スコット&リバース、「和」と「わびさび」を極める新作『ニマイメ』のすべてを語り合う

スコット&リバース

Scott & Rivers photo by Yoshika Horita

リバース・クオモ(ウィーザー)とスコット・マーフィー(アリスター / MONOEYES)によるプロジェクト、スコット&リバース。彼らが2ndアルバム『ニマイメ』をリリースした。本作は邦楽と洋楽、ジャンル、時代といったあらゆる垣根を軽々超える誰も聴いたことのないロックアルバムだ。これは間違いなく彼らにしか作れない。その理由は、彼らのスタイルやロック観の根幹を訊いた以下のインタビューを読めば伝わることと思う。なお、今回も取材は日本語で行った(文中の※~※印間のみ英語発言を和訳)。

インタビュー=秋摩竜太郎

いつも即興をしたい。自由がほしい(リバース)

――日本語で取材を受けるのはもう慣れたものですか?

スコット・マーフィー(Vo・G) 慣れたかな。どう?

リバース・クオモ(Vo・G) はい、慣れた。英語より。

スコット 英語のほうが楽でしょ?(笑)。

リバース 英語むずかしい(笑)。

――(笑)改めてなぜ日本語で?

スコット まあここが日本だから。

――なるほど。今回のアルバムは、バンドマンとしてギターと歌で血が騒ぐ感じがあって、日本を含めた世界の歌謡性とアメリカのメインストリームにも通じるサウンドがある。つまり誰も聴いたことのない音楽が鳴ってるなって。

スコット そう言われてうれしい。とりあえず日本語で歌いたいし、邦楽っぽいものもやりつつ、もちろん二十何年前からふたりともアメリカでバンド活動をしてて、それは簡単に捨てられない。けど、新しいこともやりたい。ひとつのアルバムだけどいろんなテイストをやってて。アメリカだとこんなにいろんな曲が入ってるアルバムってなかなかないんじゃない。

――アメリカではバンドが鳴らすのはもっとバンドっぽいものに絞られるでしょうけど。

スコット そうそう。あと今回は1stアルバムよりもうちょっとモダンな感じ。曲によるけどトラックメイカーとコラボレーションしたりもして。

リバース 僕にとってスコット&リバースは実験するところです。スコット&リバースでいろんな試みをして、ウィーザーに新しいアイディアを持っていきます。例えば先週……ノー! 去年、ライブで同期トラックを使いました。先月ウィーザーでも同期トラックを使いました。スコット&リバースの世界はすごく自由がある。

――自由を求めたからスコリバを始めた?

リバース たくさんの理由があります。日本好きです。日本の音楽好きです。日本語好きです。

スコット 日本の女性が好きです?(笑)。

リバース はい(笑)。最初は1曲だけやりたかったですけど、スコットさんとやってすごく楽しかったです。だから続きます。すごく楽しいです。

スコット ふたりともオリジナルソングを日本語で書いて歌いたいって思ってたから、素敵なパートナーと一緒にやったほうがもっと楽しいじゃん?

――はい。今作、本当に世界中の音楽を取り入れていて、“Doo Wop feat. キヨサク(MONGOL800)”はドゥーワップ、“FUN IN THE SUN feat. PES(RIP SLYME)”はレゲエとか。それがスコリバにとっての自由ってことなんだろうと。

スコット 例えばラジオを聴くと、アメリカのラジオ局はしっかり分かれてる。ロックしか流さないところ、ジャズだけとかそういうのばっかりだけど、日本はひとつのラジオ局でいろんなテイストの曲が流れてる。それはすごい素敵だなって思ってて。日本のほうが自由がある感じ。

リバース いつも即興をしたい。自由がほしいです。でもウィーザーの世界はすごく小さい。特定のスタイルだけ。でも僕はたくさん興味がある。だから僕はいろんなスタイルの曲を書きます。ウィーザーでは無理かもしれない曲でも、スコット&リバースならできます。

初めて日本に来たとき、違う言葉で歌うとこんなに違うんだっていうのが衝撃で(スコット)

――日本っぽさを感じる曲もあって、それが“変わらぬ想い with miwa”なんですけど。

リバース 曲は日本の作曲者youth caseと一緒に東京で作りました。日本ではメロディとコード進行を最後まで作って、そして歌詞を作る。でもアメリカではごちゃ混ぜ。

――作る過程に違いがあると。

リバース うん、おもしろい。でもいいメロディができたと思います。

――miwaさんはこの曲に対して「和のメロディを感じる」みたいなコメントをしてましたけど、和っぽさってどこにあると思います?

