VAMPSはなぜこれほどの怒涛のライヴスケジュールを繰り返していくのか――というのがこのインタヴューのテーマだ。たとえば、6月24日に発売されるライヴDVD『VAMPS LIVE 2014-2015』は、同名のツアーを映像化した作品だが、10日間行われたZepp Tokyo公演の最終日、つまり10日目のZepp Tokyoのライヴをまるごと収めたものになる。それゆえのことだと僕は感じるのだが、このライヴは明らかに尋常ではないテンションがみなぎっている。冒頭から徐々にギアが入っていくのではなく、冒頭から100%以上の出力で突き進んでいく――しかもそれはステージ上のメンバーのみならず、オーディエンスもまたメンバー以上にそうなのである。彼らは通常のライヴの物語を限りなく獰猛で美しい、VAMPSのライヴにしかないメカニズムによって塗り替えていく。その様は痛快でしかない。
HYDE、K.A.ZにVAMPSのライヴについて、じっくりと語ってもらった。

インタヴュー=小栁大輔

常にライヴを意識してやってるから。CDは招待状なんですよ、ライヴに来てもらうための(HYDE)

──どのシーンをどういうふうに繋いでいくのかという点まで、ものすごく行き届いているライヴ作品だと感じたんですが。おふたりも編集であったり細かいところにまで携わっていらっしゃるんですか?

HYDE ほぼやってないです。ただ、監督との関係が長いんですよ。これまでに何度も何度もミーティングをしてきましたから、僕らはこういうスタイルだって。まあ、これまで失敗もしてるんですよ。「なんでここ撮ってないんや!」「ああ、もうだめだぁ!」とか。「他にカメラないかなあ」とか言って、ドキュメントカメラで回してるところから持ってきたりして。そういうことを経てるから、監督と僕らは、もうだいぶ通じてるんで、やりたいことをやってくれるんですよ。僕らファンが好きなんで、「ファンのかっこいいところもっとないの?」とか、そういう要求はするんですけど。あとは何も言ってないです。これまでの関係ででき上がってる。

──K.A.Zさん、いかがですか?

K.A.Z 自分たちはステージに立ってるから、観ることができないじゃないですか。だけどこのビデオを観てると、あたかもお客さんのような視点で観れるというのが面白いですね。ファンの楽しみ方や、それぞれのメンバー、自分の見え方、照明の雰囲気だったりとか、空気感が伝わってくる出来になっていると思いますね。

HYDE ファンももうひとりのメンバーみたいな感じで。たぶんカメラの量もほぼひとり分ぐらいの量で出てると思うんですけど。

──ディレクターに具体的な指示をしてしまうと、この自由なダイナミックさは出ないですよね。

HYDE うん、そうかもしれない。たぶん、監督も「僕の好きなようにやれば、メンバーも好きなんだろうなあ」って思いながらやってくれてると思うんです。

──ファンの楽しみ方であったり、監督のスタンスであったり、それぞれの自由な余白を残したまま、みんなでいっぺんに走っていくプロジェクトなんだなあということがよくわかる作品だと思いましたね。そういった大きいコンセプトについてはいかがでしょう。

HYDE やっぱりそのあたりは、主導者がちゃんとしてないと──って僕が偉そうに言うわけじゃないですけど、やっぱり引っ張っていく人がちゃんとしてないと、そうはならないから。散漫になっていくと思うんですね。ファンとの関係にしても、僕らはずーっとZeppをやっているから、こういう形がやっとでき上がったのであって。最初の頃はファン同士で喧嘩も多かったし。「なんでライヴハウスでやるの!?」っていう意見ばっかりだったんですよ。「ホールで、ちゃんとした席で観たい!」っていう意見も多かったけど、ずーっとやっていくことによって、独特な世界観ができ上がって。カメラマンにしてもふわふわしてると、こういうところには行き着けないと思います。やっぱりひとつ目指している方向があって、そこに向かって行こうよという人がいるから、そこに行けるのであって。

