自我を貫く10thアルバム『ガガガを聴いたらサヨウナラ』インタヴュー

結成から17年、昭和的な蒼くささと歌謡テイストのパンクを貫いているガガガSP。機関銃から放たれる弾丸のように言葉を連射し、生きるうえでの「悲喜こもごも」や「人生訓」を歌ってきた彼らが、10枚目となる最新アルバム『ガガガを聴いたらサヨウナラ』では「これが俺たちだ!」「俺たちのパンクを聴け!」と自分たちを声高々に表現している。どう転んでも、これがガガガSPなんだという開き直りと、バンドの変わらぬ生き様が今まで以上に表立った痛快作。より多くの聴き手の感性を乗っ取ってやろうという意思はどのように湧き起こったものなのか、コザック前田(Vo)、山本聡(G)、桑原康伸(B)の3人に話を訊いた。

インタヴュー:石井彩子

コザック前田

「『これだけのことをやってきたぞ』っていうのと『こんなことしかできませんでした』っていうところの共存。『おら~!』って出していても人生の敗北者みたいな感じというか」

――今回のアルバムを聴いてまず思ったのが、「自己主張がすごいな」っていう。

コザック前田(Vo) ふははははは!

――「俺たちの音を聴け!」っていう意思を節々から感じて。パンクの衝動のなかに昭和歌謡的なテイストを盛り込んで、人生の悲喜こもごもを歌って聴かせるところは変わらないんですが、今回のアルバムの音や歌詞には「自分たちを表現するぞ」っていう勢いのある訴えを強く感じて。

山本聡(G) その感じは絶対やりたいなあと、アルバム作る時に確かに思ってましたね。メッセージ的なところとか、前面に迫ってくる感じっていうんですかね。音楽聴いていてもそういう曲とか好きなんで、そういうのがかっこいいと自分で思ってて。

――なるほど。10枚目の集大成じゃないですけど、そういった認識はありました?

山本 10枚目っていうのもでき上がってからわかったことなんですよ(笑)。

コザック前田 あとから考えたら「あ、10枚目や!」って(笑)。

――そうなんですね。「10枚目だからこその俺たちの主張」なのかと深読みしてました(笑)。

山本 そう聴いていただいて有り難いです(笑)。

コザック前田 僕なんか野球が好きやったりするんですけど、たとえば選手のヒーロー・インタヴューでも「こういうこと言わなあかん」みたいなことになってくるわけよ。

山本 型にはまったみたいな。

コザック前田 そうそう。自分がしたプレーで、たとえばホームランでも何でもいいんですけど、それで勝ったりしたんやったら「見たか! 俺のプレー」っていう人もいてもいいんちゃうかなって。「みなさんが応援してくれて」って、それはわかってるんです。でも「見たかー!」っつって、あかんかったら客にボロカス言われるような、そういう幅を持っておきたいなって思うんすよ。

――「俺たちはこれだけのことをやってきたぞ」っていうような?

コザック前田 「これだけのことをやってきたぞ」っていうのと「こんなことしかできませんでした」っていうところの共存が(笑)。「おら~!」って出しても人生の敗北者みたいな感じというか。

山本 それは曲の節々に表れてます、俺らの(笑)。

コザック前田 完全に敗北してる感じあるよね。

山本 世間様に恨みでもあるのかっていう。ちょっと負けた感はあります。

桑原

「10代の時の負けた感みたいなのを“くそくらえ節”ではやってたり。『まだ言うてんのか?』って感じですけど(笑)」

――(笑)今回は恨み節っていうよりも、“晩年の青春”の「老いてなお」みたいなものとか、“くそくらえ節”の《なめられてたまるかだ》の歌詞とか、自分たちを鼓舞していくような歌詞があるのは、そういう負けた感からの反動とか?

桑原康伸(B) 10代の時の負けた感みたいなのを“くそくらえ節”ではやってたり、「まだ言うてんのか?」って感じなんですけどね(笑)。30超えても消えないんですよ。

全員 うははははは!

桑原 「よっぽどやなあ」と(笑)。今考えたらそんなに悪いもんじゃなかったなあと思うんですけど、あの頃はすごいドロドロした「クラスメイトみんな嫌い!」みたいな、その敗北感みたいなのは30超えてもまだ感じてしまうんです。捻くれてるから。そういうものを1曲にしてしまおうみたいなのはありました。

――捻くれてて、「人生の敗北感」がじわっと曲に滲み出てくるから、「一般的なパンク」とは違うガガガSPみたいな、そういう立ち位置に存在し続けることができるってこともあるんじゃないですかね。

桑原 ああー。

山本 でもなるたけ擦り寄りたいなとは思ってるんですよ。

コザック前田 これがなかなか乖離が激しすぎて(笑)。

山本 届かない国境みたいなのを目の前にバシッと引かれて。それはでもバンド始めた頃からずっとあるんですよ。

――でもそういったものがバンドの個性ってものになりますし。

山本 そこがたぶんガガガSPの良いとこでもあると思うんですけど、たぶん俺たちのストレスにもなってるっていう。難しいなと思います。

コザック前田 過剰にサービスをせんと他の人と同列に並べると思えてなくない?

