盤からスリリングなセッションがスパークする終盤へと雪崩れ込む“AM 4:00”でフロアの拳を突き上げさせると、「ダメだ、次死ぬかも。骨は拾ってやってください」(門田)というMCからの“鋼鉄の朝”で言葉通りの完全燃焼。切なく甘美な歌心を“遺失物取扱い係”“Candle for minority”で伸びやかに届けると、本編ラストを飾ったのは“プリズム”。幾何学的な模様がステージ背後に照らし出される中、内田との重層的なハーモニーが響きわたるふくよかな音像を描き出して3人はステージを降りた。

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アンコールでは、「実は去年の今ごろにマルジュン(ベースの丸山潤)に『来年の6月21日で10年だぞ』と連絡したんですよ」と口を開く門田。さらに「2004年に解散ライヴしてからまったく会わなかったし、当時日本で一番仲悪いバンドが俺らだったと思うんですよ。だから解散してからBURGER NUDSの音楽をまったく聴いてなかったんです、当時の嫌な思い出が蘇ってしまうから。でも久しぶりに3人でプレイしようとしたときに、全部忘れてなくて。単なる楽譜だけじゃなく、3人で合わさったときの目線とか、呼吸とか、そういう空気感そのものがBURGER NUDSの音楽を作っているんだと改めて感じました」と続けて、フロアの温かい拍手を誘っていく。そして“MARCH”を経て、「19歳の時に最初に作った曲です。BURGER NUDSがBURGER NUDSになった曲を最後にやって終わりたいと思います」と“COLD BURN”を焦燥感たっぷりに叩きつけて大団円。初期衝動の塊のような青く研ぎ澄まされた轟音と門田の絶唱が、10年という歳月を経て再びエネルギッシュに轟いた、感動的なフィナーレだった。丸山からは3人でスタジオに入って曲を作っている近況や、今後は定期的にライヴを行っていくつもりだという未来予想図も語られ、止まっていた時計が動き出したことを印象づけてくれたBURGER NUDS。まだまだスローペースな活動が続いていくようだが、その確かな歩みを今はしっかりと見守っていきたい。(齋藤美穂)

■セットリスト
01.ミナソコ
02.逆光
03.ANALYZE
04.BRAVE GIRL IN HELL
05.歪み
06.タネリ
07.草の花
08.空気清浄機
09.不感症
10.自己暗示の日
11.エコー
12.指輪
13.LESSON
14.NERD
15.冷たい水
16.AM 4:00
17.鋼鉄の朝
18.遺失物取扱い係
19.Candle for minority
20.プリズム

(encore)
21.MARCH
22.COLD BURN
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