──だから、VAMPSのライヴというのは受け取るだけではない、当事者意識のようなものが強いですよね。

HYDE うんうんうん、そうですね。ファンもわかってると思います。自分たちが盛り上げないと、楽しまないと、みたいな。盛り上がらん時とか泣きながら、「ごめんなさい、私たちがちゃんとしなかったから」「今日はここだめでしたね」みたいな手紙が来たりするし。もうほんと、メンバーの感覚ですよね。ライヴで反省して、「頑張ります!」みたいな(笑)。

──はははは。それもこれだけの年月と回数によって繋がれたメンバーのようなものなのかもしれないですね。

HYDE うん。特にZeppはね、すごい回数やってるんで。全国各地で連続公演回数を塗り替えてますからね(笑)。

──VAMPSは最初から1ヶ所でやり続けるというスタンスじゃないですか。今回のこのツアーも、なんばHatchで10公演やって、Zepp Tokyoで10公演ですよね。

HYDE 「ちょっとブッキングしすぎじゃないですか、イベンターの人?」みたいな感じですよ(笑)。Zeppのどこに何があるか、知り尽くしてますから(笑)。

──結果的に10公演というのがジャストのサイズになっているというのが、このバンドの面白いところだと思うんですよね。

HYDE いや、きついっすよ、10公演。

──(笑)そうですか?

HYDE もうええやん、みたいな(笑)。通ってる感じです。まあでも、一緒のところでやる独特の世界観がありますけどね。やっぱり同じ場所で毎日やるから、どんどん音も良くなっていったりとか、普通のライヴではありえない演出もできて。最終日に向かって上がるしかない。そういう意味でも、他のバンドがやらないのが不思議なぐらい面白い。これはありだなあって思ってから調子に乗って今日に至る、みたいな。どんどん増えていく(笑)。そうなるとまた面白いのが、来る人も言い訳できなくなるんですよ。「あ、その日僕、仕事なんですよー」「あ、いいよ。次の日空いてる?」とかね(笑)。

──ははははは。

HYDE 「あ、次の日もだめ? でも、ここまでやってるから、どっか来れるやろ?」みたいな。

K.A.Z 大きい会場だと、1本やって、その日来れなかったら、また来年まで待たなきゃいけないということがあって。もちろん大きいところもいいんだけど、ライヴの熱量はやっぱり、Zeppくらいの会場のほうが感じやすい。今うちらがやりたいのって、音やセットを全体の中で楽しんでもらうことで。そのほうがロックな雰囲気もあるし。

──なるほどなるほど。このDVDはまさに10日目のライヴを収録したものですよね。だからだと思いますが、「いやいやありえないから」っていうことが起きるんですよね。「頭っからこの空気、普通絶対ならないですから!」みたいなことであったり。初っ端からちょっとおかしいじゃないですか。

HYDE K.A.Zくんがですか?

──K.A.Zさんのテンションもですが(笑)、ファンのノリがおかしい(笑)。

K.A.Z なんか、アトラクションを楽しんでるような雰囲気ですね。

──このツアーを語るうえで、当然ですが、最新作『BLOODSUCKERS』が重要なんですけれども。あくまで、僕の私見ですが、聴く人が主役になれるタイプのアルバムですよね。当然突っ走る曲もありますし、バラードもありますし、あとはEDM的な、まさに踊る人が主役のトラックがあったりしますが、長年付き合ってきたファンが、よりいっそうこの空間を楽しむための作品という気がしましたね。

HYDE うんうんうんうん。自分の中では、常にライヴを意識してやってるから。ライヴでどう盛り上がるか、この曲だったらどうやって踊ってくれるだろうかとか、そういうことをずっと想像しながら曲を作ったりするので。基本的には、なんだろう、ただの招待状なんですよ、これは。ライヴに来てもらうための。

どんどん進化しているんですよね。集大成というよりも、やっと本領発揮(笑)(HYDE)

──この作品と、このライヴの空気との関連性についてはいかがですか?

