HOT STUFF presents TUMBLING DICE~ダイスをころがせ~ vol.1@SHIBUYA-AX

HOT STUFF presents TUMBLING DICE~ダイスをころがせ~ vol.1@SHIBUYA-AX - くるり all pics by チームライトサムくるり all pics by チームライトサム
イベンター・HOT STUFF PROMOTION主催による新たなライヴイベント『HOT STUFF presents TUMBLING DICE~ダイスをころがせ~』。「HOT STUFFがリコメンドする新人バンドと、彼らのリスペクトする先輩バンドが同じステージで火花を散らす」というコンセプトのもと行われた『TUMBLING DICE~ダイスをころがせ~』、第1回開催となる今回はキュウソネコカミ、赤い公園、くるりの3組+オープニング・アクト:QOOLANDが、いよいよ閉館間近、この日が最後の日曜日となったSHIBUYA-AXに堂々集結! ロック異種格闘技という言葉では到底言い尽くせない響宴の模様を、以下ダイジェストでレポートしていくことにする。
HOT STUFF presents TUMBLING DICE~ダイスをころがせ~ vol.1@SHIBUYA-AX - QOOLANDQOOLAND
●QOOLAND(Opening Act)
1曲目“勝つまでが戦争”から、平井拓郎(Vo・G)&川﨑純(G)によるツイン・タッピングの幾何学フレーズと美メロとタカギ皓平(Dr)の手数王ドラムと菅ひであき(B・Cho)のデス・スクリームが入り乱れる、極彩色の音のカオス! この日オープニング・アクトとして登場したQOOLAND、昨年だけでも実に115本のライヴをこなしてきたパンキッシュな爆発力と、緻密かつ大胆に編み上げられたサウンドでもって、いきなり満場のフロアを驚愕と歓喜であふれさせていく。メロディを歌いながら両手で細かくタッピングを繰り広げる平井の姿は観ているだけで興奮を禁じ得ないし、ベース抱えたままステージ狭しと練り歩いたりAX中に響く声でオフマイクで叫び上げたりと大活躍の菅のムードメーカーぶりも痛快だった。4月にリリースされたばかりの最新アルバム『毎日弾こうテレキャスターagain』(2ndミニアルバム『毎日弾こうテレキャスター』再録+新曲1曲収録)から“さよならNEVADA”“ドグラマグラ”を披露しつつ、「今後とも一生懸命やっていくんで、よろしくお願いしまっす!」と不器用ながら真摯に宣誓する平井を称えるように、会場から熱い拍手喝采が沸き上がっていた。同じくHOT STUFFによるライヴイベント『Ruby Tuesday supported by TUMBLING DICE』(7月1日・新宿LOFT)のメインアクトとして出演が決定しているQOOLAND。正味20分ほどのアクトながら、果てしない進化の途上にある4人の「今」が鮮烈な輝きを放っていたのが印象的だった。

01.勝つまでが戦争
02.熊とフナムシ
03.白夜行
04.さよならNEVADA
05.ドグラマグラ

HOT STUFF presents TUMBLING DICE~ダイスをころがせ~ vol.1@SHIBUYA-AX - キュウソネコカミキュウソネコカミ
●キュウソネコカミ
出番前のサウンドチェックの段階から「ちょっと音を確認さしてもらってもよろしいですか?」というヨコタ シンノスケ(Key・Vo)の言葉にヤマサキ セイヤ(Vo・G)が「確認どころの騒ぎちゃうぞ! 手加減せえへんぞ!」の絶叫をかぶせて“ネコ踊る”で一大熱狂天国を描き出していたキュウソネコカミ。複雑怪奇なアレンジも、飛び道具的なシンセ・サウンドのポップ感も、チャラいDJ(“良いDJ”)やスマホ依存(“ファントムバイブレーション”)など半径3mの違和感すべてに攻撃衝動をたぎらせていく歌詞も、すべてがまっすぐに狂騒の彼方めがけて大爆走していくような、スリリングにして豪快なアクト。冒頭から割れんばかりのクラップが鳴り響き、“ファントムバイブレーション”では「スマホはもはや俺の臓器!」のシンガロングが鳴り響き……といった具合に、自身初AXのステージを極限まで沸かせまくっていく。

