虹、という言葉から、あなたは何を想像するだろうか。雨上がりの空にかかる光のマジック。美しさと清らかさ、不思議さと明るさ。見る人すべてを笑顔にするような、力強いエネルギー。宇宙まおの新しいミニアルバム『7つのうた、あなたの虹になれ』はまさにそんな虹のような作品だと僕は思う。Jリーグ2部のチーム、水戸ホーリーホックのオフィシャル応援ソングとして書き下ろした“無限の力”、フードフェス「まんパク」のテーマソングとして提供した“夢みる二人”、「小学生読書マラソン」のオフィシャルテーマソングとして生まれた“つよくなる”――このミニアルバムに収録されている楽曲の多くは、宇宙まおが「誰か」、つまり届けるべき相手を明確に思いながら書いた楽曲だ。自分の中で完結するのではなく、初めから誰かと出会うために生まれた音楽。だからその音楽はさらに強く、さらにポップなものになる。自身に訪れた大きな変化について、話を訊いた。

インタヴュー=山崎洋一郎 撮影=kazuyuki miyabe

仲間内でコソコソ、クスクスやってるのが楽しかった。でも今は、これまで関わってくれた全ての人たちの前に立って、堂々と自分の歌を歌っていたい

──まるでベスト曲集のような、シングル級の名曲ばかりの7曲なんですが、これは数多くの曲からセレクトされたからですか? それとも書く曲のクオリティが急に上がったんですか?(笑)。

「クオリティが上がったんです! 制作はずっと続けてきていたので、候補曲自体も増えてはいたのですが、全体の質が上がってきているなと感じてます。

歌詞やサウンドを含めた全体の世界観をまとめる時に、自分でルールを作ることができるようになったんですよね。ルールっていうのは、みんなでゲームをする時と同じで、ひとつの遊びを共有し楽しむために、絶対必要なもので。それはわたしたちを縛るものでは決してなくて、拡散力のあるエンターテインメントを作るうえで、むしろ積極的に意識していくべきものなんだなあと思ったんですよね。それを意識して作ると、曲がリスナーの人にとっても受け取りやすくて、価値が持続していくような存在になっていくのかなあと。その理想が、今回少し形にできたな、という実感があって」

──なぜそんなことが起きたのでしょう?

「『聴いてもらうことを前提に制作する』という意識が身に付いてきたのかな。より多くの人に聴いてもらいたい、その人たちが納得するクオリティに近付けたい、ということだと思います。そのきっかけは、“無限の力”っていう、J2サッカーチーム、水戸ホーリーホックの公式応援歌を書かせていただいたことですね。『音楽からは離れたフィールドで自分の歌を良いものとして認めてもらうにはどうしたらいいんだろう』という発想は、このアルバムを作るにあたっての基本の努力、というところにつながったと思います。“無限の力”を書いた時には、ホーリーホックのサポーターの人たちはどんな歌を求めているだろう?と考えて。それが中身の100%で、宇宙まおらしさとは何かとか、自分らしさを出すっていう部分は、その周りを包むラッピングペーパーくらいの感覚でしたね。唯一言うならば、タイトルの“無限の力”という言葉だけが、自分が感じる『らしさ』かなと思ってます。

もちろん自分の歌を認めてもらいたいという気持ちはこれまでもずっとあって。でもそれに対する答えが、自分の気持ちに忠実に表現をしていくことだと思ってたんですね。内面の表現をより深めていくことだっていうふうに。それも間違いだとは思っていませんけど、だんだん感覚が変わってきました。自分とは違う立場や環境の人たちとたくさん知り合い関わらせてもらってきたなかで『この人たちの前で何を歌うことが一番喜ばれるんだろう?』というようなことを考えるようになって。今までは仲間内でコソコソ、クスクスやってるのが楽しかった。でも今は、その仲間も含め、これまで関わってくれたすべての人たちの前に立って堂々と自分の歌を歌っていたいって感じています。

最初にホーリーホックのスタジアムに歌いに行った時、サポーターやスタッフのみなさんがとてもあたたかくて。あたたかいというかアツくて(笑)。受け入れてもらえたのかもしれない、と感じてとても嬉しかったんです。認めてもらえたのかなって。これまでやってきたことをごまかさずに真っすぐぶつけたら、真っすぐに返してくれた気がして。わたしが持ち続けるべき精神はこれなのかもしれないっていう手応えを感じましたね。“無限の力”のあと、次に制作したのは“夢みる二人”でした。『まんパク』というフードフェスのテーマソングを書かせていただく機会をいただいて。『まんパク』にはそれまでにもミニライヴをしに行かせてもらっていたので、会場の雰囲気は完全にイメージすることができたし、あの場で歌いたい歌の構想も既にあったので、自分の力を試すにはぴったりのチャンスだったと思います。

そのリリースが終わって、今度は夏に向けて、音楽フェスをテーマにしたものを作りたいなと考えました。出演させてもらうROCK IN JAPAN FESTIVALのことを完全にイメージして、“CONTRAST!”を形にしました。それと同時に“つよくなる”も進めていたんですけど、これはホーリーホックを通して知り合った茨城の本屋さんの社長さんとお話しして生まれた歌なんです。本屋さんが主催するイベントで、小学生の読書感想文のコンクールがあって、そのテーマソングとして書かせてもらいました。社長さんの『小学生にもっと本を読んでもらいたい』という想いに共感して、ぜひ歌にしたいと思って。“ハロー、グッドミュージック”ができたのもその時期です。ちょうど今回のアルバムのことを意識し始めたときで、これはアルバムを代表する曲になるんじゃないかなっていう期待感があったので、ゆっくりと育てました。

“そばにいるよ”はアルバムの構想を完全に作ったあとで、バランスを取るように生まれた歌です。“おいしいごはん”は、この7曲のなかで一番最初に作ったものなので、本当に無自覚のなかで生まれた曲ですね。この作品で唯一、といってもいいかもしれません」

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