EVERLONGが語る地元・名古屋への愛、そしてポップに弾けた最新作への思い

Eve

名古屋に拠点を置き、地元のシーンを牽引しながら精力的に作品リリースやライブを展開してきたEVERLONG。結成当初はメロディックパンクの系譜を汲みながらも、その音楽性は徐々にオリジナルなポップネスを内包したものへと変容していき、最新作『willco』では、大胆にシンセ音を導入するなど、また新たなバンドの魅力を開花させている。この7曲入りのミニアルバムで、EVERLONGが表現したかったこととは何なのか? また、バンドとしての今後のヴィジョンも、メンバー全員に語ってもらった。さらなる飛躍を期待させる3ピースロックバンドの本質に迫る。

インタビュー=杉浦美恵

「EVERLONGってこういうバンドだよね」って思ってもらえる音楽を作っていこうと。そこから音楽性は極端に変わった

──EVERLONGは、もともと大学の軽音サークルで出会った3人で結成したということですが、当初はどういう方向性を目指していたんですか?

Yu-ta(Vo・G) 一番最初はやっぱりメロディックパンクですよね。当時、ライブ出演に誘ってくれた先輩たちはガチガチのハイスタ世代で、僕らは当時は何もわからない状態でスタートしたこともあって、まずはそこを目指そうと。勢いのある英詞と勢いのある2ビートっていうのをベースに曲を作っていたんです。だから一番最初にリリースした音源の方向性はそうでした。でも僕らは、バックグラウンドとしてあまりメロコアは通ってきていなかったし、それ以降は日本語詞のほうが自分たちの方向性にあっているなって思って、そこからは音楽性も、だんだんJ-ROCKとかポップなほうに変化していったんですよね。

Mitsuhiro(Vo・B) メロコアのレールに沿うよりも、ちゃんと自分たちのやりたいことをやろうと。「◯◯っぽいね」って言われるより、「EVERLONGってこういうバンドだよね」って思ってもらえる音楽を作っていこうぜって。そこから音楽性は極端に変わっていきましたね。

──昨年リリースした2ndアルバム『コインランドリーには』の中でも、特に“POPダイバー”という振り切れたポップな曲は、バンドの方向性として大胆に舵を切ったなという印象があって。

Mitsuhiro 今回のミニアルバムにも入っている“ヨナギ”もそうなんですけど、“POPダイバー”みたいな曲って、考えて作ったものじゃないんですよね。なので特に、こういうふうに舵を切ってこうぜって考えて作った曲ではないんです。“POPダイバー”は、僕らの音楽を聴いてるお客さんたちが、勝手に自由に遊べるような曲になっていて、自分らが提示する遊び方とは違う遊び方をされている感じが面白いと思っています。

Yu-ta 曲の中でも自分たちが想像していたのとは別のところで想像以上の爆発をしていて、『コインランドリーには』のツアーをまわり始めた時に、最初はみんな誰ものってくれないし、ちょっと落ち込んでたんですけど、ツアーまわって帰ってきたら、なんかとんでもないことになってて(笑)。自分たちの想像を超えたところで育っていった楽曲でした。

Mitsuhiro PVで踊りを踊ってるんですけど、あれをお客さんにもやってもらいたくて、だけど全然やってもらえなくて心が折れてたんです。MCでも僕がしゃべって伝えてたんですけど、心は折られまくって(笑)。でも懲りずに続けてたら、ツアーのファイナルで、種を蒔いたものがようやく花開いたっていう手応えを感じることができて、めちゃめちゃ感動しました。

KIMU(Dr) ライブ以外でも、ツイッターとかでいろんな人が踊ってみたよって言ってくれて、まったくバンドのことを知らなかった俺の知り合いからも、『曲聴いてます』って言ってもらえたりして。そんなに広がっているとは思ってなかったからびっくりしました。




自分たちのやりたいことが固まった

──そして、さらにポップな楽曲が詰まった、2ndミニアルバム『willco』が先日リリースされました。今回はどういう作品にしたいと思っていましたか?

