「これやから音楽はやめられへんねんな」
ココロオークション、メジャーデビューと変化を語る

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昨年4月のメジャーデビュー以降、精力的なライブ活動を経て一層磨かれていったココロオークションの実力を存分に注ぎ込んだのが、2ndミニアルバム『CINEMA』だ。豊かな音色の数々で彩った壮大なスケールのサウンド、瑞々しくきらめく歌声が、とても心地好い。ロックバンドとしての熱量と胸に深く沁みるメロディを絶妙に融合させている彼らの音楽性を、鮮やかに噛みしめられる1枚だと言えよう。今作について粟子真行(Vo・G)、テンメイ(G)、大野裕司(B)、井川 聡(Dr)が語ってくれた。

インタビュー=田中大

「これやから音楽はやめられへんねんな」って思わずぼそっとつぶやく自分がいた

――メジャーデビューして約1年ですけど、何か変化は感じます?

大野 関わってくれる人が増えて、いろんなチャンスを頂けるようになったことで、みんなが幸せになるような活動をしないといけないなと思うようになりました。デビューした頃もそれは思ってたんですけど、より一層そう思うようになりましたね。

粟子 いろんな人のおかげで今までには見られなかったような景色も見られるようになりましたから。そして、そういう景色が見られるからこそ、「お客さんを楽しませたい。喜ばせたい。もっといい景色にしたい」という気持ちも大きくなりました。

――昨年の大晦日のCOUNTDOWN JAPAN 16/17のMOON STAGEもそういうものになりました?

粟子 はい。あれは個人的にも憧れていたステージだったんです。「幕張メッセ!」って叫んだ時、「言ってる、俺……」って思いましたから(笑)。ライブが終わった後に楽屋で機材を片づけながら、「これやから音楽はやめられへんねんな」って思わずぼそっとつぶやく自分もいて。初めてライブをした時の楽しさ、昂揚感を再び噛み締めることができたんですよ。

テンメイ 去年、メンバー全員でBUMP OF CHICKENの幕張メッセに行った時に、「ここに立ちたいなあ」って思ったんです。だから実際に立てて、何とも言えない気持ちになりましたね。僕らにとっての新しいスタートとなったのが、あのライブです。

井川 あの時、僕は今までのドラム人生で一番いい顔をしてドラムを叩いてたと思います(笑)。ああいう景色を見たら、思わず笑わずにはいられなかったです。

大野 「自分らがやってた音楽が、ちゃんと音楽だったんだ」って実感できたんですよ。心のどこかでずっと「自分らの音楽は、ちゃんとみんなにわかってもらえることなのかな?」っていうのがあったんです。でも、「こういう風に届いたらいいな」って思って作ってきた音楽が、本当にそういう風に届いているのを見た時に、すごく感慨深いものがありました。「ほんまに伝わるんや!」と。

粟子 当日までは、ステージ上でどう叫ぶのかを考えたりもしてたんですよ。スタジオでの練習中に「幕張!」なのか「幕張メッセ!」なのか。あるいは「CDJ!」がいいのかなとか、いろいろ考えてましたから(笑)。

――(笑)最新作に入ってる“星座線”の盛り上がりも、すごかったですね。

粟子 ライブではもうやり始めてた曲ですけど、あの大きい舞台で、あそこまで盛り上がって頂けて嬉しかったです。“蝉時雨”とか“フライサイト”とかも「待ってました!」というのを感じて、ほんとやってよかったなと思いました。今までやってきたことが間違ってなかったっていう証明、報われた瞬間でしたね。

ライブに対して「歌詞が聞こえれば大丈夫」って思えるようになった

――今作『CINEMA』ですが、完成したものを聴いて改めてどんなことを感じます?

粟子 今回から歌詞にすごく時間をかけるようになったんですけど、難産だったのが印象深いです。「なりたい自分」と「なれない自分」との狭間で、どんどんハードルが上がっていった感じだったので。「自分の人生ってなんのためにあるんや?」ってとこまで掘り下げた結果、人生とか生き方とか、そういう内容が言葉に出たのかなと思ってます。

――歌詞には苦手意識があるって、前から言っていましたよね?

粟子 はい。未だに苦手です(笑)。でも、殻を1個破れた感じがあります。初めてラブソングを書いてみたりだとか、今までになかったこともできましたし。今までの曲は「ひとりの人格が歌ってる」っていうイメージだったんですけど、今回は「曲それぞれに別人格がいる物語」というものを紡げたのかなと思います。

大野 すごくわかりやすくなりましたね。メッセージ性が深まって、聴いてくれる人に共感してもらえるようなものになってきたなと。

粟子 前までは抽象的な部分も強かったですからね。良く言えば広くて壮大、悪い言い方をすると掴みどころがなかったというか。

井川 今回、歌詞に苦労しているのは、僕も感じてました。レコーディングの直前にエスケープして、喫茶店で練り直したりしてましたから。

粟子 脱走しました(笑)。

テンメイ 僕は歌詞ができ上がるのを毎回楽しみにしてましたよ。歌詞で悩んでいるのを温かく見守るのが僕の役割でした(笑)。

大野 僕はサウンドとかアレンジを作る役割なので、ライブに関しても「音を伝えたい」っていう気持ちが強い方なんですけど、今回の曲は「歌詞が聞こえれば大丈夫」っていうものになってるのも面白いですね。ライブに対してそう思えるようになったのも、バンドにとっての大きな変化なのかも。

――今作のサウンド面に関しては、どんなことを感じています?

大野 かなりバラエティに富んでると思います。その結果、感じたのは、「歌とメロディを入れると、ココロオークションになってしまうんだな」ということです。それは前作も感じたことではあるんですけど、今回はより感じました。例えば“スノーデイ”は僕の中で洋楽寄りの音と構成というか、ポップスっぽくないイメージなんですけど、「冬のバラード」というものになりましたから。

――例えばの話、バリバリのヘヴィメタルにしても、ココロオークションになる自信が深まったということですよね?

大野 はい。「次はめちゃめちゃEDMなやつを作ったろ」とか思いますから(笑)。まあ、変化を見せたいというわけでもないんですけど、そういうエッセンスが見え隠れしてもいいのかなと考えるようになってます。

――どんなサウンドでもみなさんの音になるというのは、粟子さんの歌声による部分も大きいのでは?

井川 そうだと思います。僕、この歌声が大好きなんですよ。

テンメイ 僕はメンバーとして演奏する側ですけど、この声と共にメロディが自分の中にインプットされる感覚です。それを踏まえて僕もアウトプットできるような、そういう声なんですよね。素敵なボーカリストです。

粟子 なんか照れます(笑)。今回、新たな挑戦をいろいろした音でありつつも、僕としては今までとガラっと変わったようなイメージはないんです。自然と歌えたので。

大野 サウンド面に関してさらに言うと、打ち込み系の音と4人それぞれの楽器の音を上手く混ぜるというのもテーマにしてたんですよ。例えば“星座線”も打ち込みの音が結構入ってるんですけど、バンドっぽいものになってると思います。

――瑞々しいサウンドに包まれつつ昂揚できるような感触が、ココロオークションならではの作風なのかなと。“星座線”は、そういう面も出ていると思います。

テンメイ 僕らの曲は心で1回じっくりキャッチしつつ楽しんで欲しいんです。

粟子 結構オラオラした感じのサウンドの曲をやったつもりでも、ライブで頂く感想は「癒された」とかなんですよ。僕、そういう星の下に生まれたんやなと思ってます(笑)。

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