在日ファンク

日本人だからこそのファンクを追究する在日ファンク、メジャーデビュー!

希代の名キャラクター、ハマケンにとことん迫った!

ジェームス・ブラウンに最大のリスペクトを表しつつ、日本人だからこその濃厚ファンクを追究する在日ファンク。メジャーデビューアルバムである3枚目のフルアルバム『笑うな』は、シンプルにそぎ落とされたサウンドプロダクションと、迫力ある音圧と言葉の切れ味が抜群。 名うてのミュージシャンによるグルーヴィーなファンクサウンドに乗せるのはあくまでも日本語オンリー。“根にもってます”“ちっちゃい”“断固すいません”といった、曲名にもなっているキラーフレーズが連発され、より冴えわたっていて痛快だ。 SAKEROCKの名物トロンボニストとしてジワジワと認知を高めつつ、2007年に在日ファンクを結成。今や、小柄な体をフル稼働させ、歌って踊れる華のあるファンクヴォーカリストとして急速に進化しているハマケン。ドラマ『モテキ』をはじめとする様々なドラマや映画、はたまたバラエティ番組にも進出。あちらこちらで唯一無二のキャラクター性を発揮しているハマケンに迫った。

(インタヴュー・撮影=小松香里)

──前作のミニアルバム『連絡』からは約2年空いていて、このメジャーデビューアルバムである3rdまで結構空いた印象なんですが、1stの『在日ファンク』からの流れをハマケンさんなりに説明するとどんな感じなんでしょうか?

「まず、1stをスチャダラパーのBOSEさんに聴いてもらったら、『ノリもあるしおもしろいけど、“何が言いたいのか?”っていうことを、“あ、こういうことか!”って結果的に提示しないといけないんじゃない?』みたいなこと言われて。だから、2ndでは突き詰めて、『何が俺は言いたいのか?』『それをどう曲に乗せて昇華しないといけないのか?』っていうのを考えて、『じゃあ完璧に気持ちよくなるまでやろう』と思ってやったんですけど、盛り盛りになっちゃうんですよ、歌詞も、曲的にも。引き算ができないというか……昔SAKEROCKで、自分の曲のタイトルを考えてたときに……“菌”っていう曲があるんですけど、“なんとかの菌”とか、“菌のなんとか”とか、“なんとかのなんとか”みたいに考えてて……『星野(源)くん、いろいろ考えてんだけどいいのがないんだよね』みたいなこと言ったら、『っていうか“菌”でいいじゃん』って言われて。『ハマケン、引き算だよ』って(笑)。『そうか、すごい人は引き算ができんだな』とちょっと感動した覚えがあるんですけど。だから3rdアルバムは引き算をやったって感じですね」

──実際、前作よりシンプルになったんですけど、音の迫力とか切れ味がかなり増していますよね。マスタリングを手がけたのはDave Kutch。

「はい。エンジニアとして今までやってくれてた柏井(日向)さんプラス、SAKEROCKで2枚やってもらってる内田直之さんにもお願いして。まずそれがあると思います。なんかこう、録った曲がもう魔法がかかったようになるというか……フェーダーを上げ下げするだけでは何も変わらない何かというか。その上で柏井さんがお薦めしてくれたDave Kutchさんに……THE ROOTSとか」

──Erykah Baduとか。

「あとBruno Marsとかやってる人に頼んで。『日本語で歌ってるのに外人にやらせると、周波数が違うから何歌ってんのかよくわからなくなるよ』とか言われたんですけど。『納期も守ってくれるかどうかわかんないし』って。そしたら完璧なものがすぐ返ってきて……それで蓋開けてみたら、Dave Kutchが在日ファンクのファンだったらしくて」

──日本の女性が好きで、ネットで検索したら、在日ファンクの映像が何番目かに出てきたという。

「ははは(笑)。そうそう、PVでとにかくかわいい子使いたかったから。俺も『外人に頼むの、どうかな?』とかスゲー言ってたんだけど、みんなが言うからしょうがなく出したら、スゲーよくて……それこそ内田さんのときに思った、魔法がかかって返ってきたみたいな感じで……最高でした」