リバース コード進行はよく展開します。すごく日本っぽい。

スコット たしかに。

――あとイントロのフレーズなんかに哀愁があって、その切ない響きが和の感じにつながってるのかなと思いましたが、どうです?

リバース 切ない、好きです。

スコット 日本人も好きだよね、切ない曲。

リバース うん。BoAの“メリクリ”。

スコット (ウィーザーで)カバーしてたよね?

リバース 初めて歌った日本語の曲で、すごくキュンした。

――キュンする感覚は、それまでのバンド活動では感じなかったもの?

リバース じゃないといいですね(笑)。英語でも切ない好きです。アリスターは?

スコット そんなに切なくない。

――だから切ない日本の音楽に惹かれたんでしょうか?

スコット まあ最初は沖縄の三線の音がきっかけなんだけど、日本語で歌うと響きが全然違う。それが好きで、自分でも歌ってみたいと思って、まさかこんな感じになると思わなかった(笑)。アメリカ人だからずっと英語の曲を聴いてきて、初めて日本に来たとき、もう16年前になるんだけど――違う言葉で歌うとこんなに違うんだっていうのが衝撃で。

――そうか、さっき「実験」と言ってたように、今までと違う刺激に興奮する感覚が根本にあるわけですね。そういう話を聞いてると思うんですけど、日本人にとってロックって、やっぱりアメリカで生まれてイギリスで発展したというか、結局自分たちのものではないみたいなコンプレックスを持ってる気がするんです。でもスコリバを見てるとそんなこと考えてない感じがします。気にするな、好きなように新しいことをやればいいじゃんって。

スコット スコット&リバースで、日本人じゃないからこれできないって思ったことは1回もない。日本人だからロックは……みたいによく言うけど、なんでそんなにコンプレックスを持ってるんだろうっていつも思う。アメリカで「日本人がロックやってる(笑)」みたく思う人は誰もいないのに。

リバース 本当は、アメリカ人も僕の世代はロックについてコンプレックスがある。なぜなら、60〜70年代がすごくよかった。だから僕たち90年代の世代は、※あんなに高いレベルのバンドになんてなれないって思ってた。※

――でも80年代のニューウェイブなんかの流れでロックの力が弱まったところに、90年代で盛り返しましたよね?

リバース ※でもザ・ビートルズに及ぶものなんてないでしょ? ザ・ローリング・ストーンズとかさ(笑)。※

スコット ※そりゃそうだけど。※

リバース ※だから僕たちにもコンプレックスはあったんだよ。※

スコット ※でもそんなになくない?※

リバース ※失望してなかった?※

スコット ※あんまり気にしてなかったよ。※

リバース ※そっか。まあ70年代に育った僕としては、やれることなんて何ひとつ残ってないと思ってたんだ。※

スコット 一応アリスターも90年代だけど(笑)。

リバース ※僕らは92年結成だから。きみたちは95〜96年でしょ? 後輩だよ(笑)。※

――その想いはどう解決したんですか?

リバース ※当時は自分の問題として背負いこんでしまってたけど、今はカルチャーが細分化されていろんなジャンルがあってたくさんのバンドがいる。そういう中でもうザ・ビートルズみたいな絶対的な存在になるなんて不可能だって受け止めてるよ。いつだってでっかい存在にはなりたいけどね。※大ヒットになりたい(笑)。

スコット 大ヒットになったじゃん(笑)。

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