藍井エイル 「未来」と「希望」のシングル『アクセンティア』を語る

藍井エイル

2011年10月、テレビアニメ『Fate/Zero』のエンディングテーマに抜擢された“MEMORIA”でデビューを果たして以来、アニメやゲームのテーマソングを数多く手がけ、その伸びやかで力強いヴォーカルと、多くのミュージシャンとのコラボによって生み出される良質なポップミュージックとが、多くのリスナーの心を捉えてきた。今年3月2日にリリースされた12枚目のシングル『アクセンティア』は、ゲームソフト『デジモンワールド-next Order-』の主題歌として、リリース前から話題となっていたが、今作は「春」という季節を存分に意識した、とてもポジティヴで瑞々しいリード曲に加え、Hysteric Blueの名曲“春~spring~”の渾身のカヴァーも収録。実力派シンガー・藍井エイルの魅力がはじけた今作について、じっくりと話を訊いてきました。

インタヴュー=杉浦美恵

いつか誰かの支えになれるように生きていけたらいいなって思い続けて歌手を目指していた

──この曲は安田貴広さん(Ao)の作曲で、作詞は藍井さんとの共作です。「アクセンティア」というのは「accent」+「ier」=accentierという造語で、「強調する者」、つまり自分の人生に強いアクセントをつけてくれるような人物、という意味が込められていると聞きました。この言葉はどのようにして生まれたものですか?

「まずデモの段階で、安田さんが“アクセンティア”というタイトルで仮の歌詞もつけて出してきてくれたんですけど、その意味を教えてもらった時に、素晴らしいなと思ったんです。なので今回はあえて、デモの段階でついていたタイトルのままでいくことにしました」

──最初「アクセンティア」という言葉に、どんなイメージを持ちましたか?

「自分自身も誰かにとってのアクセンティアになれるようにしたいという気持ちと、自分にとって誰しもがアクセンティアなんだっていう、それが今の自分自身にぴったり当てはまるように思えたんです。私自身、いつか誰かの支えになれるように生きていけたらいいなって思い続けて歌手を目指していたので、自分の考えを、まさに“アクセンティア”というタイトルが反映してくれてるって思いました」

──歌詞の中の《希望や愛の歌が溢れてる理由は/それを見たいとみんなが願っているから》という言葉が、まさにこの曲のポジティヴさを象徴しているように思います。歌詞の共作はどのように進めていったんですか?

「お互いが納得するまで、細部まで相談しながら作り込んでいきました。『ここは安田さんが作ったこの言葉がいいと思う、ここは私はこうしてみたいんですけどどう思いますか?』とか、目指すゴールがお互いにズレていかないよう、頻繁に連絡を取り合いながら。1日に何回も電話したこともあります。安田さんも、『変えたいと思うところがあったらそこは変えてくれていいから』っておっしゃってくれて」

──ブレスの息づかいもそのまま聞こえてきますよね。

「それくらい忙しいテンポの曲ではあるんですけど、その分、疾走感みたいなものは表現できたかなと思っています。難しいですけどね。今でもかなり難しい曲だと思います。ライヴで歌うにしても、相当筋トレしとかないと難しいなって」

──安田貴広さんとはデビュー時からいくつかの楽曲でタッグを組んでいますが、シングルのリード曲が安田貴広さん作の曲になるのは初ですよね。

「安田さんもすごく喜んでくださってましたし、私自身、デビュー前からずっと安田さんのファンだったこともあって。安田さんはAoというバンドで活動されていて、その前にやっていたraison d’etre(レゾンデートル)というバンドの時から私は聴いてました。そんな方が藍井エイルの曲を書いてくれてるっていうのは本当にすごいことで。今回も素晴らしい曲を書いてくださって、改めて尊敬するなあって思っているところです。最初歌い終わった後に、めっちゃいい曲!って叫んでしまったくらい(笑)」

どストレートで、力強いまっすぐな歌声でいく表現方法は、私の中でもナンバーワンってくらいに私らしい歌唱スタイルだと思います

──前作は“シューゲイザー”という曲でHISASHI(GLAY)さんがプロデュースをしたり、他にも楽曲ごとに、安田史生さん、黒須克彦さん、重永亮介さんなど、多くのソングライターとタッグを組んでいますよね。その度ごとに、藍井エイルというシンガーは、意識的に違う部分を出そうとしている? それとも変わらないことの方を意識する?

「大きな範囲で言えば、まず『藍井エイル』という枠があるんです。その中で、楽曲によって表現する自分を変えていくというタイプだと思います。例えばジャンルが同じなら同じ歌い方っていうわけでもなくて、テンポ感が違えば声色も変わるし、あえてクセをつけて歌う方が今回は合うんじゃないかとか、あくまでも、『藍井エイル』という枠組みの中で、いろいろな変化をつけていきます」

──「藍井エイル」の枠組みとは?

「例えば、私がずっとミックスボイスで歌い続けるとか、ずっとファルセットで歌い続けるとか、そうなるとそこにはもはや藍井エイルはいないなと思っていて。もちろんところどころファルセットは使いますけど、私がイメージしている像の中から、いろんな表現ができたらなと思っています。聴いてくれているリスナーさんたちも、私がいろんなことをやりすぎてしまうと、戸惑ってしまうと思うんですよ。私が私であることって、すごく大事だと思っているので、自分の中にあってできることっていうのを、いつも探しています」

──その枠組みの中でいくと、今回の“アクセンティア”は、どのあたりの藍井エイルが出ている感じですか?

「ほぼ真ん中に位置している感じの(笑)。どストレートで、力強いまっすぐな歌声でいく表現方法は、私の中でもナンバーワンってくらいに私らしい歌唱スタイルだと思います。今までのシングルに比べると、かなり人間味が溢れる表現がされていると思っていて、“アクセンティア”の歌詞って、主人公と対『何か』の距離感が近いんですよ。海が、とか、宇宙が、とか、そういう大きいストーリーというかワードは出てこなくて、主人公から見てまわりの物たちがあまり遠くになりすぎないようにしたいと意識していたので」

──だから、ストレートに共感できる歌詞になっている。

「そこは意識しました。ヴォーカルも今までは機械的な部分もあえて出してきたりもしたんですが、今回は、声にゆらぎが出るくらいの方が人間味が出るかなと思っていたので。冷静な立ち位置で歌うのではなくて、もっとエモーショナルな感じの歌い方の方が、今回の歌詞には合ってると思ったんですよね」

──いつも歌詞はどうやって作るんですか?

「まず、具体的なイメージを紙にわーっと書いていきます。どういう人がいて、どういう場所にいて、とか。そこから、1-A、1-B、2-A、2-B、3-Cとか言葉の固まりを振り分けていって、1-Aを最終的に3-Cとつなげるためには、この伏線を回収したいから、2-Bはこうして、でも少しくどくなるから時間軸をズラして、とか考えていくうちに、わけがわからなくなってしまう時もあって(笑)」

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