笑えるものって絶対的にいいものじゃん、みたいなことになってる。それで、音楽って何がいいかわかんないから肩身が狭くなってきてる気がするし。だから、「笑ってんじゃねえ」みたいな

──『笑うな』っていうタイトルを聞いたときは、メジャータイミングなんで、「ナメられたくない」とか、あるいは「こっちはかっこいいと思ってやってるのに笑われて心外」みたいな意味なのかと思ったんですけど、収録されている“笑うな”っていう曲を聴くと、異性とのやり取りが題材になっているので意外だったんです。

「そうですね、なんだろうな……あいつです。今人気ある若い女優であんまり好きじゃない女優がいて。なんかちやほやされてて、めっちゃオヤジにモテそうで……でもやっぱり抗えない自分とかもいて」

──実際会ったことあるんですか?

「ないです、ないです。でもなんか、なんかおまえ調子に……乗ってないと思いますけど……『ちやほやされやがって、ちょろいって思ってんだろう』と思って。やっかみなんですよ(笑)。みんなが『良い』って言うその感じが嫌で……だから最初は、そういうちやほやされるやつを俺は認めない!みたいな、笑ってんじゃねえ!みたいな曲を作ろうと思ったんですけど、でもだんだん性癖の曲になってきちゃったんですよね。考えてるうちに、AVとかエロ画像とか見ると……俺なんか笑われると困るんですよね。笑ってると、なんかこう、余裕みたいな感じじゃないですか」

──必死じゃないっていうこと?

「必死じゃない、もっと必死でよがってほしいみたいな。なんかそれのほうが感じるし、笑えるし……あ、でもやっぱり、あれっすね、いろいろバラエティとか出て、俺やっぱり難しいなと思って。みんなずーっと笑ってんですよ……それが仕事だから。編集としてずっと笑えるようにできてるから。僕出たバラエティ番組とかも、まわりの人が超笑ってるんですよ。その状態って異常だなと思って。仕事だからしょうがないんだけど。で、俺もなんか嘘みてえだなあと思ってそういう挫折感もありつつ……緊張してきちゃうし……だからバラエティ番組に対しては、出させてもらってスゲーなと思いつつも、劣等感じゃないけど、ずっと笑ってんじゃねえ!みたいな(笑)。で、しかも、最近バラエティ番組、超多いじゃないですか。なんだろう、話芸みたいなのをスキルとして真面目なテーマに刷り込んでくるじゃないですか、サッカーの番組とかにもガンガン芸人出て、なんかちょっと……みんなたぶんサッカー真面目に見たいですよね」

──なんか、「そうじゃないんだけど」っていう感じはありますよね。

「そうそう、茶化されるよりも、もっとサッカーの専門的な話して、突き詰めてって突き詰めてって、で、『おもしれーな』ってなれれば一番いいじゃないですか。それだって“笑う”ことになると思うんですけど……なんかその芸人が提供する“笑い”だけが”笑い”になっちゃって、俺はそれがスゲー嫌だなって思ってるんですよね。なんでこんなに芸人がもてはやされるか?っていうと、たぶんコストパフォーマンスがいいというか……この程度の芸人さんをこのギャラで雇えば、確実にこれだけ笑いを取ってくれてお客さんはこれだけ満足したっていう……商品がこれだけ売れたっていうことと同等なんだと思うんですよね。で、売れるものは絶対的にいいものだし、それと同じで笑えるものって絶対的にいいものじゃん、みたいなことになってると思うんですよ。ただ、音楽って全然わかんないじゃないですか、『何がいいのか?』みたいな。だからどんどん肩身が狭くなってきてる気がするし……バラエティ番組に出て、『ミュージシャンやってるんっすよ』みたいな紹介されると、芸人さんとか、『すごいっすね、ミュージシャンの方って』とか一応上げるじゃないですか。絶対そんなこと思ってないはずなんですけど……肩身がすごい狭いんですよ。なんかそういうのもあって……『笑ってんじゃねえ』みたいなことずっと思ってたんですよね。なんかでも、映像の打合せをしてるときに山岸聖太さんに、『笑うな』っていうタイトルにしようと思うんですよねって話をしたら爆笑されて」