イベントのタイトルにちなんで「サイコロ風船の出た目で演奏曲を選ぶ」というコーナーを設けたら、レア曲だらけの選択肢の中でよりによって定番曲“サブカル女子”の目が出て「他の曲めっちゃ練習してきたのに!」と苦笑するヤマサキ。「くるりに見せるライヴがこれでいいのか?と俺はずっと思ってるけど(笑)。俺はキュウソネコカミだから、これに自信を持っていて、『どうだ!』っていう感じでやっていきますよ!」とこの舞台に立った喜びを最大限に表明するヨコタ。あたり一面の「ハンド・オブ・デス」(歌に合わせてパン!と手を叩いた合掌ポーズのまま踊る)を生み出していた“DQNなりたい、40代で死にたい”……「昨日『メトロック』っていうフェス出て、Twitter見てたら『キュウソの後ペットボトルだらけやったからもう聴かん』とか言われたから。キュウソの後のゴミは拾うように!」というヤマサキのキレ気味のシャウトまでもが爽快に響く。6月18日にはメジャー第1弾作品『チェンジ ザ ワールド』のリリースも控えているキュウソ、“ウィーアーインディーズバンド!!”改め“ウィーワーインディーズバンド!!”→“ビビった”の連射まで、ブレーキ壊れた爆演で30分間ぶっ飛ばしてくれた。

01.良いDJ
02.ファントムバイブレーション
03.オリジナリティ
04.サブカル女子
05.DQNなりたい、40代で死にたい
06.ウィーワーインディーズバンド!!
07.ビビった

HOT STUFF presents TUMBLING DICE~ダイスをころがせ~ vol.1@SHIBUYA-AX - 赤い公園赤い公園
●赤い公園
津野米咲(G・Piano・Cho)がキーボードで奏でる“絶対的な関係”が薄暗いステージに流れる中、佐藤千明(Vo・Key)/藤本ひかり(B)/歌川菜穂(Dr・Cho)がオン・ステージ。4人の気合い一閃、トータル100秒の衝撃アンセムにして最新シングル・ナンバー“絶対的な関係”炸裂! 藤本&歌川のパワフルにしてしなやかなリズム。全身痺れるようなノイズも轟音も鮮やかに操りながらアンサンブルをドライヴさせる津野。そして、キュートさも狂気も両手に抱えた艶やかな熱唱を聴かせる佐藤。さらに「準備できてる? なら、かかってこいやああああっ!」と佐藤渾身の挑発絶叫から“のぞき穴”!と衝動爆発ナンバーを連射した後は、赤い公園屈指のクール&ポップなナンバー“今更”、そして「この雰囲気の中でやるのはどうだろう?と思った曲だけど……大事な曲なので、セットリストに入れました」という前置きとともに珠玉のピアノ・ナンバー“交信”へ、といった前半パートで、赤い公園の音楽世界の幅広さと底知れなさを存分にアピールしてみせた。

「AXもうなくなっちゃうらしくて、私たちもたぶん出れるの最後だからね。とっても楽しみにしてきました」という佐藤のMCを挟んで、轟々たるフィードバック・ノイズとピアノが妖しくも美しく絡み合うメロディアスな名曲“風が知ってる”、衝撃映像集的なサウンドスケープが赤黒く渦巻く“塊”へ。「人に言われたことはないけど、自分たちでは自称『情緒不安定なバンド』って呼んでるの。曲を聴けばわかると思うけど。今の曲はオカルトな感じだったでしょ? 次の曲はね、オカルトな感じじゃないけど、『今の曲の後にこれやるんだ?』って思うと、ちょっとオカルト(笑)」(佐藤)と言いつつ、津野のピアノとともに最新アルバム『公園デビュー』から軽快なナンバー“贅沢”を披露したかと思うと、ひときわエモーショナル&アッパーな“カウンター”で熱いコール&レスポンスを呼び起こしていく。戦慄と笑顔が曲ごと・瞬間ごとに入り混じりながら、聴く者の心の琴線をびりびりと震わせていく、まさに赤い公園そのもののような凄絶なステージ。「この間、『赤い公園の後は会場にすげえペットボトルばっか落ちてる』って書かれたから、自分のゴミは自分ちへ持って帰れよ!」とついさっきのキュウソのMCに倣って呼びかけてフロアを沸かせた後、シングル『絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く』収録の珠玉のノイズ・バラード“きっかけ”から流れ込んだ最後の曲は“ふやける”。この上なくメロディアスな悲鳴のような佐藤の絶唱、とめどない激情の如き津野/藤本/歌川のアンサンブルが途方もないスケールで広がるスロウ・ナンバー――AX最後の日曜の夜が、紅蓮の音に包み込まれていった。

