ここにいる「俺」はあなただ

エレファントカシマシ『THE BEST 2007-2012 俺たちの明日』
2012年12月19日発売
ALBUM
エレファントカシマシ THE BEST 2007-2012 俺たちの明日
“俺たちの明日”と“笑顔の未来へ”、そしてそれらが収録されたアルバム『STARTING OVER』を初めて聴いた時の感動は、今なお強烈に脳裏に刻まれている。どこまでもすんなりと、まっすぐに、「わたし」のすぐそばへと歌が入り込んでくる感覚は、それまでのエレファントカシマシから受けるものとはまったく違う種類のもので、衝撃的ですらあった。YANAGIMANや蔦谷好位置などのプロデューサーの視点を(単なる宮本対プロデューサーの対決構造としてではなく)取り入れていくことで、宮本の歌う「俺」から定冠詞が取れていった。有り体に言えば、エレカシの歌は宮本の物語だけではなく、それを聴く誰しもの物語になっていった。《さあ がんばろうぜ!》と歌う“俺たちの明日”に始まり、《どうせ流す涙ならお前と流したい》と歌う“ズレてる方がいい”まで15曲、このベストアルバムに収められたエレカシの5年間は、そんな決定的な、そして幸福な変化の時間である。日本にエレカシがいてよかった――この何年かの間に何度そう噛み締めたろう。エレカシと俺たちの明日は続く。(小川智宏)
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