『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』のリマスター盤の再発とともに、初めてDVD化されたのが、同じく76年の北米ツアーを記録したコンサート・フィルム『ロックショウ』。80年、来日したポールが大麻不法所持によって逮捕され、余儀なく中止になった日本公演を惜しむファンが翌年、本作が劇場公開された際には大挙したというだけに、日本のファンにとっても思い出深い作品である。映像はオリジナルの35ミリ・フィルムからリストア、音源はリマスターされた今回のリイシューは、ビデオ化の際にカットされた7曲も復活しており、嬉しい完全版である。

自分は初めてフルで観たが、とにかくポールのカリスマに圧倒される。しかも、それはフロントマンだけとしてではなく、妻をメンバーにしてツアーに連れ出す良き夫として、盟友デニー・レインに躊躇なくフロントを譲る良きパートナーとして、そして〝自分のバンド〞で再び最高級のライヴ・ショウを繰り広げることができる喜びを噛みしめ切れない、初心に戻ったバンドマンとして、とにかく幸福感が終始滲み出ているその姿にこっちも歓喜する。言うまでもないが、全曲良すぎ。（内田亮）