ふくろうず 自然体から生まれた最新作
『だって、あたしたちエバーグリーン』を語る

ふくろうず

ポップさの中にある不思議なねじれ、ゆるさの中に見え隠れする寂しさ、そんな独特のフックがふくろうずの魅力なのだが、最新アルバム『だって、あたしたちエバーグリーン』が放つ瑞々しさには驚いた。美しいメロディに彩られたこの作品は、大のザ・ビートルズ好きとしても知られる内田万里(Vo・Key)のソングライティングセンスがキラキラとまばゆい光を放ち、まさに「エバーグリーン」と呼ぶにふさわしい一枚。アルバムとしては2014年の『マジックモーメント』から約2年ぶりとなるこの新作について、メンバー3人に話を訊いた。

インタビュー=杉浦美恵

なんか、かわいそうじゃないですか(笑)。結構いい年してんのに、「あたしたちエバーグリーン」って言ってるのって(内田)

──少し前に、今作に関するコメント動画で「結成当時のフレッシュな気持ちを忘れたくないなという思い」から、このアルバムを作ったと言っていましたよね。そう思ったきっかけは?

内田 前作を作り終えて、次はどういう作品にしようかなって思ったときに、原点回帰って言うと大袈裟ですけど、一番最初の気持ちに一度立ち返ってみるのがいいかなって思いました。そもそも私たちはサークルが一緒で、最初は遊びでバンドを始めて、さすがに今は遊びにはならないですけど、その頃の気軽な雰囲気を忘れたくないなっていうのがありました。あと、曲は私が作っていて、長くやっていく中で、『もっとメンバーひとり一人の個性を』みたいなことを思っていた時期もあったんですけど、今回はもうちょっと私自身の要素を凝縮したような作品を作っても面白いかなと思って。

──前作のフルアルバムが『マジックモーメント』、その後のミニアルバムが『ベイビーインブルー』と、わりとシンプルなタイトルが続きましたが、今作のタイトルを「エバーグリーン」という言い切りではなく、『だって、あたしたちエバーグリーン』としたのは?

内田 ある程度ひっかかりのあるタイトルにしたいと思ったのと、あと、けっこう長くやってるバンドがこういうタイトルをつけたら面白いし、ちょっと悲しい感じも出ていいんじゃないかなと。なんか、かわいそうじゃないですか(笑)。結構いい年してんのに、『あたしたちエバーグリーン』って言ってるのって。

安西卓丸(B) 真顔で『エバーグリーン』だけ言ってたら、ちょっとヤバイし。

内田 そう、ちょっとツライ(笑)。

安西 このタイトルにすることによって、単純に「エバーグリーン」って本気で思っているだけじゃないっていうか、そのニュアンスもこめられたかなって思ってます。

内田 そうそう、100%本気だと思われても困るっていうか(笑)。本気の気持ちももちろんあるんだけど、もう少しシニカルな感じもあって。

──でも、アルバム全体は本当に「エバーグリーン」という言葉がぴったりな素敵なメロディが満載で。内田さんのボーカルも、前作よりぐっと感情に訴えかけるような歌い方になっていますよね。

内田 そうですね。前よりいい感じで歌えたと思います。そこも意図的に、高校生の時にカラオケで歌ってたような気持ちに、なるべく近づけられるといいなと思いました。長くやってく中で理想ができてきてしまって、「こういうふうにありたい」とか、何でも強く思ってしまうほうなんですけど、最近は、もともと自分が持ってたものから離れてしまったような感覚もあって。だから恥ずかしいけど、素直にもともとの自分をもう少し出せたらなっていう思いもありました。

──その変化は石井さんも感じていました?

石井竜太(G) 徐々に変わってきているなあっていうか、意識的に変えてきてるなっていうのは、やってて感じてましたね。

──石井さんは最初、「エバーグリーン」という言葉から、どんな風景をイメージしましたか?

石井 自分の中では断崖絶壁です。海とかじゃなくて荒野系の。アルバムに入っている“エバーグリーン”っていう曲からのイメージですけどね。未開拓で広い荒野の風景。

内田 断崖絶壁?(笑)。あ、でも石井が言ってることもちょっとわかる。“エバーグリーン”は断崖絶壁っていうか荒野みたいな、世界が終わりそうな雰囲気で、緑はないんですよね。

──確かに、この曲のイメージだとそうですね。

内田 風景はわりと荒野みたいな感じなんですけど、そこで戦おうとしている若い人たち、みたいな。何かやってやるぞみたいに思っている心、みたいなイメージはあります。

安西 そういうイメージもありつつ、やっぱり僕は今回のアー写(白い花に囲まれたベンチに3人が座っている)みたいなイメージもすごくあって。大島弓子さんの漫画みたいな。口で説明するのはすごく難しいんですけど、暖かさの中に寂しさもあって、単純に手放しにハッピーっていうわけではないっていうか。

出したい雰囲気が出せれば、それが仮に下手でも全然いいんじゃないかって、堂々と胸を張って言える心境になれました(内田)

──安西さんが言うような「エバーグリーン」という漠然とした心象を、サウンドで表現するのって実はすごく難しいですよね。でも今回それがじわっと伝わる音になっていて。それは3人の演奏力が高くなったからなんじゃないかと思ったんですが。

内田 いやいやいや(笑)。

安西 むしろ演奏力というところにフォーカスするのを完全にやめるっていうか、うまく演奏しようという気持ちをどれだけ捨てられるかっていうところをすごく大事にしました。

内田 何をもっていい演奏と言えるのかっていうのはすごく考えましたけどね。テクニカルに、指がすごく速く動くとか、BPMをしっかりキープして弾けるとか、もちろん最初はそんなの気にしてなかったんですけど、やっぱりバンドをやっていくうちに、うまくならなきゃって思った時期もあって。でもテクニックは必ずしも一番大事なことではなくて、出したい雰囲気が出せれば、それが仮に下手でも全然いいんじゃないかって、言い訳ではなく、堂々と胸を張って言える心境に今はなれました。もしかしたらそれが演奏に出て「エバーグリーン」というテーマが表現できているのかもしれない。だとしたら本当によかったなと思います。

──全編を通して、好きなミュージシャンへの愛やリスペクトも溢れていますよね。ザ・ビートルズやダイナソーJr.やピクシーズまで。

内田 あ、私の好きなのはそうですね。この人(安西のほうを指差して)のレイジ(・アゲインスト・ザ・マシーン)への愛は入ってないですけど(笑)。

安西 いや、実はこっそり入ってたりするんですよ。

内田 レイジは入ってないです(きっぱり)。

安西 マインドですよ、マインド的な話。

──石井さんの好きな要素は入っていますか?

石井 僕は、↑THE HIGH-LOWS↓が好きなんですけど、シンプルなコードを弾く時は、それがギターに出てるかなと思います。全体的にロックっぽい要素みたいなものは、影響を受けた音楽から出てると思います。

──今回“Minority”っていう曲もありますが、これはグリーン・デイから?

内田 ああ、そうですね。グリーン・デイのあの曲が好きなので。私が作曲してるので、やっぱり私が好きなものが出ますよね。

──この曲は転調しまくりで、ギターもフリーキーで面白いですよね。

石井 スタジオでみんなと合わせてる時の音も使っているので、自然な感じが出てるんだと思います。バンドのノリというか、雰囲気がわかりやすい曲。自然なノリでやっちゃったみたいな。

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