今やトップ・スターの座に君臨するZEDDとは何者なのか? 今こそEDMを徹底分析!

5月20日、ゼッド待望の新作『トゥルー・カラーズ』がリリースされる。これまでのゼッド像を覆しうる、そしてアルバム一枚を聴き通すことで深い感動を呼び起こす、ドラマティックで美しいアルバムである。前作『クラリティ』は、ジャスティスを聴いて音楽制作に目覚めたゼッドこと若きアントン・ザスラフスキーが、自らの手で狂騒を巻き起こすまでの、華々しくタフなドラマであった。新作のリード曲"I Want You To Know feat. Selena Gomez"も一聴するとパーティー・アンセムだが、ビデオではセレーナがフロアを抜け、レストルームの鏡で自分自身を見つめてキスするシーンが描かれている。『クラリティ(明瞭さ・清澄)』だったはずの視界を抜けて、『トゥルー・カラーズ(真の色彩・真実の愛)』を目指す物語。80年代シンセ・ポップを彷彿とさせるソング・ライティングに驚く"Done With Love"や、ピアノに導かれ倦怠感のハーモニーを運ぶ"Papercut feat. Troye Sivan"。そして終盤の、ストリングスを絡めた真剣そのものの美しいラヴ・ソング"Daisy"。狂騒に覆い隠された生々しい感情や思いの形を、ゼッドは本作でひとつずつ解きほぐしてゆく。

(文=小池宏和)

ゼッドはもちろんAVICIIからマデオンまで、
EDMの必聴曲を一挙総ざらい!

ゼッド
“I Want You To Know ft. Selena Gomez”

ニュー・アルバムについての文章でも触れたが、新作のリード曲であり、作曲にはワンリパブリックのライアン・テダーが参加している。ゼッドとライアンには以前にも“Lost At Sea”というコラボ・チューンがあるが、ディスコ向きの高揚感を描くライアンのメロディと、しなやかなエレクトロニック・ビートのグルーヴを叩き出すゼッドのボトムは、すこぶる相性が良い。狂おしいヴォーカルを披露し、ビデオにおいても熱演を繰り広げているのは、シンガー/女優として活躍しているセレーナ・ゴメスだ。ライアンの作曲含めて、豪華トライアングル・コラボが完成している。余談だが、セレーナと言えば長らくジャスティン・ビーバーとの噂も報じられていたが、奇しくもゼッドはジャスティンの“Beauty and a Beat”制作に携わったことがある。

アリアナ・グランデ
“Break Free ft. Zedd”

ゼッドにとって、セレーナ・ゴメス以前におけるアイドル級スターとのコラボと言えば、アリアナ・グランデの“Break Free”だろう。『マイ・エヴリシング』の先行セカンド・シングルとして、ダウンロード・リリースされた。アリアナ名義のリリースではあるものの、ゼッドは初めて彼女の歌声に触れたときから惚れ込んでいたというエピソードもある。現代的なR&Bナンバーを数多く歌っているアリアナだけに、直線的なリズム・トラックのEDM/ハウス・チューンはアルバムの中でも異彩を放っているが、凛とした歌声が浮かび上がる導入部から力強く伸びやかなコーラスのフックまで、ヴォーカルの魅力を満遍なく引き出す楽曲デザインは秀逸。その効果はUSチャート上にもはっきりと表れていて、ゼッドが手掛けた楽曲としては過去最高の4位を記録している。

ゼッド
“Clarity (Official Video) ft. Foxes”