山本 それはあります。思ってもないのに人の悪口言ってみたりね(笑)。

全員 ふははははは。

――(笑)それが今回のアルバムのサウンドの勢いに繋がっているところもありますか?

山本 僕的には「純粋にかっこいいものを作ろう」と思ってやった結果がそういうふうになってて。「この4人でかっこいい曲に仕上げるんやったら、この方向性で、こういうメロディで」みたいな考え方で、バンドには曲を持っていってるんですけど、そしたらおっしゃられたような状況になってて、「あ、そうやったんや!」って今気付きました(笑)。

――曲を持っていった時のその方向性っていうのは?

山本 その時思ってたのは、「関西」で「下町」で「うるさい」って感じです。で、音はパンクで、言葉はちょっと汚くて、でも最終的には情けなく終わるみたいな。それが俺が考えるカラーなんですけど。

――そういう独自のカラーを持ちながらも、タイアップ曲では歌詞で「俺たち寄り添うこともできるんですよ」っていうことを前回の『ROCKIN’ON JAPAN』のインタヴューで言ってたじゃないですか。でも今作は、ガガガSPの自己をとことん貫いていますよね。

山本 ありがとうございます。今回のアルバムでガガガSPをやり切った感が自分的にはあって、だからこそ思うんかもしれないですね。寄り添ったものを頑張って作ってしまってたら、そういうふうにはあんま思わないんじゃないかな。

コザック前田 そうだね。無いものねだりなんかなと思うんですよね、自分でも。

桑原 10年以上やってきて必死に作ったらこんな感じになるんでしょうね。

コザック前田

「ガガガSPはええ曲できればええっていうわけでもないんです。ガガガって感じを出すのはすごく難しい」

――さっきは10枚目ってことに気付いてなかったって言ってましたが、やっぱり意味があると思うんですよね。このタイミングだからこそ、このアルバムができたと。

コザック前田 それは自然とあると思いますね。ただ、自分で自分の打ったヒット数を数えてないのと一緒のようなもので、自分で自分の作った曲数を数えてないみたいなところもあるにはあるというか。でも打っていく毎に気付くことは絶対あるわけで。ガガガSPは、ええ曲できればええっていうわけでもないんですよ。自分的にはガガガって感じを出すのはすごく難しくて。何て言ったらいいのかな。これはね、自分のなかでの感覚でしかなくて、ライヴとかでやった時に「これは絶対はまるやろ」みたいなののはまり度合いっていうのがあるんですよ。ギターで弾き語ってライヴの情景が浮かぶか/浮かばないか、みたいな。

桑原 俺のなかでは前田さんに、はまるか/はまらないかみたいなのがありますね。気持ちよう歌ってほしいし。でも「これ前田さんっぽくないな」と思うものでも一応出してみるんですよ。逆に「歌ってもらったらどうなるのかなあ」みたいな。そういうおもしろさはありますけどね。

――まだ見たことのないガガガSPを出していきたいっていう。

コザック前田 両方あるんですよね。「ここは外せないな」っていうのもあるんですよね。新しいものをするということは前のものを多少削らないといけないので、そのへんはちょっと難しいかなと思うんです。

山本 すごく遊ぶんやったら、すごくベタなことをやらないと、ちょっとしんどいなあぐらいなんはみんな思ってるのかな。

――ベタなことで遊びつつも、曲には「ガガガSPのパンク」っていうものを今まで貫き通してきた自負も入ってますよね。

コザック前田 そうですね。でも作品って放ったボールみたいなもんで、人がどう思って聴くかがすべてやと思うんですよ。だから自分がどうこう主張するんじゃなくて、強い言葉を放ってそれに対して嫌悪を示すのか、好意を示すのか、それはもう相手のものになってるのでどうなっても仕方がないなと思ってるんですね。だから投げるとこまでは思クソ投げるんですけど、投げたあとはどれをお客さんがよしとして、どれをよくないとするのかはもう自由かなと思ってるんですね。ただ、「とりあえず強いボールを放る」って思ってて。「こういうふうに聴いてください」とか、「こういう意味が詰まってます」とか何もないです。

↑TOPに戻る

  • 1
  • 2
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする