「体験の感動」を呼び起こす歌たち

Base Ball Bear『バンドBのベスト』
2013年02月13日発売
ALBUM
Base Ball Bear バンドBのベスト
青春がただ眩しく美しいものかと言えば、多くの場合そんなことはないわけで、年月を経る間に胸の内で美化されたり封印されたりする視界や感情を呼び起こす装置としても、音楽は有効だ。仕舞い込んだ過去が赤面する程度で済むならともかく、嫌な思いを再確認してまで呼び起こしたいものは何なのか。それは体験の瞬間瞬間に宿る、鮮烈な感動だ。決して甘くもない記憶を呼び起こしてしまう音楽のヤバさも引っ括めて、Base Ball Bearというバンドはそんな「体験の感動」をテーマに活動してきたと言える。
 
邦楽・洋楽史上の優れたソングライターたちによるメロディの意匠を咀嚼し、一貫したテーマで歌う小出祐介。バンドの力強くダンサブルなグルーヴは「体験の感動」を証明するかのように鳴り響き、“真夏の条件”のギター・ソロのように膨大なエネルギーを獲得してきた。若いから凄いのではなく、若かりし頃から青春を対象化しファイルしてきた知性が凄い。そんな事実がそっくり詰め込まれたベスト盤である。音源作品としては初収録となるボーナストラック“若者のゆくえ”のエンディングも最高。(小池宏和)
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