デビュー・アルバム『クラリティ』のタイトル・チューンであり、シングルとしてリカットされた。フォクシーズことルイザ・ローズ・アレンの歌声を世に広く知らしめたナンバーでもある。作曲に携わったマシュー・コーマは、ゼッドの新作『トゥルー・カラーズ』でも大活躍を見せており、今やEDMシーンにおいて引っ張りだこのソングライターだ。また、サウンド面ではUSダンス・シーンの若手有望株ポーター・ロビンソンも参加している。現在も20代の若い才能たちが、こぞって作り上げたアンセムと呼べるかも知れない。沸々と高揚するヴォーカルが最初のコーラスを歌い切った次の瞬間、牙を剥くゼッドのビートの威力は計り知れない。やはり、ゼッドのビート/グルーヴ・メイカーとしての才覚は抜きん出ているし、決してダンス一辺倒ではない新作『トゥルー・カラーズ』においても、要所要所でバシっとその力量が発揮されているのである。

アヴィーチー
"The Nights"

瞬く間にトップDJ/プロデューサーの座へと登り詰めたスウェーデンのアヴィーチーは、エレクトロ・ハウスの飽和時代を一気にリセットした革命家でもある。ロックな歌心の“The Days”と対で発表された“The Nights”は、ビッグ・リリースになること間違いなしなニュー・アルバム『ストーリーズ』の先行シングルだ。オーガニックなギターやドラムの響き、そしてチャントの如き歌声がデザインされた、濃縮版アヴィーチーと呼ぶべきアンセムである。ゼッドの新作に触れて、実はアヴィーチーと共振する部分があるかも、と感じた。

ディスクロージャー
“Latch feat. Sam Smith”

新世代のダンス・ミュージック・アクトを語るには、絶対に避けては通れないディスクロージャーことローレンス兄弟だが、ヨーロッパ経由のエレクトロ・ハウスやテクノ、トランス、UKのダブステップなどが混在するEDMシーンの中、ディスクロージャーはUKソウル〜UKガラージの正統後継者にして発展型という個性がウケたように思える。プロダクションもライヴ・パフォーマンスも精微にしてエキサイティング。この“Latch”で、サム・スミスという不世出のシンガーを世に送り出した功績は余りに大きい。

ジャックÜ
“Take Ü There feat. Kiesza”

USダンス・シーンのリーサル・ウエポン=ジャック Üは、ディプロとスクリレックスによる強力タッグだ。当初は一過性のお騒がせジョイントかとも思われたが、シングル“Take Ü There feat. Kiesza”、“Where Are Ü Now (with Justin Bieber)”に続いて、ほぼアルバム・サイズのEPまでリリースしてしまった(日本盤は6/10リリース)。 “Take Ü There”は、センチメンタルなオープニングを経て、ディプロ印のトラップ〜ボルチモア・ブレイクスまでが交錯する急展開の一曲。このユニットの化学反応をしっかりとガイドしてくれる。

ポーター・ロビンソン
“Flicker”

ゼッド“Clarity”の制作にも携わったポーター・ロビンソンは、親日派でちょっとナード・タイプのプロデューサーである。何しろ日本のアニメが大好きで原宿大好き、作品には時にボーカロイドを使用し、ライヴではジャパニメーションを演出に用いたりもする。日本の車窓風景をビデオにした“Flicker”からも分かるように、アルバム『Worlds』で一層明らかになった、日本人の感性をくすぐる音楽性も他に類を見ない。我々が全力でサポートするべきアーティストだろう。

マデオン
“Nonsense ft. Mark Foster”

フレンチ・エレクトロ・ポップの新進気鋭にして1994年生まれのマデオン。まだティーンエイジャーだった2012年にSONICMANIAで初来日を果たしたが、今年は晴れてデビュー・アルバム『アドヴェンチャー』を携え、サマソニに帰還してくれる。歌心を軸に美しいエレクトロ・サウンドを構築する手捌きは、ハウスやテクノのマナーに囚われない自由な感性によるものであり、いかにも00年代フレンチ・エレクトロ育ちといった印象だ。マーク・フォスターを迎えた“Nonsense”は、ヴォーカル含め最初からこういうバンドだったんじゃないかという完成度を誇り、末恐ろしい。

提供:ユニバーサル ミュージック

企画・制作:RO69編集部

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