HYDE ファンがどうなるかっていうことは、僕の頭の中だけでは想像できないですね。きっと喜んでくれるだろうなあ、これは面白いんじゃないかなという感じで始めるんだけど、やってみないとわかんなかったりするんで。「あ、こういう形で盛り上がってるんだ!」ということもあって。特に面白かったのは、"BLOODSUCKERS"という曲。これ絶対盛り上がるやろうと思って始めたんですけど、案外盛り上がらなくて。「おっかしいなあ?」って。僕、最初はギター弾いてたんですけどね。1回ギターなしでやってみようと思って、そこから盛り上がるようになりましたね。

K.A.Z カラーバリエーションが豊富な感じがしますね。それぞれの曲のカラーがうまく表現されているというか。妖しい曲には妖しい曲の空間、きらびやかな曲にはきらびやかな雰囲気が創られていて。やっぱりそれは音が呼んできたものだと思うし。その音によって、たとえばプロの照明チームが、この曲にはこういう色だよね、といったように。曲が持っている力がすごく強いというか。そこでVAMPSが、いい方向に舵を取れているというか。これをどういうふうにテーブルに配置しましょうとか、うまくされてるなと思いますね。

──お互い隠すものなしでやってるライヴじゃないですか。

HYDE うんうんうん。

──7年間、VAMPSのやってきたこと、VAMPSのファンがやってきたことの、ある意味での集大成的なツアーになっているなあということも思ったんですけども。そこについてはどう思われますか?

HYDE うーん…………本領発揮というかね。そっちに近いかなあという気がするんですね。

──ああ、なるほど。

HYDE あと、「VAMPSこれからツアーしますよ」って言った瞬間、(K.A.Zが)骨折りましたからね。

──はははははははは。はい。

HYDE (笑)。足の踵が砕けたんですよ。それから、軽やかなステップがなくなったんですよ。

K.A.Z はははは。

HYDE 結構な期間なくなったよな、何年も。それがねえ、今回は遺憾なく発揮されてますね! 「すーげえ跳ぶなK.A.Zくん!」みたいな。もう今ねえ、足音うるさいですもん! 僕、イヤモニして演奏してるのに、ボンッ!って蹴るんですよ、地面を(笑)。

K.A.Z 跳べなかった6年分、跳んどかないとと思って(笑)。

HYDE 今までは逆にちょっと、拘束具をつけられていた状態だったんです。それがなくなって、解き放たれている状態なんですよね。しかも、それまで築き上げてきたファンとの関係とか、磨き上げてきたVAMPSの演奏力があった上でそこに行く。だからどんどん、わかりやすく進化してるんですよね。そういう意味では、集大成というよりもやっと本領発揮の姿をお届けしてます!みたいなところはあるかもしれないですね。

K.A.Z いや、でもまあ、葛藤はありましたね。動きたくても動けないという。どうしても、我慢できない痛みだったりとか。そこで、じゃあどういうふうに見せるかを考えるようになって。演奏をもっと磨こうとか。実際、自分が好きなアーティストとかいろいろ見てても、そこにいるだけでもすごく存在感がある人がいて。それは何が違うんだろうとか、いろいろ考えたりして。その上で、とにかく、自分の技倆を上げないと、そこには到達できないと。それと、今度動きが一緒になった時のパワーってもっとすごいものになると思って。だから葛藤はあったけど、じゃあどうするべきかっていうところのほうが強かったかもしれないですね。やっぱ、うん……もう折りたくないですけどね(笑)。

──でも、ここでのK.A.Zさんはみなぎってますよね。編集も、その流れにドラマを見せるものになっていると思いますよ。

HYDE ほんと?

──だって、跳んでるシーン、多くないですか?

HYDE (笑)やけに多いですよね。

K.A.Z ああ、ああ。

HYDE 新鮮なんじゃないですか、撮ってる側も。今まで撮れなかった画が撮れるから、嬉しいんじゃないですかね。やっぱりライヴ映像って、いかに入り込ませるかだと思うんですね。そういった動きっていうのは、案外重要だと思うんですよ。K.A.Zくんが跳んで着地した時にリズムがパン、って入るのが、入り込むきっかけになるからね。そういう編集がすごい上手だと思います。動きを逃さないという。

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