──へえ。

「たぶんその、僕が言うと、『俺を笑うな!』みたいな、『“俺は真面目にやってんだから笑うな!”ってハマケン言ってる(笑)』っていうふうにも取ってもらえるし、ちょうどいいかな?みたいな」

──でも、アルバム全体的に怒ってますよね。

「怒ってるんですけど、でも結果的に笑ってもらえたらいいんですけど、こういうバンドなんで、何かおもしろいことやってくれんのかな?みたいなこと求められるんです。で、自分もそれに迎合しちゃいそうなときとかあるんですけど……でも結果的にいいなってものを笑えればいいだけで、べつに笑えるものを作る必要はないんじゃないかっていう思いもあるんですよね」

──そもそもハマケンさんはSAKEROCKのときから、べつに笑わせようとしているわけじゃなくて、追い込まれて、その必死さで笑いが生まれてる、みたいなところがあって。

「だから不思議ですけどね」

──それができるのは貴重だと思いますけどね。ジェームス・ブラウンも、圧倒的で過剰で、だからこそ観ててすごすぎて笑いがこみ上げてくる存在なんだと思うんですけど。

「そうなんですよ、そうなんですよ。そうそう、前、聞いたことあるのは、泣くっていうのは、感動の最上の表現だ、みたいな――『悲しいから泣く』っていうのはとりあえず置いといて、感動したから涙が出るんだなあと思って……だから笑うっていうのも、感動した上でこぼれちゃう何かなんだと思うんですよね。それこそJBの映像とか観てると、結局感動もしてるし笑ってるしっていうのがあるわけで……ボケとツッコミみたいなことだけが必ずしも笑いじゃないっていうか。でも笑わせたり楽しませたりっていうのは重要なんだろうなって思って。在日ファンクでトークに行き詰った頃があって……何、悩んでんだ?って話なんですけど」

──でもMCでどう楽しませるか?っていうのはバンドにとっても重要ですからね。

「そうなんです。『うち、ツッコミがいないよな』とか言って。そしたらギターの仰木(亮彦)が、『だって僕らはべつに芸人じゃなくてミュージシャンなわけなんだから落とさなくていいんじゃない?』って。『バラエティじゃないんだから』って言って、それがグサッってきて。『そっか、俺の中にもやっぱりバラエティ番組っていう刷り込みが充分にあってどっかで落とそうとしちゃう』みたいな……なんか学生とかが合コンとかで、『おまえ芸人殺しだなー』とか『今、笑うとこ』みたいなことを」

在日ファンク

──素人なのに。

「そう、素人がそういうのやってるのと同じで、俺も同じようなことをやってたんだなと思って。素人なくせして落とそうとしてたりとか、ツッコミがどうとか言ってて……だからそういうの関係ないところで新しい関係ができたらいいよなって、その仰木の一言で思ってたんですよね。SAKEROCKみたいにサービスをやっていかないといけないのかな?って思ってたけど、『ちょっと一回やめてみようっていうか、俺らは違うから』みたいな」

──SAKEROCKはやっぱり星野(源)さんの存在は大きいですよね。演劇出身ですし。ひとつの舞台で、どうパッケージするか?っていうイメージがすごくあると思うんですよね。

「ああ、なるほどね。そういうことなんですね。だからミュージシャンが今、幕間にVTR挟んだりとか、コントみたいなことしたりとか。おちゃらけてみたりみたいな……。『そういうのやんないとダメなのかな、俺。できねーな』とか思ってたんですけど、やんなくていいんですよね。だからって、じゃあ俺らは真面目にいくんだってことでもないんだと思うんですよ、違う笑いを求めないといけないというか。でもそういう要素ばっかり求められるんですよね、そのときに……まあ、なりたいはなりたいですけど……『JBがこれやってたからこれしようよ、マントショーやれよ』とか……たぶん要素だけ俺が切り取っても、それこそコントにしかならないというか。それ意味ねえかなっていうのがあるんですよね」

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