01.絶対的な関係
02.のぞき穴
03.今更
04.交信
05.風が知ってる
06.塊
07.贅沢
08.カウンター
09.きっかけ
10.ふやける

HOT STUFF presents TUMBLING DICE~ダイスをころがせ~ vol.1@SHIBUYA-AX - くるりくるり
●くるり
熱気立ち込めるステージにひとり登場した岸田繁(Vo・G)が歌い始めたのは“ブレーメン”。やがて、佐藤征史(B・Vo)、ファンファン(Trumpet・Key・Vo)とサポート・メンバー=山本幹宗(G)&福田洋子(Dr)がそこに加わり、滋味と開放感に満ちた音像がAX狭しと広がっていく。さらに、3拍子の雄大かつ静謐な音風景と躍動感あふれる8ビートが入れ替わり鳴り渡って、満場のオーディエンスの心と身体をゆっくりじっくりと高揚の高嶺へと導いていく。今ではプログレ的に激しい曲展開をするバンドも決して珍しくないが、それをここまで自然体で、かつ楽曲そのものの必然として盛り込んでいるバンドはくるりぐらいだろう――ということを、その豊潤なアンサンブルに改めて実感させられる。「はいみなさんこんばんは、くるりです」と軽やかに呼びかけ、「ファイナルAX!」とフロアから上がる声を拾って「……ハーゲンダッツ?」と返す岸田。「AXって久しぶりに来たんですけど……いつぶりぐらいですかね?」(岸田)「私は……girl next doorの解散ライヴぶりです(笑)」(ファンファン)というトークで会場を軽やかに沸かせたところで、「まあまあ面白い曲です。キュウソネコカミぐらい(笑)」という紹介から“Liverty & Gravity”と題された新曲へ。「よいしょ!」「あそーれ!」といった合いの手を盛り込んだ、ポップ&ダルな8ビート祭囃子とでも言うべき音像が、会場の熱気を心地好くかき混ぜていった。

“ブレーメン”に加え“コンチネンタル”“ハヴェルカ”といった『ワルツを踊れ』収録曲、CM曲でお馴染みの“Loveless”、さらに“ロックンロール”“虹”……と初期曲から最新モードの楽曲まで惜しげもなく盛り込んだくるりのアクト。「初めて赤い公園っていうバンドを観たんですけど……すごいよかったです。プロモーションで言わされてるとかじゃなくて、『マジでええやん!』と思って」と岸田。「おおっ」という声がフロアに広がったところへ、「……まあ、『情緒不安定バンド』っていうと、俺らのほうが先輩やと思いますけど」と付け加えてみせるあたり、さすが岸田と言うほかない。「みんな、たぶんここに来ることもないと思うんで、僕らも含めて。何回も来たことある人もいると思うけど、この場所に『ありがとう』と……なんとなく思っていただけたらと(笑)」という言葉とともに、本編最後に響いたのは“東京”。体内の熱量を振り絞るように至上のメロディを歌い上げ、身体を震わせながらギターをかき鳴らす岸田。ファンファンのトランペットの旋律が至福の音風景に重なって……終了。鳴り止まないアンコールの手拍子に応えて再登場した5人が、自身最後のAXのステージで力強く鳴らしたのは“ワンダーフォーゲル”だった。演奏終了後、観客に向かって深々と一礼する5人に、高らかな拍手喝采が広がっていた。

01.ブレーメン ver.2
02.Morning Paper
03.Liverty & Gravity(新曲)
04.コンチネンタル
05.Loveless
06.ハヴェルカ
07.ロックンロール
08.虹
09.東京

En.ワンダーフォーゲル

AX1Fのトイレ故障も何のその、世代もジャンルも超えた共演が終始むせ返るほどの祝祭感を作り出していた第1回『TUMBLING DICE~ダイスをころがせ~』。日程・会場は未定ながら今年秋の第2回開催も発表されたし、次回はどんな奇跡の顔合わせが?という勝手な夢想が、熱演の余韻とともに頭に渦巻く、最高の一夜だった。(高橋智樹)
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