アイスランドから現れ、早くから海を越え欧米で人気を博していたオブ・モンスターズ・アンド・メン。2013年のフジロックでは、ライヴの場でオーディエンスを一発でつかめるという新世代バンドの本領を発揮、初めて彼らを観る日本のオーディエンスも虜にしただけに、今年のフジロックに出演すると知り歓喜に沸いたリスナーも多いのではないか。しかも今回のフジ出演は、セカンド・フルアルバムを携えての来日となる。
祝祭的なサウンドでその場をカラフルにハッピーに包み込むOMAMだが、今作『ビニース・ザ・スキン』は、彼ららしい牧歌的なメロディやナンナの深みのあるヴォーカルはそのままに、新世代スタジアム・バンドとしての役割をきっちりと果たす壮大なアルバムに仕上がっている。とは言え、アイスランドという出自も手伝ってか、気負ったところは一切なく、あくまでもライヴ空間をそのまま焼き付けたようなスケールの大きさに、リラックスして取り組んでいるのがいい。制作の背景をはじめとして本作について訊いたナンナとのインタヴューをお送りする。
(インタヴュー・文=羽鳥麻美)
ナンナ・ブリンディース・ヒルマルスドッティル(Vo/G)インタヴュー
──楽曲制作におけるインスピレーションについて
「ときと場合によって違うけど、本当にありとあらゆるところからインスピレーションを受けてるわよ。誰かが何気なく言った一言だとか……それがなんとなく印象に残って、自分の心の中である種の感情が芽生えたりとか……あと車を運転してるときとかもいろんなアイディアが思い浮かぶ(笑)。夜車を運転しながら、疲れてボーッとしてるときに自分でも気づかなかった感情が生まれて、そこから曲が生まれたり。あと新しい楽器に触れるだけでもインスピレーションを受けるし。一体どんな音を奏でてくれるんだろう?って、すごく好奇心をそそられるのね……そう、好奇心が自分にとって一番のインスピレーションかもしれない」
──世界デビュー後、ツアー経験を通して得られた発見について
「それまではせいぜい家の近所でしかライヴしたことがなかったのに、それがいきなり世界中をツアーしてまわるようになるなんて……何から何まで初めての経験で、見るものすべてが驚きだったわよね……それでも、違うんだけど同じっていう、それが発見だったかな。もちろん、土地や国によって違いがあるんだけど、やっぱりどこかで繋がっていて、それがすごく不思議な感覚だった。全然知らない土地なのに、地元で見たのとまったく同じような風景が広がってたりして、世界ってそうやってお互いに影響し合って呼応し合ってるんだなって。たとえばカナダとか、建築もヨーロッパ風で、まるでヨーロッパにいるような錯覚に陥ることがあって。その点では日本は衝撃で、初めてどこかで見た風景って感覚が起こらなかったの。本当に全然知らない世界に足を踏み入れちゃったみたいな感じ(笑)、うわー、本当の外国にいるみたいって(笑)、見るものすべてが珍しくて、本当に新鮮で楽しかった」
──『ビニース・ザ・スキン』のサウンド面での挑戦について
「やりたいことはいろいろとあったんだけど、とりあえず片っ端からやっていった感じかな。最初にやりたかったのは、いろんな新しい楽器に挑戦することで、今まで使ったことのない楽器を集めて音を出したりして……最初はそれで盛り上がってたんだけど、それだけじゃやっぱり続かなくて(笑)。でもまあ、そうやっていろいろ試していったってとこはあって。今回のアルバムのサウンドがどうやって出来たか紐解いていくと結構面白いのよ。スタジオの中でただ音を出して遊んでたみたいな感覚で作ってたり。小型のキーボードとか、声の出るおもちゃから録った音を逆回転して、上からエフェクトを重ねたり、本当に遊びみたいな感覚で。それが最終的に曲にどう結びつくとか一切考えない、ただ純粋に音で遊んでただけなのね。遊びも真剣にやってたら、もしかしてこれは当たりっていう音に出会えるかもしれないっていう精神で」
──OMAMの音楽性について
「自分達の音楽を説明しようと思うと、いつも言葉に詰まって、うまく答えられたためしがないの……人から『どんな音楽を作ってるの?』って訊かれても、『うーん、自分にもよくわかんない』って答えちゃう(笑)。いろんな要素が入り混じってできているというか、メンバー全員とも音楽の趣味とかルーツとか微妙に違ってたりするしね。だから、自分達の音楽がどのカテゴリーに入るのか、自分達自身にもわからないんだよね」
