20年選手・PANが語るバンドの現在地とは? 最新作『具GOODグー』に迫る

PAN

1995年結成、大阪を拠点に活動するロックバンド・PAN。メンバー交代をはじめとする幾多の苦難を乗り越え、昨年結成20周年を迎えた彼らが2016年8月3日(水)にミニアルバム『具GOODグー』をリリースする。本作、まず聴いていて楽しい。そして遊び心とメッセージ性を両立させたその歌は、「笑い」を超えて聴く者の心を撃ち抜く。時代に迎合するのではなく楽しみながら乗りこなすその姿勢は、多くのリスナーへ勇気を与える。そんな最新作、さらにはバンドの現在地について、川さん(Vo)とゴッチ(G)に訊いた。

インタビュー=秋摩竜太郎

その場で楽しいライブをゼロから作っていく。それができた時に自分らの空気になって、アウェイであってもホームの雰囲気になるのかなと。

──昨年結成20周年を迎えましたが、改めてどんな1年となりましたか?

川さん ベストアルバムのリリースから始まり、毎月20日にイベントをやったんです。毎月新しい企画を考えながら、その中でベスト盤のツアーもしつつ、新作も作りながらだったので充実した1年でしたね。こっちが発信していけば楽しんでくれる人がおるんやなというのを感じられました。しんどいとかではなく「次はどんなことしてやろう?」、そんな感覚でしたね。

ゴッチ 集大成的な1年でしたけど、21年目の今年につながるものだったなと思います。あれだけ忙しくやったので聴いてくれる人が増えたのも実感していますから、良い意味で駆け抜けたなと感じますね。昔の曲をやる機会も多くて、そういう歌を演奏すると当時の記憶が蘇ってきて。ただ、それを見ているのは今の自分なので、曲がまた新しく変わる感じもして、やってておもしろいなと思いました。まだまだ発見があるなと思いますね。

──今のPANはアウェイをホームに変える力があると思うんですが、ご自身ではどう感じます?

川さん いろんなタイプのバンドがいるし、好みも人それぞれだと思うんです。僕らのことが目当てじゃないお客さんの場合、初めは興味を示さなくて自分らの空気になっていないなと感じるんですけど、目の前でおもしろいことが起きるとみんな共通して笑ってくれる。「かっこいい」と思うのは人それぞれ好みがあるけど、「おもしろい」ことが起これば多くの人が笑うんちゃうかなというのがあるので、その場で楽しいライブをゼロから作っていく。もともとあることをやるのではなくて、そこで巻き起こす。それができた時に自分らの空気になって、アウェイであってもホームの雰囲気になるのかなと。

──そう気づいたきっかけは?

川さん 20歳ぐらいの時はそんなに喋るバンドじゃなかったんですよ。例えば東京に来てライブをするとあんまり相手にされないなという感覚があったので、とりあえず喋ってみようと。そうしたら僕も喋るしゴッチもダイスケ(B)も喋り出して。するとおもしろいと言ってもらうことが多くなって。

ゴッチ 定型文じゃないMCがその人のおもしろさやと思っていて。おもしろい人のライブは観ていておもしろいし、後ろのお客さんまで届く気がするんですよね。

川さん でも30歳を超えたぐらいから、MCに対してより考えるようになりましたね。それは歌詞においてもそうなんですけど。僕らは日本語でやっているので、言葉遣いは大事にしたいし、そこを少し変えるだけで伝わり方も変わったりするので。

──上の世代、例えばAIR JAM世代は英詞のバンドが多かった中で日本語にこだわるのはなぜでしょう?

川さん 英語でやりたいと思った時もあるんですけど、英詞を書く能力がなかったので。日本語って野暮ったいという感覚も昔はあったんですけど、やっぱり日本語じゃないとおもしろくないと思うんですよ。だから今は日本語しか考えられないですね。

自分らじゃなくならんかったらOKというか。新しいものを入れても、何か自分らの要素を足してやりたいなとは思います

──『具GOODグー』についてですが、コンセプトはありました?

川さん 大まかに言うとこれまでメロコアが多かったんですけど、今回はライブでより一体感を生み出せるような曲にしたいなと。大きなリズムの中でどんなおもしろいことができるかなというところに挑戦しましたね。

──制作は昨年からじっくりという感じですか?

川さん いや、主に今年に入ってからですね。ホンマは時間的な余裕がほしいですけど、作る時の感覚はそれやとあかんと思うんです。歌詞を書いたり曲を作る時、家で静かにやるというよりは汗をかきながら、ちょっと暴れながらやっています(笑)。ライブのテンションで書きたいですからね。

──1曲目の“ギョウザ食べチャイナ”は餃子の王将とコラボレートしていて歌詞に店名も登場しますが、初めからそのお話があったんですか?

ゴッチ 実は後付けなんですよ。

川さん レコーディングでは「大丈夫かな?」って感じで歌ってました。ギョウザが食べたいなという気持ちを素直に表現したんですけど、それを餃子の王将さんの本社に持っていったら、「おもしろい!」と言ってもらえたので良かったです(笑)。

──文字通りのギョウザ賛歌ですが、なぜまたギョウザだったのですか?

川さん 今年僕の中で流行ってたんです。ギョウザとホットドッグにハマっていて、曲を聴いた時に中華風のニュアンスを感じたのでピンと来ました。

──演奏は、リフやキメで各パートが合わさった時のエネルギーが凄まじく、感情が伝わってくる音だと感じました。アレンジはどのように?

ゴッチ 流れに身を任せるというか、頭の中で鳴るものを自然と拾っていった感じですね。

──特にギターは今までにない、躍らせるプレイですよね。

ゴッチ PAN史上初めてワウを使いました。やってみたら楽しかったのでもっと早く使えば良かったなと思いましたけど、この曲だから使おうと思ったところはありますね。

川さん 高校から一緒にバンドをやっているので、「こいつワウ使ってんで(笑)」みたいな、「ギタリストやん(笑)」って感覚がありましたね。昔B’zが好きだったので、松本(孝弘)さんみたいだなと。ツアーになったらもっとワウを踏む場面を観れるでしょうけど、それは僕も楽しみですね。

──結成21年目とはいえどんどん新しいことをやっていこうと。

ゴッチ こういうことはやらないでおこうとかは全然思わないですし、新しいもの、おもしろいものを取り入れていこうという姿勢はありますね。

川さん 自分らじゃなくならんかったらOKというか。新しいものを入れても、何か自分らの要素を足してやりたいなとは思います。

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