Mitsuhiro 僕らはこれまでに何枚もCDを出してきているんですけど、今までは、「とにかく頑張って作った曲を入れたもの」っていうだけのアルバムが多かったと思うんです。でも今年1月に『シグナルE.P』を出した時に、自分たちのやりたいことが固まったんですよね。それで今回も、どういうアルバムにしたいかっていうのが鮮明にありました。曲を作る時にも、全体の中ですでにこれとこれっていう曲が2曲あって、そしたらあとこういう曲が1曲ほしいね、みたいな作り方ができたんで、1曲1曲、それぞれに違うイメージのものができたと思います。それを7曲入れて、例えて言うならコース料理のようにしたいなと思ったんです。1枚まるごと楽しめるようにしたいという思いで今回は作りました。だから曲順にもこだわっていて。

Yu-ta 頭から順に聴いたほうが、より楽しめると思います。

──1曲目の“story”は、歌詞のメッセージ性も含めてメロディはEVERLONGらしいなと思ったんですけど、この曲、シンセを取り入れていて、かなり実験的な曲になりましたよね。そういうアプローチをしようっていうのは、何か触発されたものがあったんですか?

Yu-ta このアルバムを作る時に、まず「挑戦をしよう」っていうのがあって。何か新しい要素は絶対に入れたくて。前に出した『シグナルE.P』が僕らにとってすごく自信のある作品になったので、今作ではそれを超えることを前提に、制作に取り組みました。その中で、じゃあシンセ入れてみようっていう話でまとまって。だから“story”はシンセを入れる前提で作った曲でもあります。

──シンセを入れることに抵抗はなかった?

Yu-ta 名古屋のTHREE LIGHTS DOWN KINGSっていう先輩バンドや、同期のTHE BOY MEETS GIRLっていうバンドみたいに、シンセが入ってるバンドが僕は好きなんです。けっこう僕らとも関わりが強いバンドだから、いろいろアドバイスももらえるだろうし、そういうこともあってチャレンジしようと思いました。あと、EVERLONGを知ってる人からしたら、僕らがシンセを取り入れるなんて、想像もしてないだろうなと。

──かなり意外ですよね。

Yu-ta そこを裏切ってみようって思いました。シンセを使ってもちろんポップ感も出せるんですけど、そこにがっつり偏るんじゃなくて、EVERLONGがそもそも持っている勢いのあるサウンドにシンセをねじこんでみたら、どんなものができるかっていう実験ですね。そういう曲を一発目に入れてるんで、ちょっと驚くと思うんです。そういうのもあって、“story”は最初にもってこようと。

──KIMUさんも、シンセ導入には最初から賛成でしたか?

KIMU 最初はちょっと、マジかって思いましたけどね(笑)。でもまあ、作っていこうってことになって、最初はやっぱり不安がありました。新しく機材も増やさなきゃいけないし、練習もしなきゃいけないし。ライブではどうなるのかなっていうのもあるし。

──ライブでは同期を入れたりしてやる予定ですか?

Yu-ta ライブでどう再現するのかは今調整中で、がっつりリハ中です。今のところ不安しかないですけど(笑)。

──今回のアルバムで言うと“story”だけじゃなくて、“SPICE”みたいな、かなりユニークな展開の楽曲も、EVERLONGの独特のミクスチャー感が全面に出ていて面白いなと思いました。

Mitsuhiro まさにコース料理で言うなら、ちょっとスパイシーな、ピリッとする楽曲をここに入れたいなっていうのがあって。

──これはどういうふうにできた曲ですか?

Yu-ta 曲を作る時に、僕がギターリフを持っていって、そこから作りこんでいくっていうパターンも半分くらいあるんですけど、この曲はそのパターンで、リフをためて持っていって、とにかくやりたいことを詰め込みました。展開もここでちょっとテンポを落として、とか、具体的にイメージを伝えながら。最終的には3人でセッションしながら完成させていきました。

──めまぐるしい展開で、ドラムも大変だったのでは?

KIMU もともとこういう展開のドラムが好きなんですよ。手数もいっぱい入ってるほうが楽しいなっていうのはあったんで、意外とすんなりできていきました。

Yu-ta やりたいことがけっこう合致した曲ですね。お互いが好きな部分が合致したと思います。

──歌詞は最後に?

Mitsuhiro はい。歌詞はけっこう悩みましたね(笑)。難しかったけど勢いで書きました。なんかもう、しゃべってるみたいなところもありますから。歌うっていうより(笑)。

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