「フォーク・ミュージックやフォーク・バンドからも影響を受けてるし。私達の音楽のベースって、やっぱりシンガー・ソングライター系なのよね。たいていアコースティック・ギターとヴォーカルから曲が生まれることが多いし。そういう意味では、やっぱりフォークが自分達の音楽のベースになってるんでしょうね。で、その上に色んなおまけがくっついているという(笑)」
──前作『マイ・ヘッド・イズ・アン・アニマル』の成功による期待やプレッシャーについて
「期待やプレッシャーを感じることもなくはなかったけど、できるだけそういうことについて考えないようにしてたの。それはアルバムを作ってるあいだもずっと意識していたことで……たしかにプレッシャーはある、でも、そこで作品が左右されたり、自分達が流されたりしないようにしようって。余計なものを作品に持ち込まないようにね。前回のアルバムはプレッシャーがまったくない中で作ってるから、今回もその雰囲気を大事にしたかったの。完全にまっさらで自由な状態に身を置いて作りたかったの。誰にも何にも邪魔されずに、自分達がやりたいようにやりたかったから」
“Little Talks”(『マイ・ヘッド・イズ・アン・アニマル』より)
VIDEO
──『ビニース・ザ・スキン』における表現の深化について
「テーマというほどでもないんだけど……前よりももっとパーソナルな内容について歌っていきたいって気持ちが前よりも強くなってたかな。自然にそうなっていったのよね。前回のアルバムのときは、自分ともう1人のシンガーのラッギの2人で歌詞を書いてたんだけど、2人で曲を書くのは初めてだったから、お互いに探りながらというか、一応曲の中で言いたいことは言ってるんだけど、あえて内容をぼかして伝えてたりね。今回はそういうのを一切抜きにして、最初から本音でぶつかり合おうって決めてたし、それが自分達にとって一つの挑戦だったの。最初から遠慮せずに自分の思ってることをそのままの形で伝えるっていう。私自身は、昔からそういう表現に惹かれてるのね。ありのままの感情をそのままぶつける、みたいな。そこから感情的に繋がっていくことができるから……むき出しの感情から、本質的に繋がっていくというか」
“I Of The Storm”(リリックビデオ)
VIDEO
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『ビニース・ザ・スキン』 BENEATH THE SKIN
2015年6月10日(水)発売
品番:UICU-1265 | \2,646(税込)
クリスタルズ/ Crystals
ヒューマン/ Human
ハンガー/ Hunger
ウルヴズ・ウィズアウト・ティース/ Wolves Without Teeth
エンパイア/ Empire
スロー・ライフ/ Slow Life
オルガンズ/ Organs
ブラック・ウォーター/ Black Water
サウザンド・アイズ/ Thousand Eyes
アイ・オブ・ザ・ストーム/ I Of The Storm
ウィ・シンク/ We Sink
バックヤード/ Backyard
ウィンター・サウンド/ Winter Sound
ブラック・ウォーター(クリス・テイラー・オブ・グリズリー・ベア・リミックス)/ Black Water (Chris Taylor of Grizzly Bear Remix)
アイ・オブ・ザ・ストーム(アレックス・サマーズ・リミックス)/ I Of The Storm (Alex Somers Remix)
オブ・モンスターズ・アンド・メン Of Monsters And Men
2010年、アイスランド・ケプラヴィークにて結成。メンバーはナンナ・ブリンディース・ヒルマルスドッティル(vo/g)、ラグナル“ラッギ”ソウルハッキソン(vo/g)、ブリニヤル・レイフソン(g)、アルナル・ロウゼンクランツ・ヒルマルソン(ds)、クリスチャン・パウッキ・クリスチャンソン(b)。ラジオをきっかけに2011年のデビュー・シングル“Little Talks”が話題を集め、米ユニバーサル・リパブリックと契約、世界デビューを果たす。本国アイスランドで2011年にリリースされ1位を獲得したデビュー・アルバム『マイ・ヘッド・イズ・アン・アニマル』(世界リリース2012年)は、US、UKをはじめ各国アルバム・チャートでもトップ10入りのヒットを記録している。2015年6月10日にセカンド・アルバム『ビニース・ザ・スキン』を日本リリースし、7月にはFUJI ROCK FESTIVAL '15への出演も決定している。
提供:ユニバーサル ミュージック
企画・制作:RO69編集部
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