打首獄門同好会 日本人のDNAを歌え!
──魚介と音楽への愛はこうして繋がった

打首獄門同好会

またしても名曲を生み出してしまった打首獄門同好会。すでにライブでも披露されていて、激しい大合唱を呼び起こしているのが、最新シングルのタイトル曲“島国DNA”だ。海に囲まれた島国で暮らしてきた我々日本人が、主な動物性たんぱく源としてきたのは魚介類。先人たちの血の滲むような試行錯誤の下で確立された多彩な調理法、育まれた奥深い食文化を、渾身の爆音と咆哮で心から讃えるこの曲、清々しい興奮と共に噛み締めずにはいられない。会長こと大澤敦史(Vo・G)に今作について語ってもらったが、食に対するピュアな愛情、ハイクオリティな作品を形にすることへのパッションが猛烈に伝わってきた。

インタビュー=田中大

ラブソングとか、応援歌とかも共感の歌ですけど、『この食べ物好きだよね?』っていうのも共感ですよね

──動物性たんぱく質を主に魚介類から摂ってきた我々日本人として、“島国DNA”は血が騒がざるを得ない曲です。

「ほお。ありがとうございます。その時その時のマイブームで──これまでもうまい棒とかラーメン二郎とか焼き鳥とかについて歌ってきたんですけど、去年、一昨年辺りから一回りして原点に帰ってきたんです。まず、新潟に行って『米が美味いな!』と思って作ったのが“日本の米は世界一”。そして、その後もバンドでツアーを回りながら、地場の海の幸がいろいろあることを感じたんです。『こんな島国って世界にあんまなくて、ひょっとしたら日本は魚介料理先進国なのではないか? ならば次は魚のことを歌うべきだ!』という意識が芽生えて作ったのが“島国DNA”です。」

──4本足の動物のお肉もいいですけど、魚介類は多様性があって素晴らしいですよね。

「はい。年齢と共に食の好みは変わると言いますけど、俺もそのクチで。段々、さばの味噌煮が大好きになってきたんです。あと、ぶり刺しとかも好きになったり、かつおのたたきの魅力も感じてきて。居酒屋に行って『この魚は美味そうだな』とか思いながら、いろいろ幅が広がりました……って何の話でしたっけ?(笑)」

──音楽のお話に戻りましょう(笑)。まあ、とにかく大好きな食べ物の名前を連呼するのって最高に楽しいし、テンションが上がりますよね。

「ラブソングとか、友情の歌とか、応援歌とかも共感の歌ですけど、『この食べ物好きだよね?』っていうのも共感ですよね」

──おっしゃる通り、「共感」のひとつの形だと思います。しかも、好きな食べ物についての気持ちを交わし合うって、ものすごく平和なことですよ。

「よっぽど話に出た食べ物が嫌いな人がいない限り平和ですからね。『魚なんて見たくない!』っていう人でもいない限り」

──打首獄門同好会の音楽って、実は超ラブ&ピースなのかも。

「なるほど(笑)。しかも、こんなにもノンフィクションで歌を作ってる人は、あんまいないと思います。自分が好きだと思ったことを、そのまま歌にしてるので、無理してるところもないんですよ」

──リスナーが作り上げるアーティスト像と実際の自分とのギャップに悩むミュージシャンの話をよく聞きますけど、そういう悩みはなさそうですよね?

「ないですねえ。素直に『この食べ物を歌にしよう』とやってますので。だから『この食べ物を歌にしてください』って言われても『悪いけど、今はまだその食べ物には興味ないな』って突っぱねてます」

時間がなくて地域のものを食べられない時、俺は本当に無念で申し訳なく思う

──会長は、美味しいものに対する情熱が、人一倍強いんですかね?

「どうでしょう? でも、『高知行ったらかつお食いたいだろ?』っていうのは、みんなあるじゃないですか。たまにそういうのに興味がない人もいますが……ウチのベース(junko)のことですけど(笑)。辛い物が大好きで、どこのご当地ラーメンに行っても唐辛子をガンガンかけるような趣のない人間でして。まあ、そういう人間もかつおを食べに連れて行ったりするわけです。藁を使って自分でかつおを焼ける店もあるんですよ。ロマンを感じるじゃないですか」

──いいですねえ。

「そういうロマンを各地で堪能した上でこういう歌を歌うというのは、ハートが入ります。今回の曲で《かつおのたたき》と3・3・7拍子で連呼してますけど、これもハートが入ってますよ」

──《かつおのたたき》って、連呼すると口の中に喜びが溢れる良い言葉だと思いました。

「ね? 心の中で、高知で自分で藁で焼いて食べたかつおがプレイバックするので、歌いながら心が入ります。添えるニンニクはぜひ粗目に切って頂きたい。すり下ろしては頂きたくない(笑)。それに、各地でその地域を感じて帰るのって、ある意味マナーだと思ってるんです。ライブハウスって地域独特な感じってあまりないですし、観光地を巡る時間もない。そうなると、やっぱり食なんですよ。昼飯、打ち上げ、翌日の朝飯──そこで如何にその地域を堪能して帰るか? それは大切なマナーであり、そのマナーを全うして感動したならば歌にすればいいではないかと。我々は非常に理にかなった活動をしていると自負しております」

──せっかく地方に行ったのに、全国どこにでもあるフランチャイズのお店に入る人って信じられないですよね。

「同感です。『正気か? キミは高知でかつおをたたかなかったのか?』と思います。時間がなくて地域のものを食べられない時、俺は本当に無念で申し訳なく思います。ですから各地域のお店に対して、『バンドマンが行きやすい時間帯に営業して欲しい』とも思いますね。その土地に着いてリハーサルをすると、動けるのが15時から17時くらいになるんですけど、その時間に『準備中』のお店が多いわけですよ。しかも、酒のおつまみ的なものだと、なかなか食べにくい。『誰がライブ前にもつ鍋を食べるのだ?』という。おつまみ的なものではない名物を各地域にご用意頂いて、営業時間に融通を利かせて頂きたいというのが、バンドマンとしての切実な願いです」

──そういう熱い想いがこめられた歌を、最高にかっこいいヘヴィロックで堪能できるのも、打首獄門同好会の大きな魅力ですよ。

「そう言って頂けると嬉しいです。我々は歌う時は大真面目ですから。『私たち面白いことしてまぁ~す』というオーラはステージ上では一切出さないです。我々のバンド内での約束事は『我に返らない』。特にレコーディングの時に我に返ると進まなくなってしまいますので、『何を叫んでるのか冷静に考えないでやりきる』という方針です。“島国DNA”も大真面目に《まぐろのさしみ》《かつおのたたき》と叫びきっていますよ」

──《魚魚(うおうお)》《貝貝(かいかい)》《海海(かいかい)》という魂の叫びも、グッときました。

「そこは我ながら気に入ってます。思いついた瞬間、『勝った!』と思いましたから。《魚魚》を《WOW WOW》だと思ってる人、違いますから! レコーディングの時にどうしても《WOW WOW》と言ってるやつがいる気がして『誰だ! WOW WOWって言ってない? 魚魚だから!』と。CDを聴いて頂ければ、全員が《魚魚》と言ってます。《かいかい》も2回目は《海海》ですから」

──はい(笑)。そういえば、歌詞に盛り込まれている料理、《鮭のムニエル》だけ洋食だったのが気になったんですが。

「うーん、なるほど。気になるんですね(笑)。鮭はやはり塩焼きを一番食べてるじゃないですか。でも、その後に来る《さんまの塩焼き》とかぶるので、歌の響きを考慮して4文字の料理法を探したんです。そこで見つけたのが《ムニエル》。とはいえ、天ぷらは敢えて並べてみましたが。あと、『いわしはつみれ? いや、梅煮かな?』というのも悩んだんですよ」

──僕、いわしのつみれが大好きなので、選ばれて非常に嬉しいです。

「ありがとうございます。たまにツイッターで梅煮の派閥を目にすると、『そうだよなあ。そっちもいるよなあ』って思うんです。イカもいろいろ分かれるんですよね。でも、イカの塩辛は素晴らしい発明だと思うので、リスペクトをこめて《イカの塩辛》を選びました」

──隅々までこだわりが行き届いていますね。

「はい。魚もいろいろあるわけじゃないですか。川の魚もあるわけですけど、今回、海の魚で統一しました。実は鮎の塩焼きも好きなんですけど、『ここは潔く海の魚で行こう』と思って『鮎ごめん!』と、涙を飲んでシャットアウト。実家が浜松なものですから、鰻についても悩みました。『鰻のかば焼きは入れるべきだろうか? ……しかし、浜名湖は海水ではない!』と」

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